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【ありのままの】マスコットなのに侠気契約! 球界のご意見番、つば九郎の歩む道【姿見せるのよ】

 ファンとの交流や球団の広報役として、今やどのチームにも欠かせない存在になった球団マスコット。ただ、その名前や風貌は知っていても、どんなキャラクターであるのか、どのように誕生したのか、という点はほとんど知られていないのではないだろうか。そこで、このコーナーでは、球団マスコットの基本データや生い立ち、最新情報を毎週紹介していきたい。第1回は、球団マスコットのご意見番ともいえる、あのメタボキャラについて、振り返っていく。

*   *   *

飛べない豚はただの豚。
飛べない燕はつば九郎。

 東京ヤクルトスワローズの球団マスコット・つば九郎が日の目を見たのは1994年春の出来事。1994年3月31日のスワローズ激励会で初お披露目され、同年4月9日の阪神戦で公式戦デビューを果たした。

 あれから20年がたち、昨季は20周年メモリヤルイヤーとして「つば九郎成人(鳥)式」や「つば九郎バースデーパーティー」など様々な企画を実施。『成鳥 つば九郎』やDVDブック『つばさサイズ』、DVD『つば九郎&ドアラ 球界No.1マスコットは俺だ!』(ドアラとの競作)なども相次いで発表された。

 “成鳥”と自らうたっているように、もういい大人だ。マスコットとしての歴史も12球団の中では古株に位置する。なのに、いまだに裸一貫! それがつば九郎の変わらない「らしさ」でもある。

 何を隠そう……いや、何も隠していないと言うべきか、12球団のマスコットでユニフォームを着用していないのは、唯一、つば九郎だけ。胸に輝く「Swallows」のロゴはタトゥーなのだ。狂おしいほどの露出狂……その目立ちたがりやの精神こそが、「球団マスコット」の地位をここまで引き上げることができた原動力ではないだろうか。


 球場でのパフォーマンスはもちろんのこと、つば九郎が突出しているのは球場外のパフォーマンスにこそある。だから、オフのほうが話題にのぼることが多い。

 振り返れば、マスコットとして異例の年俸交渉をしたのが2009年オフのこと。それまでの「ヤクルト飲み放題」という現物支給から、「2896円+出来高」という年俸を勝ち取った。マスコットに関する話題が「ニュース」として報じられるようになったのもこの頃からではないだろうか。

 以降、8960円+出来高(2011年)→1万円+出来高(2012年)と順調に年俸をアップさせ、遂に2012年オフにはマスコットとしてはじめてFA宣言までしてしまった。移籍交渉にはプロ野球以外のプロレス団体やJリーグクラブなど22団体にも及び、中にはヤクルトの約3倍にあたる3万円近い年俸提示もあったといわれている。

 それでもつば九郎は「ヤクルト愛」を貫き、現状維持の1万円+出来高でヤクルトに残留した。このオフ話題となった「黒田博樹の侠気契約」よりもずっと前に、侠気あふれる契約更改をしていたのがつば九郎なのだ。

 昨年は1月31日まで契約がまとまらず、これまたマスコット史上初の「自費キャンプ」も決行。最終的には1万2千円+出来高の契約を勝ち取るだけでなく、上述した「20周年プロジェクト」の実施までこぎつけてしまう。

 そんなつば九郎の魅力に他球団も注目。昨年12月、ロッテからFAでヤクルトに移籍した成瀬善久の人的補償ならぬ“鳥”的補償として、ロッテ球団がつば九郎を要求したことがスポーツ紙を賑わせた。これまたマスコット史上初の偉業といえるだろう。


 ちなみに、今季の年俸は3000円減の9000円+出来高払いとヤクルト400、タフマンドライなどの飲み放題。1月29日にサインし、なんとかギリギリで2年連続の自費キャンプは免れた。ダウン理由は2年連続で最下位だったチーム事情も鑑みて。いまやマスコットの責務にはファンサービスだけでなく、チームを強くすることまで求められる時代となった。これまた、つば九郎だからこそ科せられる責務といえるかもしれない。

 ヤクルトよりもビール好き。だからこそのビール腹がトレードマーク、それがつば九郎。その重いお腹ゆえに、燕なのに空は飛べないが、「飛べない燕はつば九郎」とハードボイルドに決める姿を、これからも期待したい。その歩み道の先に、マスコットの未来があるはずだ。

◆つば九郎パーソナルデータ

所属:東京ヤクルトスワローズ
背番号:2896(ただし、普段は裸なので背番号はない)
デビュー年:1994年(公式戦デビューは4月9日の阪神戦)
生年月日:不明
身長:チームで5番
目くらい 体重:圧倒的なレギュラークラス
その他の球団マスコット構成:妹・つばみ(背番号283)。謎の覆面・トルクーヤ(背番号0698)

▲昨年、ヤクルトの新マスコットとなったトルクーヤ

■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」、「AllAbout News Dig」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。近著に『福島のおきて』(泰文堂)。Twitterアカウントは@oguman1977(https://twitter.com/oguman1977)

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