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プロ野球実況中継の裏側ではこんな出来事も! 節丸アナが経験したあんな話こんな話

 ネット上では、「ニコ生DeNA戦の節丸アナウンサーが自由すぎる」なるスレッドが立つこともある節丸裕一アナ。ときに歌い、ときに爆笑するスタイルが人気を呼んでいる。

 そのスタイルが生まれた背景に「ニコ生のコメント欄を盛り上げるため」という狙いがあったことは前回記事で紹介した。ところが、ネット中継以外の放送中でも、爆笑を止められずにピンチに陥ったことがあるという。


放送中、笑いが止まらなくなり、解説者に「しばらくつないで」とお願いしたことがある


ひげ面の巨漢メジャーリーガーにまつわる、とんでもない言い間違い


実況・節丸、解説・節丸、W節丸中継があった!?


節丸 DeNAのラミレス新監督がまだ現役だった頃、ある試合で、「ホームランを打ったら新しいパフォーマンスを披露する」と約束してくれたんです。そんなにもったいぶっていたのに、いざ披露したら、もうとにかくくだらないパフォーマンスで(笑)。でも、それをとことん真剣にやるラミちゃん、というギャップに笑いが止まらなくなったんです。我慢できず、マイクはOFFにして隣にいた解説者の方に「しばらくつないでください」とお願いしたことがあります(笑)。

 国内だけでなく、メジャーリーグ中継でも爆笑危機があった。

節丸 スチュワートという、ヒゲを生やしたすごい巨漢投手がいました。その選手がマウンドに上がった際に「さあマウンド上にはスチュワーデス」と言っちゃったんです。その瞬間、頭の中には“ヒゲのスチュワーデス”と“超巨漢スチュワーデス”の絵ばっかり浮かんでしまって、「こんな飛行機乗りたくないなぁ」と思ったら、もうツボに入ってしまって。このときもマイクを下げ、解説者の方につないでいただいたんですが、「え? 俺が!?」と驚いた顔をされていました。

 解説者を巻き込んでの失敗には、こんなエピソードもある。

節丸 大塚光二さん(元西武)とコンビを組んでの放送の際、「この試合、解説は大塚光二さん、実況担当は節丸でお届けしてまいります」と放送が始まってすぐ、「さて、解説の節丸さん」と大塚さんに話を振ってしまったんです。

 そのとき、大塚光二は驚きのあまり、鯉のように口をパクパクさせたという。

節丸 もうその顔がおかしくって(笑)。僕自身は言い間違いに気づいていなかったので、「大塚さん、どうしたんですか?」と。大塚さんにしてみたら「お前のせいだ!」じゃないですか。そのときも笑いをこらえるのが大変でした。


アナウンサーは、解説者に認めてもらってナンボ


 ときに解説者も巻き込んだハプニングも起きる節丸アナの中継現場。それでも放送が成り立ち、名物アナウンサーと呼ばれるのは、解説者との厚い信頼関係があるからだ。

節丸 解説者とのやり取りにおいて、必要なものが3つあると思うんです。まずは喋りの技術。これは質問をふる間(ま)やタイミングといったことも含みます。あとは解説者と親しくなること。そしてもうひとつが認めてもらうこと。共同作業であるからこそ、解説者に頼るだけじゃなく、対等な立場で勝負できる存在として認めてもらうことが大切だと思います。

 実況中継だけでなく、「プロ野球ニュース」などでみせる解説者との当意即妙なやりとりも、「技術」「親しくなること」「認めてもらうこと」が重要になるという。

節丸 この中で、技術は自分で磨くものだし、好かれるかどうかは個人的な日々の付き合いだと思うんですが、認めてもらうという部分は、野球を深く理解している、選手を知っている、きちんと取材をしている、ということを解説者に評価してもらえるかどうか。僕は本当に野球漬けの毎日だし、人一倍野球を見ているし取材しているつもりですが、それを自分でアピールし過ぎるのも痛いですから、これも一朝一夕にはできないですよね。


野球中継は共同作業であり、勝負の場でもある


スイッチングに優れたアメリカの中継、余韻を楽しむ日本の中継


 節丸アナといえば、NPB中継を地上波、CS、ニコ生やショールームなどのインターネット中継とさまざまな媒体で実況を担当。さらにはMLB、社会人野球、大学野球、WBCなどの国際大会と、野球にまつわる試合ならあらゆるカテゴリーを担当する「ザ・職人アナウンサー」といえる。そんな節丸アナウンサーだからこそ感じる、カテゴリーや媒体ごとの実況の違い、難しさとは何だろうか?


節丸 実況の違い、という視点で考えると、カテゴリーどうこうではなく、試合現場にいて喋っているかどうか、でまず大きく変わります。MLB中継ではほとんどの場合、現地から届いた映像をスタジオで見ながら喋る「オフチューブ」というスタイルです。試合現場にいれば事前取材などもできますから、準備の仕方も変わってきます。

 現地で試合を見ながら喋る場合も、2つに細分化できる。自分の喋りとカメラの動きが連動できるかどうかの違いだ。

節丸 ニコ生中継などがそうですが、映像が球団支給だったり、他局からもらっている場合だと、自分が喋りたいことと映像が異なることがあります。ですから、スイッチャーさんが僕の喋りを聞いてくれている体制が理想です。喋りたいこととスイッチングが一致しやすくなるし、喋りでリードしたり、逆に画に引っ張ってもらって「う、やられた!」と思うこともあります。そういう中継は多くのスタッフとの共同作業であり、互いの職種の意地をぶつけあう勝負の場でもある、ということをより強く実感できます。

 スイッチャーの技術、選ぶ基準は国内制作か海外制作でも大きく変わってくる。

節丸 やっぱり、アメリカは全ての局が、というわけではないですが、総じて野球をよく知ってるなあ、と思います。カメラマンなどスタッフが毎日チームに帯同していることも多く、情報も充実しているし、そのチームの野球の見せ方を熟知しています。それと圧倒的な数字のデータ、リプレーの多さ。その辺りは日本も頑張っていきたいですね。ただ、日本の制作のほうが、きちんと作られているというか、しっかりしているところも多いです。真面目な国民性の表れですかね。それぞれに良さがあるので、アナウンサーとしては、その違いにどう対応するか。僕としては「対応」を超えた高いレベルで実況したいと思っています。


<節丸裕一 プロフィール>
1999年にフリーアナウンサーとなり、プロ野球・MLBを中心にスポーツ専門アナウンサーとして活動中。World Baseball Classicでは、2006年の第1回大会、2009年の第2回大会で、ともに準決勝、決勝などの中継を担当した。


聞き手・構成=オグマナオト(おぐま・なおと)
1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務を経てフリーライターに転身。「エキレビ!」「R25」などでスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)、『高校野球100年を読む』(ポプラ社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。著書に『福島のおきて』(泰文堂)、『爆笑!感動! スポーツ伝説超百科』(ポプラ社)。Twitterアカウントは@oguman1977(https://twitter.com/oguman1977)

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