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Jリーガーの息子を持つ高木豊に訊く「プロ野球選手の育て方」2…ここまで違う3兄弟のプレースタイルと性格

◆兄は攻撃型、弟は守備型と個性がわかれていった

 元プロ野球選手の息子ながら、3人の兄弟が全員Jリーガーとなった高木豊さん。長男・俊幸(浦和レッズ)が生まれると、自宅の部屋には常にボールに触れられる環境を用意。翌年には次男・善朗(清水エスパルス)も生まれ、年子の兄弟は幼少の頃から2人でボールを使った遊びに夢中になった。そして、幼稚園の頃に近所の強豪サッカーチームの「あざみ野FC」に入れたことで、サッカーへ進む道が開かれていく。

 面白いのは、俊幸、善朗の年子の兄弟の成長の仕方だ。


「俊幸は直線的な攻撃型でしたけど、善朗はディフェンスを意識したサッカーをやりました。(ポジションは)前の選手でしたけど、絶対に引くんです。兄は点を取ったら勝てるという考えですけど、弟は点をやらなかったら負けないという考え方です」

 兄弟は日頃の遊び相手として、もっとも長く時間を共有する。当然、兄と弟の間には色々な意味で力関係が生じた。そのときの対応によって、それぞれのスタイルが確立していくというわけだ。高木兄弟の場合、兄の俊幸はドリブラーとして成長し、後塵を拝する形になる弟の善朗はそれ以外のスタイルで対抗するようになっていった。

 それは、当時、2人が憧れていたスター選手の違いにも表れていた。兄・俊幸はブラジル代表の点取り屋として活躍したロナウドに惹かれて、華麗な足技やシュートを好むようになり、弟・善朗はフランス代表の司令塔・ジダンが好きになっていったという。

 もちろん、家庭によっては、弟が兄と同じスタイルで真っ向から挑むケースもあるだろう。これは野球にも当てはまる話だ。


◆三男は末っ子ならではのタイプに

 俊幸、善朗の年子の兄弟に対して、善朗と3年離れた三男・大輔(東京ヴェルディ)はどのような成長をとげたのだろうか。

「(2人の兄の)いいところはよく見ていますよね。悪いところは排除し、いいところだけを抜粋するという、そういうタイプです」

 物心がついた時、すでに2人の兄がいた大輔は、常に兄たちを見て育った。生きた教材を目の当たりにすれば、うまく立ちまわれるようになる。まさに末っ子タイプといっていいだろう。

 また、高木氏が見た限り、3兄弟の中でもっとも野球のセンスがあったのが大輔だった。


「三男坊はプロになっていたと思います。僕から見て、野球の素質は感じましたね。投げ方もそうですし、壁当てをした時のボールの捕り方。これがね、僕にもマネできないほどの柔らかさがありました。コイツすごいなと思って、『お前、野球やらないか?』と言ったことがあるんですけど、『いや、やんないよ』って言われて(笑)」

 やはり、上2人の兄弟がサッカーをやっていれば、必然的に同じスポーツをやるのが自然な流れだろう。ただ、兄たちが高いレベルで活躍し始めるようになると、末っ子ならではの苦労も生じた。2人がすでに年齢別の日本代表に選ばれてプレーしていた頃、小学6年生の大輔と高木氏と間で話をしていたときのことだ。

「『お前、優秀な兄ちゃんを持っていて羨ましがられない?』って聞いたら、『プレッシャーだよ!』って答えましたね。やはり、子どもでも『オレはこうならなきゃいけない』というプレッシャーがあるんだなと。ハッとさせられましたね」

 兄弟といえども三者三様であることがよくわかるエピソードだ。

▲一番野球の素質があったと言われる三男・大輔もサッカーの道へと進み、U-17ワールドカップに出場するなど、活躍している

◆3人の個性に合わせた話し方をする

 こうしたそれぞれに個性のある子どもたちに対して、高木氏はどのように接していたのだろうか。

「3人を比べたこともないし、言い方も同じように言ったことはないです。連帯責任のときは並べて叱ったことはありますけども」

 また、上の2人がドリブラー、パサーになっていった流れの中で、ジダンに憧れ、「ドリブルよりもパスでつないだほうが速い」と考える理論派の次男・善朗には以下のアドバイスを送っている。

「ジダンはパスを出すだけじゃなくて、点を取ってロナウドのようになることもできる。お前はパスしか出せないだろう? もう少しドリブルができないと。プロになりたいなら両方できるようになった方がいいじゃないか」

 野球にたとえると、体の小さい選手が子どもの頃からバントや右打ちばかりに長けているようなもの。ホームランが打てたり、盗塁ができるような色々なアイテムを持っている選手の方が、相手も嫌がるしプロへの早道になる。どのスポーツにおいても、そういったことはアマチュアのときに身につけなくてはいけない。高木氏はそう考えた。それぞれの個性を尊重しつつも、子どもの頃から変に可能性を狭めないように導く。それが、高木豊流のアドバイスのポイントだった。

《次回に続く》

この後に『みんなで予想!野球太郎なんでもダービー』はいかがですか? 今週は高木3兄弟にまつわるクイズを用意しました!


■プロフィール
高木豊(たかぎ・ゆたか)/1958年10月22日生まれ、山口県出身。多々良学園高〜中央大〜横浜大洋ホエールズ・横浜ベイスターズ〜日本ハムファイターズ。中央大では東都大学リーグ通算115安打、ベストナインを4回獲得した。ドラフト3位で横浜大洋ホエールズに入団。「スーパーカートリオ」の1人として、1984年に盗塁王、その後、遊撃手と二塁手で3度ベストナインに輝くなど活躍した。1994年に現役を引退後は、アテネ五輪野球日本代表の守備走塁コーチなど指導者としても、野球解説者としても活躍した。ツイッターアカウント/@bentu2433

■ライター・プロフィール
キビタキビオ/1971年生まれ、東京都出身。野球のあらゆる数値を測りまくる「炎のストップウオッチャー」として活動中。元『野球小増』編集部員で取材経験も豊富。NHKのスポーツ番組に出演するなど、活躍の場を広げている。ツイッターアカウント/@kibitakibio

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