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セイバーメトリクスでCSファイナルステージを分析!勝ち上がるにはこう戦え!

 今年のクライマックスシリーズはセイバーメトリクスに注目! OPSやQSと、一般ファンにも浸透しつつある、データを統計学的見地から客観的に選手の評価や戦略を考える分析手法を用いて、クライマックスシリーズファイナルステージ出場チームの「傾向と対策」を解説していく。


◎クライマックスファイナル・セ


 巨人は今シーズン攻撃が低調で1試合当たりの得点でリーグ平均を割った。しかし失点は1試合当たり0.4点以上もリーグ平均より少なく、安定したディフェンスの力で果たしたセ・リーグ3連覇だった。

 得点については出塁面が弱い。打席に対する四球、三振の割合、本塁打を除くフェアグラウンドに飛んだ打球が安打になった割合の3つがいずれも平均より低い。あまりボールを選ばず、積極的に打ちにいくも安打が思ったように生まれなかったようだ。

 四球、三振については昨年も平均以下だったが、昨年は今年よりも安打が出ており出塁率は平均以上になっていた。打席でのアプローチは不変ながら、何らかの理由で昨年よりも安打が出にくい状態が生まれている。

 失点減は投手の投球、野手の守備双方の働きで実現している。先発投手で三振をよく取れていたのは杉内俊哉と澤村拓一くらいで、ほかは平均か、それ以下のレベルだった。だが、四球の割合は総じて平均以下で、これが失点のリスクを下げていた。この傾向は一気に貯金をつくった9〜10月も変わっていなかったので、巨人の投手陣のスタイルだと思われる。

 野手に守備については、二塁手の片岡治大、遊撃手の坂本勇人がよくゴロをさばき、そこまで三振を取らない投球をする投手を支えた。

 CSファイナルステージでも、ディフェンスの強みが発揮されるだろう。スパートしたシーズン終盤の9月〜10月は得点も稼いだ(1試合平均4.69点)が、ずば抜けていたのは失点面で、1試合平均2.93に抑え込んだ。

 菅野智之の離脱があり、そこまで失点を抑える力を期待するのは難しそうだが、四球を減らすことで阪神の出塁を減らせば、ステージを通じて少ない失点で戦えるはずだ。

 得点についてはしっかり振っていくことか。ボールの選び方など打席での姿勢は簡単には変えられるものではない。ロペス、アンダーソン、亀井義行、阿部慎之助らのパワーで制圧していく攻撃が基本線だろう。不発に終わったとしても、ディフェンスが安定している以上接戦には持ち込める。接戦を互いに拾っていく展開になれば、1勝のアドバンテージが効いてくる。


 阪神は、ファーストステージ2試合21イニングを0点に抑えた投手陣の地力で立ち向かうことになる。四球の少なさでリスクを減らしている巨人に対し、阪神の投手陣は奪三振で失点リスクを下げている。狭い東京ドームで、バットにボールを当てさせずにアウトを取れる投手を擁しているのは大きい。

 ただし、巨人が9〜10月に得点力をアップさせたのとは対照的に、阪神の同期間の1試合当たりの平均得点は3.42。ファーストステージ2試合で1得点という結果と併せ、夏以降の得点力低下が続いていると考えざるを得ない。これについて特効薬はなく、投手陣の奮闘で接戦に持ち込み拾っていく、タフな勝ち方が求められる。



※ISO(Isolated Power):長打率−打率

※FIP(Fielding Independent Pitching):三振、四球、本塁打で算出する投手の基礎能力を計る指標。低いほど良い。
FIPを算出する式=[(四死球−故意四球)×3+本塁打×13−三振×2]÷投球回+リーグごとの補正値
・リーグごとの補正値=(防御率−[(四死球−故意四球)×3+本塁打×13−三振×2]÷投球回)……リーグ全体の数字で計算する。

※DER(Defense Efficiency Ratio):グラウンドに飛んだ打球を野手がアウトにした割合。高いほど良い
DERを算出する式=(打席−安打−四球−死球−三振−失策出塁)÷(打席−本塁打−四球−死球−三振)
・失策出塁は全体の失策数を近似値として使用


◎クライマックスファイナル・パ


 ソフトバンクは得点、失点ともにリーグ平均を上回る。得点、失点にかかわる重要要素で唯一欠けていたのは長打力のみ。これは松田宣浩の一時離脱や、本塁打の出にくい本拠地・ヤフオクドームの環境が影響していそうだ。

 出塁は打撃によるものが多く、四球による出塁は少ない。さらに長打も少なかった。打率/出塁率/長打率は.280/.344/.396/で、よく似ているのが1998年の横浜・マシンガン打線で.277/.345/.403という数字なのだが、この時の横浜は1試合の平均得点は4.72(リーグ平均は4.04点)あった。ソフトバンクの打撃が思いのほか得点に結びついていなかったことがうかがえる。

 失点については、サファテ、五十嵐亮太ら救援陣の三振奪取、四球抑制と野手の守備がリードしていた。守備は二塁手の本多雄一、三塁手の松田、遊撃手の今宮健太のゴロ処理で相当数の被安打を減らしていたことが予想される。

 先発陣はケガ人も多く支配力に欠けた。突出して三振を奪い、四球を出さずに働いた投手は見当たらない。ただ、スタンリッジ、中田賢一、攝津正の柱はいずれも平均的なレベルでバランスを確保しており、それがある程度、試合を作る役割を果たせた要因だったと見られる。

 ソフトバンクは9月の失速が強く印象に残った。その間の内容も見ておく。

 9月〜10月の24試合の平均得点は3.33点、平均失点は4.38点。それぞれシーズン通算より悪化している。

 得点減については、長谷川勇也の離脱などで出塁力の低下があったのは確かだが、本塁打も21本とある程度出ており、急に得点力が大きく下がる理由を明確にするのは難しい。単なる巡り合わせの問題だった可能性もある。だとすればポストシーズンでの得点力回復の可能性はある。

 失点増の原因はシーズン通算ペースの1.4倍ほどに増えた先発投手の四球か。四球増は、つながらないはずだった相手打線をつなげ、相手チームの得点力を記録に基づく予想域を越えて高めることがある。バランスで勝負するソフトバンクの先発陣が、四球を多く出さずに粘れるかはポストシーズンの展開を左右する要素になるかもしれない。

 14日正午現在、ファーストステージの勝ち上がりチームが確定しないので、オリックス、日本ハム、2つの観戦ポイントを振り返りたいと思う。

(オリックス勝利パターン)/オリックスはペーニャが離脱し、懸念されていた糸井嘉男の状態も良くない。得点力のベースは下がっている。接戦は避けられそうもなく、その接戦を勝っていくことは、四球やミスなどで得たチャンスが得点につながるようなケースが続いて起こらない限り難しいと考える。

 救援陣の安定感も失われている。ここのところオリックスが志向しているように見える1点を取りにいく野球は、試合中盤以降の安定したディフェンス力が前提と言える。その前提にほころびが出ているのも苦しい。

(日本ハム勝利パターン)/日本ハムはシーズンと同様に打線が好調だ。四球も選べており、得点力がクライマックスシリーズでも維持されている。1勝のビハインドを背負って戦う上でこの点は心強い。だが、陽岱鋼に三振が多く、流れに乗れていない。陽に長打が出てくれば、より日本シリーズ進出が近づいてくる。

 接戦を取るには救援陣の踏ん張りがカギか。今シーズンは安定感でソフトバンク、オリックスに比べ見劣りするが、実績のある投手は多い。完璧ではなくとも折り合いをつけられれば、打者に試合を託す状況はつくれるかもしれない。


※ISO(Isolated Power):長打率−打率

※FIP(Fielding Independent Pitching):三振、四球、本塁打で算出する投手の基礎能力を計る指標。低いほど良い。
FIPを算出する式=[(四死球−故意四球)×3+本塁打×13−三振×2]÷投球回+リーグごとの補正値
・リーグごとの補正値=防御率−[(四死球−故意四球)×3+本塁打×13−三振×2]÷投球回……リーグ全体の数字で計算する。

※DER(Defense Efficiency Ratio):グラウンドに飛んだ打球を野手がアウトにした割合。高いほど良い
DERを算出する式=(打席−安打−四球−死球−三振−失策出塁)÷(打席−本塁打−四球−死球−三振)
・失策出塁は全体の失策数を近似値として使用


■ライタープロフィール
秋山健一郎(あきやま・けんいちろう)/1978年生まれ、東京都出身。編集者。担当書籍に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクスリポート1〜3 』(デルタ、水曜社)など。

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