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今、広島ファンから最も愛される男! 新井貴浩が辿った数奇な球歴とは?


 ついに始まった2016年シーズン。始まって1週間が経とうとしているなかで、とてつもない輝きを放っている選手がいる。その選手とは、今年でプロ25年目、39歳の大ベテラン・広島東洋カープの新井貴浩である。

 シーズン前の時点で、残り29本と迫った2000安打の金字塔も、開幕カードで4本のヒットを放ち、あと25本となった。その後も安打を重ね、3月31日終了時点で残り21本としており、偉業達成の期待も日増しに高まっている。

 この期待も手伝って、現在、球場で最も熱い歓声を浴びている新井。一時はファンの憎悪の的となっていた彼の人気の秘密はどこにあるのだろうか? これまでの新井の球歴を辿りつつ、考察してみたい。

「辛いです」広島ファンを激怒させたFA移籍


 新井は、1998年ドラフト6位で広島東洋カープに入団。3年目からレギュラーに定着すると、2005年にはホームラン王を獲得するなど、チームの顔として活躍していた。

 しかし、2007年オフ。

「辛いです……。カープのことが好きだから」

 このセリフと共に、阪神タイガースへ移籍。一連のFA劇にファンは激怒。移籍後の市民球場初打席では、25番のレプリカユニホームがグラウンドに投げ捨てられる等、球場を揺るがす大ブーイングが沸き起こったのは記憶に新しい。

 広島ファンの憎悪の的となってしまった新井。阪神移籍後も主軸看板選手として活躍していたものの、2012年からは、ケガに悩まされて成績は急降下。2014年にはスタメン落ちも経験し、オフには規約を超える大減俸を通告されてしまう。

 そして、出場機会を求めて自由契約を選択した新井は、前年の2億円から10分の1となる推定2000万円で広島と契約。7年ぶりに「広島の新井」が復活して、現在に至る。


復帰を拒絶するファンの目を変えた一言


 今でこそ、チームNo.1の人気選手となった新井。しかし、カープ復帰当初のファンの目は非常に厳しかった。7年前のFA劇を根に持つファンも多く、阪神を戦力外同然で追われてきた新井を、単純に戦力として見ることができなかった。当時は7割程度のカープファンが、新井の復帰を拒絶していた。

 ところが新井復帰の1カ月後、メジャーリーグから黒田博樹が復帰。その復帰会見の場で、復帰理由の1つとして、新井の広島復帰を挙げた。この事で、なぜか「新井株」が上昇。結果的に、黒田復帰の功労者として認定されたのだ。

 その後のキャンプでも、若手に混じって泥まみれになってアピール。その親しみやすいキャラクターや、ネット上に流れるたくさんのおもしろ画像が話題となり、ジワジワと人気に火がつく。そして開幕戦での代打出場時は、球場を揺るがす大歓声が沸き起こったのだった。

結局広島ファンは新井好き


 元来、粘着質でありながら、掌(てのひら)の返しも早い傾向がある広島ファン。地元出身の人気選手だった新井には、近親憎悪に近い感情も持ち合わせていたのかもしれない。再び広島の選手として応援できることを素直に嬉しく思ったファンが大多数だったのだろう。

 7年前の事を意地を張って怒っていた手前、許すきっかけが欲しかったというのが正直なところか?

 とは言え、プロは結果が全て。新井が現在の人気を築き、ファンに認められたのは、あくまでもプロとして結果を残したからである。

 咋季は優勝候補とされながら、低調な打線と冴え渡る迷采配で、ファンの期待を裏切った広島。このなかで数少ない光が、4番として奮闘した新井の姿だった。現在の新井人気は紛れもなく、昨季の奮闘がファンの心に響いたからに相違ない。

 憎悪の的から再び郷土のヒーローとなった新井。2000安打達成と、新井の一打で広島に夢をもたらす瞬間をファンは切に待ちわびている。

文=井上智博(いのうえ・ともひろ)

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