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日本と台湾の両者優勝で幕を閉じたユニバーシアード競技大会現地レポート

【この記事の読みどころ】
・台湾とともに金メダルを獲得した侍ジャパン
・雨に悩まされる大会も、無失策無失点で大会を終えた
・NPBで通用しそうな選手も! レベルが高い台湾の選手たち

 1995年の福岡大会以来20年ぶりに野球競技が開催された「第28回ユニバーシアード競技大会」で侍ジャパン・大学日本代表が台湾との両者優勝という形ながら、初めて世界の頂点に立った。


★悪コンディションの中でも日本らしさを随所に発揮

 予選プールA組に入った日本は、初戦で地元・韓国と対戦。

 序盤は走者を得点圏に置きながら、なかなか得点を奪えない歯がゆい展開が続いたが、合宿時から調子を上げてきていた柳裕也(明治大)が、テンポの良い投球とうまい牽制でリズムをもたらす。

 すると、4回に四球で出塁した北村祥治(亜細亜大)が、坂本誠志郎(明治大)のレフト前安打で一気に三進。この積極走塁で韓国にプレッシャーをかけると、佐藤拓也(立教大)の内野安打で先制。さらに守備がもたつく間に、二塁走者の坂本も一気に生還。この好走塁2つで流れを完全に掴んだ日本は、その後も着実に加点していった。8−0で快勝し、緊張感のある開幕戦を飾った。

 中国戦、フランス戦は、日本国内であれば間違いなく中止になるレベルの雨が降り続いたが、日本は格下相手に手を緩めることはなく、9−0(5回降雨コールド)、10−0(7回コールド)と大勝で連勝。守備陣も遊撃手の柴田竜拓(國學院大)を中心に固い守りを見せ、無失点無失策で決勝トーナメントに駒を進めた。

★準決勝も快勝、万全の体勢で決勝に臨むも……

 準決勝での対戦相手となったのは、予選プールB組を2位で通過したアメリカ。今回のアメリカ代表はカリフォルニア州立大フラトン校の選手たちで構成された単独チームではあったが、それゆえの結束力や隙をついた走塁などを見せるチームであった。

 だが日本は、初回に茂木栄五郎(早稲田大)の三塁打で先制すると、その後も4番に入った吉田正尚(青山学院大)の2打点を挙げる活躍などで計8得点。不調だった?山俊(明治大)にも試合終盤に安打が飛び出すなど、クリーンアップの好調・復調ぶりが顕著に表れる試合だった。投げても柳、井口和朋(東農大北海道)、高橋礼(専修大)、上原健太(明治大)と4投手で完封リレー。4試合35得点無失点無失策と圧倒的な成績で決勝戦に進出した。

 決勝戦の先発は田中正義(創価大)。善波達也監督が「金メダルへの近道」と予選リーグ1試合1回(韓国戦)のみと温存し、万全の体勢で決勝戦を迎えた。

 だが、大会期間中降り続けた雨の中でも最も強い雨が降りしきり、試合開始予定だった午後7時から2時間が過ぎた午後9時すぎに決勝戦の雨天中止、日本と台湾の両者優勝が両軍ベンチに伝えられ、思わぬ形で幕が下りた。

 歓喜に沸く台湾ベンチとは対照的に、勝って優勝を決めたかった日本ベンチは落胆。涙を流す選手やスタッフもいたほどだった。

★急成長を見せる台湾代表!

 日本と同じ金メダルに輝いた台湾は、日本とは対照的に接戦に次ぐ接戦を制し、決勝戦に駒を進めた。

 映画『KANO 1931海の向こうの甲子園』台湾チームのメインキャストに抜擢された俳優との「二刀流選手」曹佑寧から始まる打線は、侍ジャパンとも見劣りしない充実の布陣だった。中でも4番の王柏融は、渡韓していたNPB球団スカウトが「外国人枠でなければ獲得したい選手」と話すなど高評価を得ていた。

 また、21Uワールドカップでも優勝に導いた郭李建夫監督(元阪神)の采配も光った。送球に不安のあった二遊間を試合中にスイッチすると、二塁手から遊撃手に回った張皓偉が好プレーを連発し投手陣を助けた。

 準決勝の先発には、予選リーグで登板が無かった宋家豪を抜擢。がっしりとした体格から最速150キロのストレートとスライダー、フォーク、チェンジアップなどを駆使する姿に、NPB球団スカウトたちも色めきたった(※その後、統一セブンイレブンライオンズにドラフト2位指名されているという情報が入り、落胆した)。

 21Uに続く若年層での世界大会優勝に郭李監督は「みんな嬉しい気持ちでいっぱいです。選手がよく頑張ってくれました」と選手を労った。一方で、「もっともっと努力し続けなければいけない。選手層は決して厚くないので、“投・攻・守”でのスピードを根幹に、チーム力をつけていきたい」と気を引き締め、更なる高みに目を向けた。

 雨天中止による両者金メダルという不本意な形で幕が下ろされたユニバーシアードだが、持てる力を存分に発揮した日本と台湾は、金メダルの輝きにふさわしい戦いぶりだった。


■プロフィール
高木遊(たかぎ・ゆう)/1988年、東京都出身。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。大学野球を中心にアマチュア野球、ラグビー、ボクシングなどを取材している。高木遊の『熱闘通信(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/buaka/)』随時更新中。twitterアカウントは@ you_the_ballad (https://twitter.com/you_the_ballad)

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