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大阪桐蔭vs.履正社は、渦中のPL学園にどんな影響を与えるのか?

【この記事の読みどころ】
・大阪大会1回戦でまさかの組合せが決定!
・強豪校同士の潰し合いはPL学園にとって吉!?
・PL学園OBの見解はいかに?

 大阪大会の抽選が行われた6月26日の夕刻、僕は神戸にあるラジオ関西にいた。巨人戦がない金曜日の夜(17時55分〜21時)という放送するラジオ番組のため、17時過ぎには局入りしていたのだ。すると打ち合わせが始まってしばらく、プロレス好きの女性スタッフがパソコン画面を覗きながら、へえ〜という感じで言ったのだ。

「桐蔭と履正社が初戦から当たるんですねえ」

 一瞬、理解できなかったのか、聞き流しそうになったが、その日は大阪大会の抽選日で16時から始まっていた。そこで、えっ、まさか……と思いながら、事の大きさにまるで気づいていない“彼女”に確認を頼むと「ほんとみたいですよ」と、朝日新聞の記者が書いているという公式ツイッターを見せてきた。こんなことが…である。

 大阪の参加校は年々、微減続きとはいえ、今年も180校。南北にブロックが分かれるとは言え、大阪桐蔭と履正社が入る北ブロックで両校が初戦から当たる確率は88分の1。それがまさか、いかにノーシードの大阪とはいえ、いきなり当たるか……という話である。

 しかし、当たったのだ。そこからはこの衝撃が残り、打ち合わせどころではなくなったのだが、虚ろな頭の中に浮かんできたのは西谷浩一監督や岡田龍生監督の顔ではなく、PL学園のユニフォームだった。そして、ああ、こういうパターンもあったか、と思った。

 実は今、発売中の『野球太郎No.015 2015夏の高校野球大特集号』で、“PLがいかにすれば甲子園まで辿りつけるか?”というシミュレーション原稿を書いた。現チームの力量は春の段階で見れば、大阪桐蔭には二歩、秋に勝ったとはいえ履正社にも一歩劣ると僕は見ている。そのPLにどういう状況が重なり、運が向けば、2009年夏以来の甲子園へつながるのか、という内容だ。

 そこでいくつか要素を挙げた中、僕が最も力を込めたのは大阪桐蔭と履正社の潰しあいだった。さらにPLにとってのベストは『履正社が激闘の末に大阪桐蔭を倒した直後、履正社で今、最も安定感のある2年生左腕・寺島成輝が疲れを残した状態でPLと対戦すること』と書いた。PLは昨秋の大阪府大会5回戦で履正社に勝っているが、2強に続けて勝つ力強さを今のチームに求めるのは少々酷。さらに昨夏、秋の決勝、今春の準々決勝で対し、いずれもワンサイドで敗れている大阪桐蔭には正直、相当に分が悪い。なら、まずは2強が潰しあって、できれば履正社が勝利して……ということだったが、初戦でこの両チームが当たるイメージは微塵も沸いていなかった。


 抽選結果を受け、翌朝、あるPLのOBに連絡を入れた。過去にコーチ経験などもあり、OBからの信頼も厚いA氏はこちらから話を向ける前に察したのだろう、「まさかですよ」と電話口で返してきた。OBの間でも“この夏”の戦いについて話題が出ると、やはり2強の潰しあいが後輩たちの甲子園出場には必須条件と話に上がっていたという。ただ、大阪では初戦、4回戦、準々決勝の前に抽選が行われることも含め、少なくとも4回戦以降で潰しあいのイメージがあった、と言った。それが…。

 ともあれ、この結果はPLにとって、大きな風には違いなかった。しかし、続けて連絡を取った別のOBは「それはそうなんですけど……」と頷きながらも、1つの懸念を口にした。実は抽選会の翌日、関西のあるスポーツ新聞にPLの野球部に関し「17年度から“再出発” 募集再開も」という記事が出たのだ。現状のチームは3年生21人、2年生12人で1年生は部員募集停止のためゼロ。しかも、2年生には特待やスポーツ推薦で入学した選手がおらず、夏が終われば、戦力的には限りなく落ちるどころか、ケガ人が少し出れば大会出場も厳しくなる状況が容易に想像できる。さらにその先に見え隠れするのは休部、あるいは廃部……。

 野球部だけでなく、全生徒数が約220人で危機が囁かれる学校経営を含め、今後どうするかは教団上層部のみ知るところ。ただ、この2年、野球未経験の校長が監督を兼任し続けてきた異常事態を見るだけでも、教団が野球部の立て直しに積極的とは思えない。

 先の記事も、読めば“学校関係者”による伝聞のレベルであり、それがどこまで教団の意向を反映した言葉かは不明。そういった状況で報じられた記事に、先のOBはこう懸念を口にした。

「こういう記事が出たことでOBやファンの、実質この夏が最後……、と盛り上がって来ていたPLへの思いが少し薄まるのではないか」

 これは僕も同感で、野球部が本当に存続へ向けて動くなら、それはもちろん喜ばしいが、この夏の戦いに限れば、先の報道は……ということだ。“夏の高校野球100年”の舞台に“ラストPL”が導かれる、その一歩として大阪桐蔭 対 履正社の初戦対決、というまさかも起きた。

 そんなシナリオが浮かんできていたところで、確かに盛り上がりの空気を弱める報道だった。翌日以降、追随する記事は他社からもあがっておらず、どこまでの確証があった記事なのか、不確かなまま、今に至っている。

 結局、この先、PL学園の野球部がどこに向かうかはわからないまま夏を迎える。「なくなるならなくなる、と言ってくれないと泣くこともできない」とあるOBはうめいたが、59回目の夏の戦いを終えた時、PL学園野球部の未来はどこへつながっているのか。11日、大阪大会の幕が開く。

■ライター・プロフィール
谷上史朗(たにがみ・しろう)/1969年生まれ、大阪府出身。関西を拠点とするライター。田中将大(楽天)、T−岡田(オリックス)、中田翔(日本ハム)、前田健太(広島)など高校時代から(田中は中学時代から)その才能に惚れ込み、取材を重ねていた。

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