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長嶋茂雄スペシャル■第2回『週刊野球』




■長嶋茂雄と日本のプロ野球

 先週に引き続き、長嶋さんが日本の「野球雑誌」に与えた影響はどのくらい偉大だったのかを検証していくには、昭和20年代からの「野球メディア」を把握しておく必要があるでしょう。昭和33年から遡ること約10年前、昭和21年には日刊スポーツが、24年にはスポーツニッポンと続々とスポーツ紙が創刊され、スポーツの話題が全国津々浦々に広がってゆきます。
そしてプロ野球界へ新規参入を求める企業が続出しプロ野球リーグが2つに分裂したのは昭和25年。さらに日本テレビがプロ野球中継を開始したのは昭和28年のことでした。その流れに乗って冒頭の昭和33年、長嶋茂雄が巨人軍に入団するわけです。

 東京六大学リーグの通算本塁打記録を手土産にプロ入りした長嶋さん。「野球メディア」がグングン広がっていくこの流れに、長嶋さんのようなスーパースターが現れたのは「運命」だったのかもしれません。翌34年には後楽園球場で、巨人vs阪神の日本プロ野球史上初めての天覧試合が行われます。昭和天皇、長嶋茂雄、王貞治、村山実といった昭和を彩った人物が一堂に会した球場で、9回裏、長嶋さんはレフトポール際にサヨナラ本塁打を放ち、まさに歴史に残る大仕事を成し遂げたのです。この試合で日本プロ野球は「職業野球」と蔑まれた時代に決別し、社会的地位を確立したといっても過言ではないでしょう。

 先週もお伝えしたように、昭和33年には週刊ベースボールが創刊。創刊号の表紙を飾ったのは、長嶋茂雄と広岡達朗の巨人軍三遊間コンビだったそうで、ちなみに「週ベ」の創刊号と100号、500号、1000号、1500号、2000号の表紙では全て長嶋さんが登場するとのこと。
そうです、ここから長嶋さんとともに、日本のプロ野球人気が隆盛を極めていくのです。その翌年には「週刊野球」なる週刊野球専門誌が発行されます。この「週刊野球」は明治41年(1908年)から月刊野球雑誌「ベースボール」として発行していた野球雑誌の老舗中の老舗といえる「野球界」が週刊化したモノ。ちなみに発売していたのは博文館という出版社ですが、明治時代の富国強兵の風潮にあやかり、欧化主義に対抗する国粋主義の思想があったそうで、「野球界」といっても記事中には日本の国技である相撲の特集記事も掲載していたという、なんだかよくわからない野球古本だったようです。いずれにせよ、日本最古の野球雑誌を継承した野球古本として大変貴重なシロモノなのです。ある意味、大量生産された「週ベ」よりも珍しく、価値のある野球古本といえるのではないでしょうか。


一見、普通の雑誌ですが...


表紙をめくると川上さんと広岡さんが!?

 さらに余談ではありますが、あの「野球盤」も発売されたのは昭和33年。最初は当時の大卒初任給が1万円程度のなか、野球盤はなんと1750円と破格の値段! しかしながら飛ぶように売れたといいます。「野球雑誌」を含めたメディアの後押しによって、長嶋さんを中心とする巨人軍が野球界をリードする構造はここで完成したといえるでしょう。ズバリ、長嶋さんの巨人軍入団は日本のプロ野球界における巨大な転換期であり、野球雑誌をはじめとした「野球文化」の繁栄にも長嶋さんは一役、いや二役以上も買っているのです。


■プロフィール
小野祥之(おの・よしゆき)/プロ・アマ問わず野球界にて知る人ぞ知る、野球本の品揃え日本一の古本屋「ビブリオ」の店主。東京・神保町でお店を切り盛りしつつ、仕事で日本各地を飛び回る傍ら、趣味はボーリングと、まだまだ謎は多い。

文=鈴木雷人(すずき・らいと)/会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。自他共に認める「太鼓持ちライター」であり、千葉ロッテファンでもある。Twitterは@suzukiwrite

■お店紹介
『BIBLIO』(ビブリオ)
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1丁目25
03-3295-6088

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