安倍昌彦がイチ押しの2013夏・必ず現場で見て欲しい選手〜北信越から近畿まで〜

2013/7/16

【後編の前半は北信越〜近畿地方の高校生！】
　夏の高校野球の地区大会が49地区すべてで開幕しております。毎日の熱戦とともにみなさんのボルテージも高まってきていると思います。
　先週に前編をお送りした「流しのブルペンキャッチャー」安倍昌彦さんが注目する、この夏に球場で見に行きたい選手を紹介する、このコーナー。後編となる今回は関東より西の地域の高校生の話です。
（こちらは7月5日に開催された三省堂神保町店での『野球太郎No.005』発売記念トークイベントにて、安倍さんが話されたことを編集して記事にしました）


大谷翔平を意識しているだろう椎野新

――時間がもったいないので行きましょう。再開は北信越からお願いします。

安倍　椎野くん（新／村上桜ヶ丘）はおもしろいよ。今年の春の北信越大会はこの子を見るために行ったようなものです。一言でいうと「ちょっと大谷選手（翔平／日本ハム）」です。この体型だし、プレーやユニフォームの着こなしを見ていると、彼は意識してると思います。ピッチングフォームも大谷選手を研究しているよね。いいところは身長が194センチあるんだけど、投げた時のボディーバランスがすごくいい。普通はデカイ奴はデカいことを武器にしようとするんだけど、彼はコンパクトな動きで軸がぶれない。今はまだ134、5キロで低めの伸びは感じられないけど、高めのストレートは遊学館のバッターでも空振りするくらいのボールでしたね。今年の遊学館の打線が空振りするくらいのストレートは相当なストレートだと考えてもらっていいです。

安倍　小川くん（大樹／佐久長聖）は去年甲子園に出たよね。見たことある人が多いので、次行きましょう。次が上田西の宮澤くん（義也）。去年は1番、今年は4番。顔を見ればわかると思いますが、彼はハーフなんです。お父さんがアフリカ系の人（ガーナ）でお母さんが日本の方で。ハーフ独特の身体能力が高くて、期待される選手なんですけど、内面の弱さが少しあって、諦めるのが早いらしいことは聞いたことがありました。監督も心のケアをしながら成長するのに苦労したそうです。春の北信越大会で見たかったんですけど、指を骨折していて見れませんでした。この夏はどれだけ成長してきたかを見てみたいです。



投手も野手も豊富な東海地方

――それでは東海いきましょう。

安倍　まずは静岡では常葉学園橘の高橋遥人くんという左ピッチャー。彼の一番いいところは、テークバックできちんとボールが隠れているところ。実際にこのピッチャーも受けまして、キャッチャーとして見ても非常に見づらい。スライダーとカーブ、そのものはすごいわけではないけど、後ろが見えないからバッターにとっては脅威に感じると思います。ストレートの質は素晴らしいですよ！



安倍　次は静岡高校の水野くん（匡貴）というピッチャー。去年の秋は故障明けだったけど、今年の春から伸びてきたピッチャーですね。いまは体もしっかりしてきて、歩幅も広がって投げられています。おそらく彼は今年の高校生右腕の上位10人に入るかな。



――次は、聖隷クリストファーの鈴木翔太くんですね。

安倍　去年の今頃の彼は素晴らしかったです。今は肩を痛めて、今年はほとんど投げていないからね。順調だったら、ドラフト1位候補のピッチャーでした。ものすごい勢いのストレートを投げます。それに加えて、フォークをワンバウンドにもできるし、ストライクにもできるんです。



――鈴木翔太くんはこの夏に球場で見に行きたい選手ですか？

安倍　そうですね、試合では一度も見ていないので。

――東海の野手はどうでしょうか？

安倍　僕が一番好きなのは東邦の関根くん（大気）という外野手。彼は「牙をむく」選手です。セカンドゴロでもファーストにヘッドスライディングするような、いい意味で「バカ」な選手。なにがなんでもプロという志でやっているのが、どのプレーにも出ています。大きくもないし、4番でもないし、自分でアピールしなきゃしょうがない、という気持ちがあるのでしょう。



――今年の東邦は評判の高いチームと聞いています。

安倍　特に大きな問題が起こらなければ東邦は甲子園にいけると思います。他にも優秀なバッターが揃っていて、キャッチャーの松井くん（聖）は1年から上位を打ってるんだけど、関根くんに刺激されて良くなってきた感じがあります。この2人の東邦の左バッターはお互い刺激しあって、相乗効果が大きいと思いますね。



技術が売りの遠藤、将来性が売りの木村

安倍　技術的に言うなら、常葉学園菊川の遠藤くん（康平）はインコースの140キロ前後を腕を畳み込んでレフトに打ち返せる技術がちゃんとある数少ない高校生。享栄の木村くん（駿斗）というショートは、とあるスカウトが密かに追っかけている、という選手です。「なんで遠藤じゃなくて、こっちなんですか？」と聞いたら、「遠藤は未来予想図がわかる気がする。でも、木村は想像できない」と言ってましたね。このスカウトはついこないだまで1軍2軍の選手を体感してきた人なので、この感覚はバカにはできないと思います。



――岐阜の選手はどうでしょうか？　県岐阜商がセンバツではよかったですが。

安倍　岐阜第一のショートがうまいと、享栄の木村くんを評価するスカウトは言っていました。

――近畿に移りますが、では桜宮の杉本陽哉くんの写真が用意できませんでした…。

安倍　2年前に山野くん（雅之／現近畿大）というキャッチャーの取材に行った時、「1年生で藤岡（大士）というピッチャーと杉本というセンターがいいんですよ」と監督さんに紹介されました。杉本くんは186センチで足もあって、僕のイメージでは糸井選手（嘉男／オリックス）なんですよ。ただ監督さんも言っていましたが、身体能力に任せた野球しかしていないんです。野球理論やメカニズムとか首から上（頭を使った）の野球に興味を持ってくれればいいんですけどね。僕の中では近畿はそれだけですかね。

――大阪桐蔭の選手は？

安倍　あ、みなさんよくご存知だと思いますので大阪桐蔭は外しました！　他にも中辻くん（神司／三田松聖）という大型の本格派になりそうなサウスポーがいたんですけど、コントロールがほしいのか、横から投げるようになっちゃってね…。

後編の後半、中国地方以西の気になる選手はこちらです！


■プロフィール
安倍昌彦（あべ・まさひこ）／早稲田大学2年まで捕手としてプレーし、3、4年時は母校・早大学院の監督を務める。その後、スカウト的観戦を30年以上に渡って続けるかたわら、2000年秋から「流しのブルペンキャッチャー」として有望投手の球を受け始める。『スカウト』シリーズに続いて、『監督と大学野球　若者が育つということ』（日刊スポーツ出版社）を上梓。最近、twitterもはじめる。アカウントは@abe_masahiko