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生きる力とは失敗や困難を乗り越える力。苦境でこそ響く松井秀喜氏、星野仙一氏らの言葉たち

文=勝田聡

生きる力とは失敗や困難を乗り越える力。苦境でこそ響く松井秀喜氏、星野仙一氏らの言葉たち
 5月も半ばを過ぎたが球音は聞こえてこない。日本ではプロ・アマ問わず、各種リーグ、大会が延期や中止に追い込まれているからだ。まさに苦しい時。こういった苦境のときに思い出したいプロ野球に携わる人たちの言葉がある。

生きる力は乗り越える力


 星稜高、巨人、そしてヤンキースなど、MLBの複数球団でも活躍した日本が誇るスラッガーである松井秀喜氏はこう言っている。

「生きる力とは、成功し続ける力ではなく、失敗や困難を乗り越える力だと考えます」

 松井氏は星稜高、巨人で結果を残し、満を持して海外FA権利を行使してヤンキースへと移籍した。大きなケガもなく、常に成功の連続だったかのように見える。しかし、順風満帆だったわけではない。

 メジャーリーグ移籍4年目の2006年。試合中のアクシデントで左手首を骨折し、プロ入り以来、初めてとなる長期離脱を余儀なくされたのである。先述した言葉は、その後に出した著書『不動心』の冒頭で記した言葉だ。

 ここでは、続けて「プロ野球選手として成功してきた人々は才能だけではなく、失敗を乗り越える力があるのだと思います」とも綴っている。

 もちろん松井氏は野球での成功、失敗について語っているわけだが、これは一般生活、社会でも同様だろう。それは、このコロナ禍においてもだ。未知なる敵であるウイルスとの戦いは恐怖であることは疑いの余地はない。しかし、そのつらさや苦しさを乗り越える力が、結果として生きる力、生き延びる力になるのである。

 それぞれの人に仕事、学業、家庭、さまざまな困難が訪れたはずだ。そのときに松井氏の言葉を思い出し、困難やつらさを乗り越え生き抜いていきたいものである。

星野仙一氏は「辛くても前へ」


 現役時代は「燃える男」、監督になってからは「闘将」と呼ばれた星野仙一氏(元中日)。残念ながら2018年1月に亡くなったが、生前に言葉にこのような言葉を残している。

「迷ったら前へ。苦しかったら前に。辛かったら前に。後悔するのはそのあと、ずっと後でいい」

 どんなときでも前向きな気持を忘れずに前へ進もう、といった意味だ。緊急事態宣言が発令され自粛が続くことで迷いや苦しみ、そして辛さが各人の心にじわりじわりと侵食していく。

 そういった困難なときでもまずは前へ、この気持ちを持っていたいもの。もしかしたら後悔することがあるかもしれない。それは今ではなくもっと先でいい。そんなことを教えてくれるフレーズだ。

 星野氏が楽天の監督を務めていた2011年に東日本大震災が日本を襲った。そのときには、

「頑張れとは言いたくない。耐えれば必ず強い人間になれる」

 被災地の避難所で暮らす人々に前述した激励の言葉を送った。人生の中では天災など、いかんともしがたいことを耐えなくてはいけない時がある。その苦しみを耐えて乗り越えれば強くなる。そんなことを思わせてくれる言葉だ。まさに今の世の中にもピッタリなのではないだろうか。

奮い立たせる言葉に翻訳する力


 2006年夏の甲子園といえば、早稲田実と駒大苫小牧高の決勝戦が思い起こされる。この大会には両校のエースであった早稲田実・斎藤佑樹(現日本ハム)と駒大苫小牧高・田中将大(現ヤンキース)の他にも、後のプロ野球選手が多く出場しており、記憶に残っているファンも多いだろう。

 その伝説的な大会で名言が生み出されていた。日大山形高と今治西高が激突した3回戦。この試合は、点の取り合いとなり8対8で延長戦へと突入する。迎えた13回表、今治西高が2点を勝ち越しに成功。後攻の日大山形高は窮地に立たされた。そのとき日大山形高の荒木準也監督はこういった。

「甲子園には語り継がれる名勝負がある。さあ、逆転して名勝負にしよう」

 延長戦での2点ビハインドは絶望的な状況でもある。しかし、指揮官は諦めることなく選手を奮い立たせる言葉をかけた。その言葉に選手たちは応え、みごと3点を奪い、逆転サヨナラ勝ちを収めたのである。

 頑張って逆転しよう、窮地を乗り越えよう、ということではあるが、それを奮い立たせる言葉に翻訳し選手たちへと伝えたのである。ただただ頑張ろう、ではなく奮い立たせる言葉へと翻訳することの大切さを教えてくれる。

 ちなみに敗れた今治西高のマウンドに立っていたのは、当時2年生だった熊代聖人(現西武)である。

 冒頭でも触れたが、プロ・アマ問わず野球が見られるのはもう少し先になりそうだ。そんな窮地だからこそ、いろいろな言葉を胸に刻んでおきたい。

■参考文献
『不動心』(新潮新書/松井秀喜)

『甲子園100の言葉』(彩図社/吉野誠)

文=勝田聡(かつた・さとし)

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