週刊野球太郎
中学、高校、プロ・・・すべての野球ファンのための情報サイト

センバツレビュー/駒大苫小牧、関東一、三重、明徳義塾編

駒大苫小牧高編


 大会屈指の切り込み隊長と称しても過言ではないだろう。先攻のこの日はまず第1打席に注目。履正社の先発・溝田悠人の決め球であるスライダーを三遊間へ叩き、チームに勇気を与えた。圧巻は3回の第3打席、2死一塁の場面。狙い通りにスライダーをすくい上げて左中間フェンスを直撃する三塁打。リードをとり「打ったらゴー」の一塁走者が本塁を駆け抜けるよりも先に三塁へ到達する圧巻のベースランニングこそ真骨頂だ。
履正社の2番手・永谷暢章のストレートに苦しみながらスリーバントを決めた第4打席、136キロのストレートをしぶとくライト前へ運び、次打者の初球に二盗を成功させた第5打席など内容のある3安打1打点1盗塁。守っても右中間の飛球を一直線に追い、素早いクッション処理、正確な返球で二塁打に留めるなど、チームの方針を率先して徹底し、状況判断に優れ、常に先を考えて野球に取り組む姿勢に大きな成長を感じた。



関東一高編


 美里工戦は2イニングを危なげなく投げきり、結果的にチームに勝ちを呼んだ阿部武士。一方で「らしい」投球ができなかった明徳義塾高戦。中盤から高めに浮きがちになり、ボール球も多かった。ヒットにされたコースの多くは高め。制球力と変化球で勝負するタイプは低めに集められないと、いいところが20%も出ないだろう。いい勉強として、より制球力を磨いてほしい。

三重高編


 先頭打者の長野勇斗は、第1・第2打席の見逃し三振がなんとも残念。特に第1打席は一球も振らずにベンチに戻ってきた。たしかに、相手投手のボールも際どいコースに決まっているようには見えた。だが、普段はもっと“イケイケ”で、振ればヒットになっていただけに、バットが出ない長野の姿は予想外だった。冬から取り組んできた遊撃手の守備は、まだ腰高でスローイングにも不安定な面があり、外野手で上を目指したほうがよさそうだ。



 2番打者の内田蓮は、体つきがよくなり、打席での雰囲気やスイングスピードが増したように感じた。ただ他の三重高打者と同様、もっと鋭く振れるイメージがあったのだが……。

 投手の今井重太朗は、昨秋に比べマウンドでの躍動感がなかった。体重が後ろに残り、腕の振りも今ひとつ。元々“ボールがくる”タイプではないが、それに拍車がかかってしまい、智辯学園高・岡本和真ら全国級の打者に対して本人も力不足を痛感する結果となってしまった。

明徳義塾高編


 「打者がカットボールを狙ってきているのがわかったので、カットボールの握りから握りを広げて、スピードを抜いて投げました」6回の三者三振中、5番・森山将右翼手から奪った2つ目の三振について語った岸潤一郎のコメントである。



 「相手の打者の狙いを見ながら投げる」ことは高校生トップレベル投手ならできること。ただ、即興で新球を開発し、実際に投げて打ち取ってしまう高校生投手は、これまで筆者が5年間取材を経験させて頂いた中で1人たりともいない。関東一高戦でも2失点は失投にけん制球ミスからと、いまだに独りよがりな性格が顔を出すところもあるが、彼の底知れぬ可能性を改めて感じた関東一戦だった。

 打線は4番・西岡創太一塁手が1回戦に続くマルチ安打に甲子園初打点と、「つなぐ4番」の信条を体現する働き。3回裏に左翼線に落ちる同点二塁打で9打席目での初安打を記録した3番・多田桐吾左翼手も、ようやく復調の糸口が見えた感がある。

 「2番・右翼手」で2安打3出塁。7回裏には「真っ直ぐ突っ込んでしまって」本塁憤死のミソは付いたが、馬淵史郎監督のスタメン抜擢に見事応えた真田一斗など、ようやく全体が上げ潮ムードになってきた明徳義塾高。大会屈指、いやこの年代屈指の好左腕・田嶋大樹(佐野日大)と対戦したときに、どんな化学反応を起こすか楽しみになってきた。


■北海道担当ライタープロフィール
長壁 明(おさかべ・あきら)/1968年生まれ。札幌在住の高校野球ライター。北海道高校野球雑誌「北の球児たち」を2011年に創刊し、取材、撮影、編集、営業とすべて一人でこなしている。3月上旬に第10号を発売する。北海野球部部史を編纂し高校野球史にもこだわる。

■東京地区担当・編集部

■東海地区担当ライタープロフィール
尾関 雄一朗(おぜき・ゆういちろう)/1984年生まれ、岐阜県出身。新聞記者を経て、現在は東海圏の高校、大学、社会人を精力的に取材している。今年は母校・名古屋大のドラフト候補・七原優介の動向が気になっている。

■四国地区担当ライター・プロフィール
寺下 友徳(てらした・とものり)/1971年生まれ。2007年2月より関東から愛媛県松山市に移住し、四国の野球・スポーツを追求中。『週間サッカーダイジェスト』(日本スポーツ企画社)、 『サッカー批評』(双葉社)他、多数媒体での執筆実績あり。人間として幅を広げると同時に、新たな業態へのチャレンジも。Twitterアカウントは@t_terashita

記事タグ
この記事が気に入ったら
お願いします
本誌情報
雑誌最新刊 野球太郎No.32 2019ドラフト直前大特集号 好評発売中
おすすめ特集
2019ドラフト指名選手一覧
2019ドラフト特集
野球太郎ストーリーズ
野球の楽しみ方が変わる!雑誌「野球太郎」の情報サイト
週刊野球太郎会員の方はコチラ
ドコモ・ソフトバンク
ご利用の方
KDDI・auスマートパス
ご利用の方