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野球マンガ格言集【魂言!】『砂の栄冠』『ドリームス』『実録!関東昭和軍』より

「球言(たまげん)」とは、名作&傑作マンガに登場する野球格言≠フことである。野球というスポーツの真理を突いた一言、技術を磨く名言、駆け引きを制する名台詞の数々は、現実のプレーや采配にも役立ったり役立たなかったりするのだ!

 祝・連載30回目! これを記念して野球マンガに登場する「野球魂のこもった迷言」=略して魂言≠またもお届け!

★球言1


《意味》
 左腕の故障により球界を去っていた星飛雄馬が、打者として復活したときのセリフ。白球があまりにいとし過ぎて、「ジャストミートしそこねたりする道理はない」とまで断言。

《寸評》
 打席でニヤつきながら、白球を凝視し続ける飛雄馬。……もう何か、目がイッちゃってるんですけど。心の中で「いまおれは法悦境だ!」って叫んじゃってるし。エクスタシーに達しちゃってるじゃん。完全に白球、性的対象じゃん。

《作品》
『新巨人の星』(梶原一騎、川崎のぼる/講談社)文庫版・第2巻より


《解説》
 伝説の完全試合から5年。星飛雄馬が巨人軍に帰ってきた。

 打者としてテスト生となった飛雄馬は、宮崎キャンプに参加。紅白戦の途中、紅組の代打に起用される。白組が2−0とリードした3回裏、1死二塁。観客席に座る親友・伴宙太が見守る中、左打席に入る飛雄馬。

 白組の投手・小林繁による初球は、内角高めのボール。久々に接するプロの球に「いまおれは法悦境だ!」と喜ぶ飛雄馬。2球目もボール。外角へ逃げる球を目で追いながら、飛雄馬は思っていた。

「こ……この白球がしみじみいとしい! 両掌にすくいとり 頬にあて いつくしみたいほど(中略)こんなにいとしい いつくしみたいボールを(中略)当然おれは打つ…………打てる!!」

 小林が投じた三球目を飛雄馬は見事、ライト前へ弾き返した。
★球言2

《意味》
 髪を伸ばしたり染めたりしている敵を前にしたとき、五分刈りを貫いた(貫かされた)青春時代のルサンチマンを勝負の原動力に変換させる言葉。むしろサッカー部に対して発揮されがち。

《寸評》
「なぜ今どき坊主頭なのか?」という、本人たちにも説明できない理不尽な問いに対し、多くの野球人が口を揃える「精神力」。坊主頭のほうが長髪・茶髪よりも精神力が増すという根拠は不明だが、そもそも坊主頭の強制に根拠がないので問題ない。

《作品》
『ドリームス』(七三太朗、川三番地/講談社)第6巻より


《解説》
 ついに夏の南東京予選に登場した夢の島高・久里武志。髪を茶色に染め、ガムを噛みながらマウンドへ上る彼の態度に、スタンドの観客たちは試合前から眉をひそめていた。

「久里君 その帽子 正しくかぶれんのかね ツバの向きだよ」

 試合前の投球練習をする久里に対し、主審が帽子のかぶり方を注意する。一旦はかぶり直す久里だったが、すぐにまた元通り。

「帽子がでっかいんで いつも正反対にズレちゃうんですよ かんべんしてくださーい」

 オドける久里の態度に、イラ立ちを隠せない対戦相手の六郷高ナイン。

「ふざけた野郎だぜ(中略)勝手きままにわがままを通したヤツの精神力なんぞ 五分刈りで我慢し通したオレたちの精神力にかなうわけねえんだ」

 久里の投球練習が終わり、試合開始のサイレンが鳴り響く。

★球言3

《意味》
「勝ちたかったら まずは自ら地獄を経験しろ!」がモットーの関東昭和高・尾宮貫一監督による暴言。進学校に通う学生と頭のデキが違うように野球部は体のデキが違う、と言いたい模様。

《寸評》
 言い切ったね……清々しいほどに。投手の連投も過酷なシゴキも問題にさせない、ある意味で最強のひと言。ちなみに発言者の尾宮監督は、猛練習で選手が死にかけても、「誰か理事長んとこ行って秋田県警頼むって伝えて来い!」と言い放ち、ノックを続けるような鬼監督である。

《作品》
『実録!関東昭和軍』(田中誠/講談社)第2巻より


《解説》
 東京都の秋季大会2回戦、明治神宮第二野球場。連日連夜の殺人ノックによって、選手たちを「真っ白な境地」に近づけた関東昭和高・尾宮貫一監督は、より疲労度の高い1年生を中心にオーダーを編成。一か八かの賭けに出る。

 ところが、試合は6回裏を終わって7−0。亭京高に大量リードを奪われ、攻めるしかない関東昭和高は、7番からの3連打で反撃。1点を奪い、なおも無死一、二塁。上位打線へつなげる。

 と、ここでホームインしたばかりの7番・桶谷五朗が、疲労のためにベンチで卒倒。心配したチームメイトが尾宮監督に「本当に死にそうっすよ!」と訴える。

「ウルセエ こっちは今それどころじゃねぇ! だいたい野球部に来るような人間がそう簡単に死ぬか!」

 即答する尾宮監督に、思わず言葉を失うナインたちだった。


■ライター・プロフィール
ツクイヨシヒサ/1975年生まれ。野球マンガ評論家。幅広い書籍、雑誌、webなどで活躍。著書に『あだち充は世阿弥である。──秘すれば花、『タッチ』世代の恋愛論』(飛鳥新社)、編著に『ラストイニング 勝利の21か条 ─彩珠学院 甲子園までの軌跡─』(小学館)など。ポッドキャスト「野球マンガ談義 BBCらぼ」(http://bbc-lab.seesaa.net/)好評配信中。

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