“使える”実戦的走力の持ち主を探せ、決勝進出チームからもランクイン！一塁かけ抜けタイムランキング

2015/4/1

■8強進出チームの一塁かけ抜けデータを追加

　春のセンバツ2回目の『炎のストップウオッチャー』。前回、大会初日、2日目の出場校の測定にとどまった「一塁かけ抜けタイム」について、さらにベスト8進出チームの俊足選手を加えたデータを紹介しよう。

　すでに大阪桐蔭、常総学院、静岡の選手については先週にも測定していたが、今回は準々決勝の試合で8チーム新たに測定したので、その3チームの選手も含めて追加された。測る機会が多いだけ少し有利になるかもしれないが、そこはお許しを。その分、敦賀気比、東海大四、浦和学院、健大高崎、県岐阜商の5校の選手が加わったので、今年の高校生トップレベルの走力がある程度つかめるはずだ。

■山本皓大（敦賀気比）が意外に速い！

　まずは、以下に示した測定結果のランキングを見てほしい。これは各選手が測定した結果の最速タイムをタイムの良い順に並べたものだ。左打者は上位10名とした。右打者が4名しか登場していないのは、それ以外に測定した選手はみな4秒50以上で、とても俊足とはいい難いためだ。高校生選手の最近の傾向としては、右打ちの俊足選手は大変少ない。そんな事情が今年の結果からもよく現れている。

　左打者については、前回も紹介した竹内諒（常総学院）の4秒02が引き続き最速タイムであった。ただ、そこに同タイムで食い込んできたのが、山本皓大（敦賀気比）である。細身でいかにもすばしっこそうな竹内に対して、山本はチームの5番打者でもあり、失礼ながら見た目からは特別足が速いようには見えないが、実戦でその能力をフルに発揮した。

　実際、山本の50メートル走のタイムも6秒2ということで、そもそも高い走力は持っている。だが、過去に何度も説明しているように、50メートル走のタイムと一塁ベースのかけ抜けタイムは必ずしもリンクしない面がある。ましてや、名鑑に表記されているタイムは自己申告のアンケート形式で集めたものなので、正直なところ少しでもアピールしようとして若干“盛っている”可能性も……。だって、今回測った某高校の某選手などは、かけ抜けタイムや走る姿からしても、とても50メートル6秒フラットには見えずゴニョゴニョ……。おおーっと！　ダークな話はこのくらいにしておこうか。

　最近の高校野球は大人も顔負けの情報戦でもあるので、ハッタリを効かせて警戒心をあおるところから勝負は始まっている！　……と、ポジティブにとらえておこう。とにかく、敦賀気比の山本は高校トップクラスの俊足である、ということだけは覚えておくと良い。

■4秒10台の選手は今後伸びる可能性もある

　続いて、左打者3位となったのが、山本と同じく敦賀気比の篠原涼の4秒07というタイム。そして、4位の江藤勇治（東海大菅生）の4秒10あたりは計測の誤差などを考慮すると、ほぼ同グループと考えていいと思う。そして、5位の鈴木将平（静岡）以下、一気に多数の選手がひしめく4秒10台後半は、毎年多数の選手が記録するタイム域のため、表現としては「普通に速い」という言い方となる。

▲決勝戦に進出した敦賀気比の先頭打者としても主将としても引っ張る篠原涼

　その意味において、今年のセンバツに出場している選手の傾向としては、全員を測ったわけではないとはいえ、近年におけるごく平均的なレベルではないかと推測される。4秒00に近い突出した選手が数人いて、4秒10台以降はウジャっと選手が増えるのが、最近の大まかなトレンドだ。そこで、たとえば熊本工時代の藤村大介（巨人）などのように甲子園で3秒80台のタイムを出す選手が登場しようものなら、当然、プロのスカウトの目に止まるだろう。

　ただ、現時点で4秒10台を出す選手については、まだ多いに可能性がある。今後、身体の成長や筋力のアップにより、大学、社会人などで4秒を切ってくることもあるからだ。

　そこで、今回ランキングの中で、もともと気になっていた選手がいたならば、その先の動きも追いかけておくことをオススメしておく。もし、大化けして世に知られる存在になったら、「オレは高校時代から目をつけていたぜっ！」と、胸を張って自慢するという、なかなか得られない優越感にひたれるかもしれない？


■プロフィール
文＝キビタキビオ／1971年生まれ、東京都出身。野球に関するありとあらゆる数値を測りまくる「炎のストップウオッチャー」として活動中。ライター活動の傍ら、『ザ・データマン〜スポーツの真実は数字にあり〜』や『球辞苑』（ともにNHK-BS）に出演するなど、活躍の場を広げている。