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第四回「禁断のテーマ『嫁選び』について」

 子どもを野球好きにさせるには? 子どもを将来野球選手にしたい! そんな親の思惑をことごとく裏切る子どもたち。野球と子育てについて考えるコーナーの第四回目。野球ライター“ハリケン”こと服部健太郎さんが実話を交えて、大きな大きな父兄コーチたちの悩みをつづります。

運動音痴だからこその「奥さん頼み」?


 少年野球の指導にどっぷりとはまると、コーチ同士でご飯を食べたり、お酒を飲みに行く機会が必然的に多くなる、という話をよく聞く。
 私もその口だった。夕方に練習が終われば「本日の練習メニューの反省会」と称し、飲みに行く。試合に勝てば祝勝会、負ければ残念会と銘打ち、8名前後の規模で地元の酒場に繰り出す。「どうせお酒飲みたいだけなんでしょ」という、お母さん方の冷ややかな突っ込みを受けながらの出陣となるが、返せる言葉はほとんどない。
 少年野球チームの場合は、同じチームに子どもも在籍する、いわゆる「父兄コーチ」の割合がで高いチームが多い。そのため、一緒のチームで奮闘しているわが子の野球の上達ペースや体格のハンデなどに不満や悩みを抱えているコーチは少なくない。そんな背景もあってか、飲み会の話題が年に一回くらいのペースで「奥さん選びに関する『たられば』論」という、到底、奥さま方の耳には入れられない、禁断の域に発展してしまう時がある。
 例を挙げると、
「うちの息子は同学年の子たちの中でも体が小さすぎる…。自分が小さいんだから、もう少し身長の高い嫁さんをもらえばよかった…」
「うちの息子はどんくさい嫁に似て、運動神経が悪すぎる。もう少し運動神経のいい嫁を選べばよかった…」
 といった類いの発言だ。「たらればにも程がある!」と読者の方からお叱りを受けてしまいそうだが、このたられば話、いったん点火されると、なかなか収束しない傾向がある。
「おれ、自分が背低いし、自分よりも身長が低い人を奥さんにしなきゃっていう意識がどこかにあったんだよな。でもそんなのって、今思えば、単なる自分のエゴだよ。見栄だよ。子どもの野球のことを思えば、自分の身長が小さいなら、自分よりも大きいくらいの奥さんと結婚しなきゃいけなかったんじゃん!」
 野球育児をとことんつき詰めれば、こういう発想になってしまうのかもしれない。でもこの発想を野球育児の一環だと世に叫ぶ勇気は私にはない。
「でも結婚するときって、子どもの野球のことを考えて、奥さんの体の大きさとか、運動神経を気にする人って、なかなかいないでしょ〜?」
「いない、いない。おれもそんなこと考えたことなかった」
「体格がよく、運動神経もいいという奥さんをもらった人も、好きだった人がたまたまそうだったというだけでしょ」
「でも、おれはもしもタイムマシンが発明されたならば、独身の頃の自分に向かって言ってやるな。『子どもの野球のためにも少しはそのへんも考えて、結婚しろ!』って」
「でもそれじゃ責任がすべて奥さんにあるみたいじゃないですか〜? ○○さんだってそんなに運動神経いい方じゃないでしょ?」
「わかってるよ! だから、余計に奥さん頼みになるんだよ!」
「でもプロ野球のスカウトは父親よりも、母親の体格を重要視するってまことしやかに言われてるよね? どちらかというと、男の子の場合は、奥さんの占めるウエートのほうが大きいのかも」
「じゃあ、息子に野球をやらせて、大成させることを願うならば、結婚相手の体格や運動神経って、けっして無視できない要素だよなぁ」
「だからっていまさらどうしろと!?」
「思い切ってもう一人子ども作るとか。もしかすると先祖にものすごく体が大きくて、運動神経のいい人がいて、その人の血が出現するかもしれないし」
「そういえば、低身長が多い、うちの家系の中で、おれのひいおじいちゃんだけはその世代の人にしては、身長が大きかったらしいんだよな。あの血が俺のどこかに流れてるから、うちの子が今後大きくなる可能性はあることはあるんだよな」
「うちもおばあちゃんが足速くて、学生時代に陸上で県大会上位に入ったらしいわ。あの運動神経がうちの子にも入ってるわけだから、そのうちどこかでぐっと飛躍するのかも…」
 気が付けば、先祖に希望を託す展開になっていたりする。
 そしていつのまにか、対象が自分の家のことじゃなくなっていたりすることも。
「プロ野球選手って、細くてきれい系の女性と結婚する割合が多いような気がするけど、ガタイがよくて、運動神経のよい奥さんをもらったら、大成する二世がもっと増えると思うんだよね」
「でも、実際、モデルやアナウンサーと結婚できる立場になったら、仮にその子が運動音痴だったとしても、そっちを選んでしまうかも、おれ…」
「わしも選ばないという自信がない」
「その時点では、自分の子どもが野球をやるかどうかなんてわかんないしね」
「そうだね。まだ見ぬわが子より、目の前の美人さんをとっちゃうね、きっと」
 男とはなんて身勝手で都合のいい生き物なのだろう。そう思うのはこういう時である。

絶対に奥さんに言ってはいけない話


  「服部さんはどうだったんですか? 奥さん選ぶ際、体格とか運動神経はぜんぜん気にしなかったですか?」と聞かれれば、「もちろん、そんなこと気にしなかった」と返していた。しかし、よくよく思い返してみると、「彼女のこの要素は自分の子が野球するにあたってプラス要素かも」と思うことがゼロだったというわけではなかった。
 私は高校時代から視力が悪く、メガネ、コンタクトレンズにお世話になりながら野球をするはめになったが、妻は現在も裸眼視力が2.0。目がいいということを交際し始めた頃に知ったとき、心のどこかで「この子と結婚したら、子どもがメガネいらずになる可能性は高くなるなぁ。それって子どもが野球をやる上では有利なことだよな」と思ったことは否定しない。
「学生時代、足はけっこう速いほうだったよ」と聞けば、「そうか、足速いのかぁ…。子どもは50メートル6秒くらいで走っちゃうかも」なんて思ったし、「安産体形って言われるの」という腰周りを見て、「ピッチャーならお尻は大きいほうがいいよなぁ」と思ったことも否定はしない。
 念のため記しておくと、妻と結婚を決めた理由にそういった要素が入り込むことはなかった。ただ、そういう感想が頭の中を駆け巡った瞬間が無意識に近いレベルで、過去にあった、というだけの話である。
 結婚後、一度だけ、軽い気持ちで上記の感想について話したことがあった。ところが、妻は「どうせあなたは私の視力に惹かれて結婚したんだわ!」「ああ、どうせ私のお尻は大きいですよ!」と大激怒。以来、この手の話は絶対にしまいと固く心に決めている。
 と、ここまで書いて、大きな問題点が浮かび上がった。多くの人が目にする公のサイトで、妻が激怒したようネタを記してよかったんだろうか…? 妻がこの記事を読んでしまったらどうしよう?
 幸い、妻はまだスマホを持っていない。自分からこの記事を目にする機会は今のところはないだろう。もし「第四回目はなにを書いたの?」と聞かれたら「連載は編集部の都合で一週飛ばすことになった」と答えよう。うん、そうしよう。



文=服部健太郎(ハリケン)/1967年生まれ、兵庫県出身。幼少期をアメリカ・オレゴン州で過ごした元商社マン。堪能な英語力を生かした外国人選手取材と技術系取材を得意とする実力派。少年野球チームのコーチをしていた経験もある。

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