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亜細亜大6連覇!「大学野球は4年生野球」の真骨頂を見た!

「勝ち点を挙げたチームが優勝」となった東都大学リーグ。その最終週に行われたのが亜細亜大vs國學院大だった。延長戦2度を含む熾烈な3試合を2勝1敗で制した亜細亜大が、東都大学リーグ戦後史上初となる6連覇を達成し、春のリーグ戦は幕を閉じた。

※全日本大学野球選手権(6月10日から/亜細亜大の初戦は11日に東京ドーム)に3年連続12回目の出場をする。


▲胴上げされる眞野恵祐主将(4年・神戸国際大付高)。代打要員として大事な場面でことごとくバントを確実に決めた[写真:市川菜月]

「ひたむきに頑張った4年生に結果が出たので、“野球の神様はいるんだな”と思いました」と閉会式後の記者会見で、亜細亜大・生田勉監督は率直な想いを語った。

 6連覇の立役者として真っ先に名前が挙がるのは、最高殊勲選手と最優秀投手に選出されたエースの山?康晃(4年・帝京高)だが、普段は目立たない存在である4年生の活躍もこの國學院大との3試合で際立った。

 「優勝できる戦力ではなかった」と亜細亜大・生田勉監督も話すように、九里亜蓮(広島)、嶺井博希(DeNA)、中村篤人(NTT西日本)、中村毅(Honda鈴鹿)らこれまでチームの屋台骨を支えてきた選手が卒業し、そして、今年のチームの主力の多くは3年生以下という構成だった。

 だが1回戦を取られ、後のなくなった2回戦では、普段は3番手捕手の役割である渡将太(4年・福岡第一高)が5回に代打で起用され値千金の決勝打を放ち、その後はマスクを被り、初先発の川本祐輔(3年・尾道高)を好リード。4-0の完封勝利に導いた。

 続く、勝ったチームが優勝となる3回戦では、5回にエース・山?が國學院大に先制を許す苦しい展開。さらには1回戦で10回完封の活躍を見せた國學院大のエース・田中大輝(4年・必由館高)も尻上がりに調子を上げていた。

 ここで試合を振り出しに戻したのが、池知佑也(4年・高知高)。開幕週終了後からこの國學院大との1回戦までベンチにすら入っていなかった池知だが、2回戦でダメ押しのタイムリーを放ち、この日はスタメン起用されていた。

 そして迎えた7回の第3打席。

「追い込まれたので変化球を待っていたのですが、振り抜いたら入りました」

 甘く入ったストレートを振り抜くと、打球はそのままレフトスタンドへ。貴重な同点本塁打となった。

▲同点本塁打を放ちエース・山?と抱き合う池知[写真:市川菜月]

 さらには延長10回、先頭打者としてレフトオーバーの二塁打で出塁。その後、バントで三塁まで進むと、8番・長曽我部竜也(4年・新田高)の打席でまたも大きな仕事を果たす。長曽我部は初球スクイズを敢行するも、國學院大の佐々木駿(4年・桐光学園高)に読まれ、万事休す……と思いきや、「捕手が立ったのが見えたので」と池知が慌てて三塁に戻り、1死三塁のチャンスを残す。するとそれに応えるように、長曽我部がセンター前へ運び、池知が殊勲のホームイン。これが決勝点となった。

▲激戦が物語るように優勝決定の瞬間を足が吊ってしまった池知は徳田紀之コーチに担がれ整列に加わった[写真:市川菜月]


 この優勝の背景には、このようなエピソードがある。

 1回戦をサヨナラ満塁本塁打という劇的な幕切れで敗れた亜細亜大。そこで4年生たちが「これまでにあって今ないものは何か?」とミーティングで話し合った。そこで出たのが「草むしり」だった。

 この3月からメイングラウンドが人工芝となった亜細亜大。そのため、「草むしりを行う」という自分たちの原点や伝統を忘れてしまったのではないか? そう考えた4年生たちは、1回戦から帰った後の夕方、そして2回戦当日の早朝にサブグラウンドの草むしりを始め、それに後輩たちも続き、全員で草むしりをした。

 この草むしりと4年生の活躍が冒頭の生田監督の発言に繋がった。

 昔から「大学野球は4年生野球」と言われる。チームを引っ張る4年生が主体となって初めて結果が出る、そんな意だ。それをまさしく体現したのが亜細亜大であり、準優勝の國學院大もそうだった。

 惜しくも優勝を逃した國學院大。昨秋まで出番が無い、もしくはわずかだった田中、佐々木、井村滋(4年・横浜創学館高)が守りを支え、攻撃面ではこれまで際立った成績を残せていなかった小木曽亮(4年・中京大中京高)がリーグ2位となる打率.371でチームを牽引した。山下幸輝(4年・関東一高)は、誰よりも「勝ちにこだわる姿勢」を見せてチームをまとめあげ、亜細亜大との1回戦ではサヨナラ満塁本塁打を放つなど大活躍を遂げた。

 また5・6位決定プレーオフで1部残留を決めた中央大も、この試合で羽山弘起(4年・静岡商高)が再三の好守を見せ、決勝打は東隆志(4年・高陽東高)が放ち、意地を見せた。

「大学野球は4年生野球」


 その言葉の重みをあらためて痛感したリーグ戦だった。

 全日本大学野球選手権翌日(雨天などでの順延がなければ6月16日)から行われる1部・2部入替戦を戦う両チームも、青山学院大(1部最下位)が福本翼(4年・大阪桐蔭高)、加藤匠馬(4年・三重高)ら、立正大(2部優勝)が沼田優雅(4年・天理高/2部最優秀投手)、本間諒(4年・関東一高/2部最高殊勲選手)ら、4年生の主力選手たちの活躍が勝敗を大きく左右することだろう。

 どちらにとっても負けられない一戦だが、4年生を中心とした意地のぶつかり合いに期待をしたい。


■ライタープロフィール
高木遊(たかぎ・ゆう)/田中将大世代の1988年生まれ。幼少時よりスポーツ観戦に勤しみ、大学卒業後にライター活動を開始。主に東都大学野球を中心とした首都圏の大学野球を取材。その他のアマチュア野球をはじめ、ラグビーやアイスホッケー、ボクシング、柔道なども取材領域とする。ナックルボールスタジアム主催のイベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。
高木遊の『熱闘通信』随時更新中(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/buaka/)。twitter(@you_the_ballad)

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