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プロ野球マスコットを「読む」〜球界百花繚乱編〜バファローブル・ベルの変わった歴史も振り返れる!?

 前回、このコーナーでは「球界マスコットのベストセラー作家」としてヤクルトのつば九郎と中日のドアラ、両名の執筆遍歴を特集した。

 マスコット人気を支えてきた彼らには及ばずとも、他の球団マスコットたちも続々と関連書籍を出版している。その読みどころとともに、球界マスコット本を一気に紹介していこう。


【セ・リーグ編】
◎読売ジャイアンツ:ジャビット


 球界の盟主ジャイアンツのマスコット本はその名もずばり『ジャビットです。』。2014年に刊行した。実はジャビット、この頃を境にブランディングを一新。それまで「ジャビット」の名はあくまでも巨人のマスコットの総称で、ファミリー長男には「ジャビィ」、次男には「ジャバ」、妹には「ビッキー」……といった感じで個別の名前が存在した。だが、個々の名前はいつまでたっても浸透せず、マスコット界での地位も今ひとつ伸び悩んでいた。

 そこで2014年、大胆にも個別の名称を捨て、「ミスタージャビット」「シスタージャビット」「キッズジャビット」といった“ジャビット括り”を採用。『ジャビットです。』は、その新ブランディング戦略の一環として発売された書籍だったわけだ。


 実際、自己紹介ページでも「ジャビット」連呼。本の中に1カ所たりとも「ジャビィ」の文字は存在しなかった。そんな転換期の1冊として眺めると、また違った味わいがあるはずだ。

阪神タイガース:トラッキー


 1985年デビュー。今年30周年のメモリアルイヤーを迎えたトラッキーだが、意外にもまだ自著がない。だが、2012年にトラッキー絵本『でんせつの おうえんき』がイラストレーターのタカクボジュンによって描かれている。


 本書は“トラッキー絵本”と銘打っているものの、主役はキー太(トラッキーの彼女「ラッキー」の弟)だ。甲子園球場で阪神を応援していたキー太だったが、不甲斐ない試合ぶりにガッカリ。落胆するキー太を慰め、奮起させるべく、トラッキーはキー太を球場の外にあるたこ焼き屋に連れて行くと、そこには1985年の阪神日本一との不思議な縁が隠されていた……。

 球団創設80周年のメモリアルイヤーではあったものの、1985年の再現は叶わなかった今年の阪神タイガース。そんな不甲斐ないチームにがっかりしたのならば、今こそこの本を読むべきなのかもしれない。

広島東洋カープ:スラィリー


 1995年デビュー。今年20周年のメモリアルイヤーを迎えたスラィリーは、その記念としてなのか、今年の開幕にあわせて『スラィリー、じゃけん。遊び疲れた、宮島の帰り……』を発売した。世界遺産の厳島神社がある宮島など、広島県内の観光名所など19カ所をスラィリーが巡るという本書は、発売当初「スラィリー、セミヌードも披露!」といったことでも話題となった。


 ところが、このタイトルどおり「遊び疲れ」てしまったのか、今年の広島は本が発売された開幕時に大ブレーキ。結局、この出足のつまずきが響いてしまい、0.5ゲーム差でクライマックスシリーズ出場を逃してしまった。もし次回作があるならば、もっと景気のいいタイトルにすべきだろう。

 また、広島といえばマスコットではないが「カープ坊や」の存在も忘れてはならない。このカープ坊やとスラィリーの夢の共演が『ホームラン―カープ坊やとスラィリーの絵本』で実現している。こちらもオススメしたい。

横浜DeNAベイスターズ:DB.スターマン


 今年、ファンを何度もヤキモキさせながら発売されたのがDB.スターマン オフィシャルフォトブック『よこはまの星になる!』だ。当初発売が予定された1月末から何度も何度も発売延期を繰り返し、やっと日の目を見たのが5月22日のことだった。

 だが、結果的にはこの発売日は大正解。今年5月のDeNAといえば、球団51年ぶりの7カード連続勝ち越しでセ・リーグ20勝一番乗り。中畑清監督も連日舌好調。そん「我がベイの春」をさらに盛り上げる存在として本書は登場したのだ。


 その後、1998年以来、17年ぶりに前半戦を首位で折り返したものの、最終的に最下位フィニッシュという、球界初の珍事を達成してしまったDeNA。責任を取る形で、中畑監督も去ってしまった。2012年、横浜DeNAベイスターズの誕生とともに球団の「顔」となったDB.スターマンと中畑清というツートップ体制が崩れた今、ラミレス新監督に頼るのではなく、ますますDB.スターマンが「横浜の星」にならなければならないはずだ。

【パ・リーグ編】
◎北海道日本ハムファイターズ:B・B


 走ればマスコット界最速の脚力の持ち主(フジテレビ系『トリビアの泉』調べ)。バク転はもちろんのこと、モノマネやスキーも得意。おまけにピアノの弾き語りもしてしまう多才ぶりが人気の日本ハムマスコット、ブリスキー・ザ・ベアー(B・B)。彼にはもうひとつ、「文才」も兼ね備えていた。

 2009年に上梓された『B・B Photo Book RUN』は、「ドキュメンタリー写真集」と銘打ってはいるが、実にB・Bイズムに溢れた本と評価することもできる。


 B・Bが他のマスコットともっとも違う点は、マスコットを「職業」として語り、誇りを持っていることだ。本書の中にはこんな一節がある。

「僕達マスコットの仕事は、ある意味特殊だ。『わかり合える』相手は、世間にはなかなかいない。(中略)だから、他のマスコットとともに過ごす時間は愛おしく、そして何よりも大切なのだ」

 このほか、「ライバルであり親友」と紹介するJリーグ・清水エスパルスのマスコット「パルちゃん」との巻末対談ではマスコット特有の悩み、問題提起などもなされていて興味深い。

 本書を手にしなくても、B・Bの主張は球団公式サイト「B・B's コラム」(http://www.fighters.co.jp/fanzone/mascot/bb/column/)でまとめ読みが可能だ。2004年の北海道移転以降、日本ハムとB・Bの歩みを振り返ることができるはず。2013年以降更新されていないのが残念ではあるが、「モノ言うマスコット」B・Bの主張はぜひ、一読しておきたい。

オリックス・バファローズ:バファローベル


 2011年の誕生以来、「かわいすぎる球団マスコット」として人気を集め続けているのがオリックスのバファローベルだ。通常、マスコットは「イラストだと可愛いのに、実物はキモい、怖い」と言われてしまうことが多い。そんな中、バファローベルが特異なのは、2次元よりも「3次元(実物)の方がかわいい!」と評価される点にある。

 そんなバファローベルが、あえて2次元で勝負に出たのが『バファローベルのえほん ベルとおにいちゃん』だ。なんだか、タイトル先行の企画に思えてならないが……ベルとブル、仲良し兄妹の絆の物語だ。


 2012年に発売された本書は、今ではもう“なかったことになっている設定”である「牛型ロボット」としてのベル・ブル兄妹の特徴が描かれている。そして、“いなかったことになっている”敵キャラマスコット「ブラック八カセ」も健在だ。そんな「変節」の歴史を振り返る楽しみも今となってはあるかもしれない。


 パ・リーグ勢は今回取りあげたB・Bとバファローベル以外、他の4球団のマスコット本は今のところ発売されていない(もし、ご存じであればご一報いただきたい)。球界人気を支える功労者でもある彼らの勇姿、隠された魅力を知るうえでも、ぜひ何かしらの書籍化を期待したい。


文=オグマナオト(おぐま・なおと)
1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」、「AllAbout News Dig」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。近著に『福島のおきて』(泰文堂)。Twitterアカウントは@oguman1977(https://twitter.com/oguman1977)

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