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【チームの若返りはどうだ!? 巨人編】岡本和真が覚醒とドラ1育成力は高い反面、高卒育成選手は……

文=落合初春

【チームの若返りはどうだ!? 巨人編】岡本和真が覚醒とドラ1育成力は高い反面、高卒育成選手は……
 巨人ファンもホッと一息といったところだろうか。今季は春先から2014年のドラ1・岡本和真の覚醒が本格化。不調の阿部慎之助を代打に追いやる活躍で、世代交代へ希望の光を射している。

 週刊野球太郎では『どうなの? 巨人・阪神 チーム若返りはどうだ!?』と題して、チームの若返りを急ぐ巨人と阪神の育成事情に迫る。

 前編の今回は、2016年には3軍を設立し、何かと議論されてきた「巨人の育成」。今一度、そのあり方を見つめてみたい。

やはり高い「ドラ1育成力」


 「巨人のドラ1」といえば、かつては鉄板だった。高橋由伸(1997年)、上原浩治(1998年)、高橋尚成(1999年)、阿部慎之助(2000年)など、即戦力候補が次々と活躍。期待通り活躍する印象が強い。ときにはうまくいかない場合もあるが、全体的に見ればかなりの当たり率だ。

 ブレイク中の岡本和真(2014年)は獲得時から賛否両論あったが、高卒4年目でここまでやってきた。今後の継続的な活躍は未知数だが、ここまでの育成は成功といえるだろう。

 ただし、3位以下では近年はなかなかスター選手が出ていない。矢野謙次(2002年6位)、亀井善行(2004年4位)をはじめ、しぶとい活躍を見せる選手はいるが、看板選手とまで呼べるかは微妙なところ。それだけに田口麗斗(2013年3位)には期待がかかる。

「育成の星」か「育成選手の星」か…


 2000年代後半、巨人は「育成の巨人」をスローガンに若手育成を推し進めていた。それまでの金満路線からの意図的な転換だったが、そこで出てきたのが山口鉄也(2005年育成1位)、松本哲也(2006年育成3位)だった。

 両者ともに新人王を獲得。「育成の巨人」の看板となったが、育成の成果であったのかはやや疑問が残る。山口は高校卒業後渡米し、マイナーリーグで4年間プレー。入団テストでは吉村禎章氏(当時2軍監督)がスライダー、名伯楽の小谷正勝コーチがチェンジアップを評価しての合格だったという。

 松本も入団早々、2007年の春季キャンプで支配下登録されている。本格的な育成というよりは「獲ってみたら思ったよりもよかった」という線もあるのではないだろうか…。確かに掘り出しものを含めての「育成」だが、育てた結果の「育成の星」なのか、そもそも素材がよかった「育成選手の星」なのかは評価が分かれるところだ。

ようやく3軍で高卒育成にチャレンジか?


 巨人にとって、決定的に苦手分野といえるのは高卒で獲得した育成選手の「育成」だ。現在、年齢的に中堅に差し掛かる選手では河野元貴(2009年育成2位)、成瀬功亮(2010年育成6位)がチームに残るのみだ。

 3軍設立を発表した際には苦手分野克服にチャレンジするのかと思ったが、やや肩透かしを食らった。設立前年、2015年の育成ドラフトでは8人を指名したが、8人中7人が独立リーガー、高校生は橋本篤郎(育成6位)だけだった。

 ちなみに3軍制度のパイオニア、ソフトバンクは2011年の3軍設立に備え、2010年の育成ドラフトで6人を指名。うち、5人が高校生で千賀滉大(育成4位)、甲斐拓也(育成6位)も含まれていた。

 ソフトバンクの3軍初年度は、2軍でくすぶる若手を中心に出場機会を与えた。2010年のドラフト2位・柳田悠岐も3軍でプレーしている。支配下登録されている若手の出場も多かった。

 しかし、巨人の3軍初年度はほぼ育成選手で回していた。確かにソフトバンクも設立1年目のオフには大学生・独立リーガーを中心に育成指名しており、出場メンバーの確保という課題は「先人の知恵」だったのかもしれない。

 ただ、2016年の育成ドラフトでは高校生は2人。支配下の下位で高田萌生(5位)、大江竜聖(6位)を指名したものの、「高卒育成」の期待からはやや外れていた。

 それでも3軍設立3年目の今年は一気に動き出した感がある。昨年のドラフトでは、育成指名の8人中5人が高校生。支配下7位指名の村上海斗や同8位の湯浅大も3軍戦に出場しており、「育成選手のためだけの3軍」ではなくなってきた。

 「育成の巨人」の新たな看板は、今年の育成ルーキーがカギを握るのではないだろうか。3軍設立当初の大学生・独立リーガーの大量獲得に疑問を抱いたのは事実だが、それが正解か不正解だったのかはまだわからない。7〜8年後の結果を気長に待ちたい。

 ただし、巨人には「常勝の遺伝子」が宿命として存在している。故に1軍では「勝つための仕事」が求められ、下位指名の選手が結果を求めて小さくまとまってしまうケースも多い。3軍では目先の結果を度外視して、一発逆転のスターを育てられるか。一芸ある素材を丸めずにギンギンに尖らせる育成をしてほしい。ソフトバンクの初代3軍監督を務めた小川史氏は「勝敗は二の次」と言い切っていた。

文=落合初春(おちあい・もとはる)

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