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イチローに感謝状を手渡した!? 野球殿堂博物館・筆谷敏正さんに聞く「野球の見方」


 本日の週刊野球太郎では「野球殿堂博物館に行ってみた!!」という特集記事で野球殿堂博物館を紹介したが、こちらではその記事で案内人を務めてくれた同館の事業部長・筆谷敏正さんに、ライター・森田真悟氏が「週刊野球太郎的に気になること」を直撃!

 野球殿堂博物館の事業部長という目を通した野球は、どんなふうに映っているのか。興味深い「野球の見方」やエピソードを紹介していきたい。

最近の野球殿堂表彰者


森田:まず「野球殿堂博物館」だけに、「野球殿堂入り」についてうかがいたいです。近年、「野球殿堂」に選ばれる方の傾向の違いなどはありますか?

筆谷:かつてはお年を召された方が殿堂入りするケースが多かったですが、今は若い方でも殿堂入りされていますね。

森田:そういえば去年は古田敦也さん(元・ヤクルト)、今年はソフトバンクの工藤公康監督や、巨人の斎藤雅樹2軍監督が殿堂入りを果たしていますね。

筆谷:以前は監督やコーチなどをしていると選考の対象になりませんでしたが、今は「現役を引退したプロ野球のコーチ、監督で、引退後6カ月以上経過している人」と規定が変わったので、その影響もあると思います。



イチローに直接読み上げたお礼状


森田:野球殿堂博物館には、イチロー選手(マーリンズ)がピート・ローズ氏(元・レッズほか)のメジャー記録(通算4256安打)を抜いた試合で着ていたユニフォームなどが飾ってあります。ユニフォームなどを寄贈してくれたお礼に、筆谷さんがマイアミを訪れ、試合前にイチロー選手に感謝状を手渡したことがニュースになりました。

筆谷:元々の経緯をお話しすると、以前からマーリンズの球団社長に「イチロー選手がメジャー記録を更新したときに何か寄贈してください」とお願いしていたんです。そうしたら、ピート・ローズさんの通算安打記録を更新したときのユニフォームをいただくことができたので、そのお礼を伝えに行ったんです。

森田:イチロー選手に直接、感謝状を手渡す予定だったんですか?

筆谷:マーリンズの球団社長用に英文の感謝状、イチロー選手用に日本語の感謝状を用意していたのですが、マーリンズのロイエロー副社長とはアポを取っていたものの、イチロー選手とはノーアポでした。

森田:それでも、うまく会うことができたと。

筆谷:「イチロー選手にも渡したい」と副社長に伝えたら『ちょっと待っていてください』と。幸いダッグアウトで会うことができまして、目の前で読み上げさせていただきました。

森田:読み上げられた感謝状をイチロー選手が両手で受け取る、という昔懐かしい受け渡し風景の写真がニュースに載っていましたね(笑)。

筆谷:イチロー選手も、まさかそんな形で受け取るとは思っていなかったようで、戸惑わせてしまいました。

森田:イチロー選手は何と言っていましたか?

筆谷:その感謝状は筒に入れていたため、丸まってしまっていたんです。そこで手渡す前に、丸みを直そうとしたらシワが寄ってしまいました。イチロー選手に「シワが寄ってるなあ」とツッコまれましたね(笑)。

筆谷さん的プロ野球ニュース


森田:今年のプロ野球もいろいろなことがありましたが、筆谷さんが気になったトピックを教えてください。

筆谷:まずはやっぱりカープの優勝ですよね。「25年ぶり(の優勝)」はもちろんですが、89勝のうち45勝が逆転勝ちというのもインパクトがありました。

森田:マジックを一度も消さずにゴールテープを切ったことも驚きでした。

筆谷:シーズン前にカープファンの方とお話する機会があったのですが、カープの初優勝は創設から25年が経過したシーズンで、今季も前回の優勝から25年目。初優勝の決定ゲームの相手も、今季と同じく巨人だったのです。

森田:奇遇ですね!

筆谷:優勝までの期間や対戦相手を考えると、時代は巡るというか、因縁めいたものを感じますね。

森田:その「25年周期」に合わせるかのように黒田博樹投手、新井貴浩選手らが復帰したことも、今思うと運命だったように思えます。

筆谷:はい。あと、マジックが減るのと反比例するように、博物館の図書室にカープについての問い合わせをされる方が増えていきました。カープの球団の歴史を紐解きたいと思ったファンが多かったようですね。

森田:図書室にも赤ヘルフィーバーがあったのですね。パ・リーグはいかがですか?

筆谷:やはりファイターズとホークスの優勝争い。そして大谷翔平選手の二刀流ですね。大谷選手はチームの勝敗とは関係なくファンを呼べる存在で、まるでイチロー選手のようです。まだまだ若いので、今後が楽しみでなりません。

森田:大谷選手は「持ってる」男ですね。ほかには引退が決まった選手への思いなどもありましたら聞かせてください。

筆谷:DeNAの三浦大輔投手は、18年前に日本一を経験した最後の横浜の現役選手だったので、長い間本当にお疲れ様でしたとお伝えしたいです。メモリアルな出来事を扱う仕事という私の立場からすると、連続シーズンの勝利記録を伸ばしてほしかったなという思いはありますが、こればかりは仕方がないですね。


さまざまな野球との関わり方


森田:筆谷さんとお話をして、博物館スタッフとしての野球との関わり方もあるのだと知りました。野球に関わる仕事をしたい若い方も多いですが、どのようにしたら博物館で働くことができるのでしょうか?

筆谷:まず私は、出身が東京ドームと同じ東京都文京区で巨人ファンだったので、(株式会社)東京ドームの前身にあたる(株式会社)後楽園スタヂアムという会社に入社したんです。

森田:巨人ファンで、さらに「聖地」に入社するとは……。

筆谷:でも、すぐに野球関係の担当になれたわけではなかったんですよ。遊園地の売店のスタッフをしたり、東京ドームホテルのスタッフをしたり。その後、希望が叶って今の仕事に出向することになりました。

森田:社内にはたくさんの野球ファンの方がいるでしょうから、野球殿堂博物館のスタッフというポストは人気でしょうね。

筆谷:私は出向者なので特殊だと思いますが、博物館では欠員が出たときに募集をかけることがあるので、ご興味のある方はぜひ応募してみてください。

森田:直接、博物館に就職するルートもあるのですね。

筆谷:ただこの職に就くためには、学芸員や司書などの資格が基本的には必要です。あとは、英語の語学力も必要ですね。そういう点では条件がありますが、博物館の仕事が好きで、しかも野球も好きな方にはうってつけの職場だと思います。


野球殿堂博物館の考え


森田:では最後に、博物館に来てみたいと思っている野球ファンに向けて、見どころなどを聞かせてください。

筆谷:私たちは博物館を運営していくうえで、「つなげる」「ひろげる」「たたえる」という3つのミッションを掲げています。

森田:それはどういったことでしょう?

筆谷:「つなげる」は野球の歴史を若いファンに伝えていくこと。「ひろげる」は野球の愛好家の人数を増やすこと。「たたえる」は野球殿堂表彰のことを指します。それぞれの展示物にはこのような意味が込められているので、3つのミッションを踏まえてご覧いただくと、より楽しく展示物を見ていただけると思います。

森田:展示物にはそんな隠れたテーマがあるのですね。一つ一つの展示物の重みが伝わってくる気がします。

筆谷:あと、最近ではスマートフォンのアプリを活用して、野球殿堂表彰者の肖像レリーフにスマートフォンをかざすと動画や写真を見られるようにしています。選手のプレーを知るのは動画や写真が一番。ぜひ足を運んで確かめてみてください。

森田:新しいエンターテインメントとの融合で、博物館の楽しみも広がっていきますね。次に来館するときは、展示物に隠されたテーマを自分なりに探してみたいと思います。


文=森田真悟(もりた・しんご)

野球殿堂博物館

■住所
〒112-0004 東京都文京区後楽1-3-61
東京ドーム21ゲート右
[TEL] 03-3811-3600
[FAX] 03-3811-5369

■開館時間
3月〜9月 10時〜18時
10月〜2月 10時〜17時
※入館は閉館時間の30分前迄

■入館料

大人 600円(500円)
高・大学生 400円
小・中学生 200円(150円)
65歳以上 400円
( )内は20名以上の団体料金

■休館日
月曜日
(但し、祝日、東京ドーム野球開催日、春・夏休み期間中は開館)
年末年始(12月29日〜1月1日)

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