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《高校野球》目指せ、省エネ投法。78球で完全試合も。少ない球数でも甲子園で輝いた伝説の投手たち


 プロ野球、阪神の藤浪晋太郎が投げた「161球」。そんな話題もかすむような投球をみせたのが、高校野球・宮城大会での小牛田農林・加藤優投手。7月16日から18日まで、引き分け再試合も含めて3試合連続完投。3日間で「423球」を投げ、敗れてしまったことがニュースとなった。

 また、同じ18日には昨年のセンバツ覇者・敦賀気比が福井大会でまさかの初戦敗退。5季連続の甲子園出場を逃した衝撃とともに、ドラフト候補のエース、山崎颯一郎の延長「15回208球」に及ぶ熱投が報われなかった悲しさ・悔しさが伝えられた。

 過密日程やチーム事情など、どうしてもひとりの投手に負担がかかってしまうことがあるのは否めない。そこで奮起する姿に心奪われるのもまた事実だ。実際、加藤投手のニュースに対して「あっぱれ!」と賛辞を贈るメディアもあった。

 ただ、「球数=美談」としてしまっては、球児の健康管理という意味でも、高校野球の未来のためにも議論が進展しない。そこであえて別の視点、少ない球数で試合をつくった伝説の投手たちについて振り返ってみたい。

※地方大会はコールドゲームがあるため、ここでは甲子園本大会の投球数で考察する。

センバツ最少、勝利投手では「77球」


 少ない球数で勝つためには当然、打たれないこと、が前提となる。その意味でも、完全試合達成者の球数は少ない。

 1978年のセンバツ1回戦、前橋対比叡山の試合で、甲子園大会史上初となる完全試合を達成したのが前橋の松本稔。このとき投じた球数が「78球」。ボール球はわずか11球で、1時間35分という短時間の試合だった。

 この78球の記録を塗り替えたのが、2007年センバツでの関西・川辺郁也。2回戦の創造学園大付戦で9回を投げ、「77球完封勝利」をおさめている。ちなみにこの川辺、背番号は「5」。本来のエースがケガのため登板できず、試合当日に急遽先発が決定。準備もままならない中でみせた快投だった。

 なお、負け投手も含めると、1960年のセンバツ大会で秋田商・今川敬三が「74球」完投。ただし、このときは8回完投(先攻めのため)での記録だった。


甲子園史上最少は「65球」


 1978年、夏の甲子園 2回戦、鶴商学園(現・鶴岡東)対日田林工戦で、鶴岡学園の君島厚志が0対3と負け投手ながら「68球」で完投した。

 すると翌1979年の甲子園2回戦、倉敷商対浪商(現・大体大浪商)戦で、倉敷商の片山勝が記録更新。0対4での敗戦、先攻めのため8回完投ながら「65球」という記録を作っている。

 ただ、やはり勝った試合でこそ最少投球にも意味がある、というもの。勝利投手では、1985年夏の甲子園、東洋大姫路のサブマリン・豊田次郎(元オリックス)が高岡商戦で記録した「74球完封」、というものがある。試合時間はわずか1時間21分だった。

「甲子園で優勝するためには、という逆算から出た考え方」


 少ない球数で勝つ。それはもちろん理想ではあるが、そう簡単に狙ってできないのもまた事実だ。近年では、桐光学園時代の松井裕樹(現・楽天)が「奪三振マシン」から打たせて取るピッチングへとモデルチェンジを目指し、結果として最後の夏に調子を崩してしまった事例もある。

 打たせて取るピッチングで天下を穫った男、といえば、やはりPL学園時代の桑田真澄(元・巨人ほか)が思い浮かぶ。桑田はあるインタビューで、「いかにして少ない球で抑えるか」というテーマでこんなコメントを残している。

《僕は低めだけでなく、調子がいいときは、高めのストライクゾーンに投げてフライを打たせたり、カーブをど真ん中に投げて簡単にカウントを稼いだりしていました。ほかには投球プレートを一塁側や三塁側と踏み分け、変化をつけて投げていました。真っすぐも3段階の速さを使っていました。すべて甲子園で優勝するためには、という逆算から出た考え方でした》

(『甲子園ヒーロー列伝』より抜粋)

 実際、この投球スタイルで、「82球完封」(1985年センバツ・天理戦)という省エネ試合の経験があるのだから説得力があるというもの。「甲子園で優勝するためには、という逆算から出た考え方」が実践できたからこそ、甲子園20勝投手になれたわけだ。

 横浜・松坂大輔の延長17回250球完投勝利。早稲田実業・斎藤佑樹の1大会(7試合)948球。済美・安樂智大のセンバツ5試合772球……甲子園の歴史を紡いできた伝説の鉄腕たち。それもまた高校野球の魅力を語る上では欠かせないドラマだ。

 だが、そろそろ違うドラマを求めたっていい。今年の夏は、少ない球数でチームに勝利を導いたエースにこそ、大きな賛辞をおくってみたい。


文=オグマナオト

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