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《阪神・超変革を振り返る》広島の“走りっぷり”と阪神の“走塁”を比較してみた


 選手たちがダイヤモンドを駆け巡る。

 2016年のシーズン開幕前に金本知憲監督(阪神)が描いた理想の姿であった。

 超変革の重要課題の一つとしていた“走塁”。しかし、シーズンが終わってみれば盗塁数はリーグ最下位。セ・パ12球団で見ても11番目の散々たる結果だった。

 来シーズンも「超変革」を継続する阪神。“走塁”の変革はいかにして成し遂げられるか。

意外にも盗塁成功率では広島と遜色がなかった



 早朝のウエートトレーニングから始まり、午前中にハードな個人練習を経て、午後の全体練習に移る強行スケジュールは、今シーズン、不甲斐ない成績で終わったチームに喝を入れるにふさわしいメニューだ。

 その中にあって、外部の専門家を招聘し、野球以外の分野から技術指導を仰いでいる。“走塁”に関しても、200メートルハードルのアジア記録保持者・秋本真吾氏を迎え、2日間にわたり新たなパワーと知見が注入された。

 課題とされる“走塁”だが、ここでセ・リーグの他球団を圧倒した今シーズンの広島の“走りっぷり”と比較してみよう。

 常に走っているイメージのある広島。一方、思うように塁を進められないイメージのある阪神。盗塁数では広島が118個、阪神59個。この2倍の差が上記のイメージの根源だろうか。

 ただ、盗塁成功率を見ると、意外にも阪神の方が上回っているのには驚いた。広島の盗塁失敗数は52個。一方、阪神は25個。成功率で表すと広島が69.4パーセント。阪神が70.2パーセント。阪神の成功率が0.8パーセント上回る計算になる。

 もちろん盗塁成功数が多ければ多いほど、得点圏にランナーが進むケースが増え、得点に結びつく可能性が高まる。そのため、勝利を呼び込む公算が大きくなることは言うまでもないのだが……。

塁に出なければはじまらない


 では、盗塁を仕掛けるための必須の要素は何だろうか?

 “足が速い”“盗塁の技術が高い”“投手のクセを読める”など、いろいろな要素はあるだろう。ただ「必須」は、当たり前だが「出塁」だ。まずは塁に出なければ始まらないということだ。

 広島との盗塁数の差は、両チームの出塁率の差がそのまま反映されたと言えなくもない。

 広島のチーム打率は.272に対し、阪神は.245と3分近く低い。また四死球の数は広島の560個に対し、阪神は503個。より出塁率の差を広げる要因にもなっている。

 広島は打てるから積極的に仕掛けられるということならば、成功率で遜色のない阪神は出塁率を上げさえすれば、同じように仕掛けるチャンスも広がるはずだ。

 かつて2001年から5年連続で盗塁王に輝いた赤星憲広の通算打率は.295、通算出塁率は.365だった。赤星はスピードもあり、スライディング技術にも長けていた。これは紛れもない事実だ。ただ、“塁に出るから走れた”のである。


出塁できないから仕掛けられない悪循環


 矢野燿大作戦コーチが、今シーズンを振り返りこんなことを言っていた。

「前半戦は積極的に盗塁を仕掛けられたが、中盤あたりから失敗を恐れるあまり動けなくなった」

 打てなくなると、ランナーを大事にするために積極的に動けなくなる。そうなると得点圏にランナーが進むチャンスが減り、結果的に得点に結びつかない。  すると、余計にまた動けなくなる。悪循環である。

 “走塁”のためには“出塁”。

 当たり前とはいえ、すべてはここに尽きるのかもしれない。走力や技術を磨くだけではいけない。“走塁”とは一筋縄ではいかないもの。

 だから「超変革」なのだ。


文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。

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