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スポーツをやっていればありがたい高身長。しかし実生活では悩みが多い!? 服部家から学ぶ身長事情(第50回)

 子どもを野球好きにさせるには? 子どもを将来野球選手にしたい! しかし、そんな親の思惑を、よくも悪くもことごとく裏切る子どもたち。野球と子育てについて考える「野球育児」コーナー。
 多くの男の子がどこかで悩む「伸びない身長」。でも、高くなりすぎるのはどうなのか? 今週は身長にまつわるお話です。


亡き父の口癖


「とにかくたくさん食べて、寝ろ。暇さえあれば寝とけ」

 私が中学生だった頃、今は亡き父は、ことあるごとに私に向かってそう言っていた記憶がある。

「勉強は大人になってもできるけど、身長はいましか伸ばせないからな」

 そんなこともよく言っていた。

 勉強をしなくてもいいという意味ではなかったが、友達の話などを聞く限り、よその家庭よりは、昼寝をしたり、ゴロゴロ寝そべりながら過ごす事に対する許容範囲が広かった気がする。食べても、食べてもお腹がすく、思春期特有の化け物のような食欲に見合う食事の量もしっかりと与えてもらっていた。

「これからの時代、ピッチャーでやっていくなら180センチ以上は絶対にあったほうがいいから」

「野球以外でもこれからの時代、身長が高いほうが絶対になにかと得するから。とにかくたくさん食べて、睡眠をとれ」

「おれに感謝する日がきっとくるから」

 商社マンだった亡き父の身長は178センチ。「長嶋茂雄と一緒だ」とよく言っていたが、その年代の人としては高い部類ではある。大学まで続けた投手としても、外国人を相手に仕事をする上でも、そして本人いわく、女性にモテる上でも、身長が高いことでなにかとアドバンテージを感じてきたらしく、「息子の身長も高くしてやりたい」というのは父なりの親心だったのだろうか。

 一日平均8時間の睡眠時間をきっちりととることができた中学時代に私の身長は約25センチ伸び、高校入学時で180センチ。最終的には185センチにまで伸びた。

わが子の予測身長は何センチ!?


 やがて私も結婚し、二人の息子を持つ親となった。長男が生まれたばかりの頃、妻と「わが子はどのくらいの身長になるんだろう?」という話になった。妻は「なんか目安になる計算式があるらしいよ」といい、調べたところ、たしかに世に広く知られている計算式が存在した。

「男の子の将来の身長を予測する場合は、『(両親の身長の合計+13)÷2+2』みたいだな」

 妻の身長は159センチ。計算すると180.5センチと出た。

「あれ? おれの身長超えないのか…?」

「あくまでも目安でしょこれは。遺伝の要素は2〜3割。食習慣や生活習慣の影響のほうが遺伝よりも大きいってこの本に書いてあるから、もっと大きくなる可能性もあるよ、きっと。後天的な要素を考慮すると、この身長の±8センチの差は出てくるっていう説もあるみたいだし」

「ってことは172.5センチから188.5の可能性があるということか」

「まぁ、これも真実かどうかは知らんけどね」

 ちょっと待てよ。自分の場合はどうなのだろう。父178センチ、母162センチ。この計算式に基づくと、私の予測身長は178.5センチと出た。

「ほら! やっぱり目安なんだよ! 実際は185センチまで伸びたんだから予測身長よりも6.5センチも高く育ったんじゃない!」と妻。

「ねぇねぇ、もしかすると、その6.5センチにお義父さんの思いが詰まってるんじゃないの? お義父さんが息子の身長に無関心だったらきっとあなたは178.5センチだったんだよ!」

「おれに感謝する日がくるから」と言いながらニヤリと笑った、在りし日の父の表情が脳裏に浮かんだ。

その後の息子たちの身長は…


 ついこの間まで、小学生だと思っていた息子たちだったが、気づけば高1と中2になった。

 彼らが思春期を迎える頃から、「しっかり食べろ」、「しっかり寝ろよ」という言葉を無意識に連発していたのは、父の影響も少なからずあったのだろう。

 現在の身長は長男ゆうたろうが177センチ、次男こうじろうが181センチ。兄は身長が完全に止まったわけではないものの、成長著しい弟に追い抜かれ、さらにじりじりと差をつけられる状態が続いている。

 妻はそんな兄がやや不憫なようで、ことあるごとに「お父さんみたいにそんな大きくならんでもいいねんで。家の中で無駄に邪魔やん、あんな大きかったら」、「今でも別に十分やん」といった言葉を発しているのが耳に入る。

 先日、夜に妻とコーヒーを飲んでいると、妻が「ねぇ、昔、子どもの身長予測の計算したことあったよね? 覚えてる?」と話を振ってきた。

「あぁ、覚えてるよ。180.5センチの±8センチだったっけ」

「そうそう。なんかさ、けっこういい線ついてるなと思ったのよね。子どもって普通にお父さんの身長を超えるものだと思ってたから、あのときは、『え?』と思ったけど、たぶんゆうたろうはあなたの身長を抜かすどころか、その180.5センチも難しそうな感じだし……。本人も、お父さんを抜かすことはもうあきらめてるみたい。『せめて180センチはいきたいけどなぁ』なんて言ってたよ」

 そんなことを言ってたのか…。たしかに少年野球時代から、周囲の目は「いずれお父さんは抜かすんだろうから、服部兄弟はものすごく大きくなるなぁ!」というものが大半だった。そんな人たちが現在の長男の身長を知ると、「あれ? そうなの…? 意外と伸びなかったんだ」というリアクションがかなりの確率で返ってくる。長男自身も周囲のそういった反応に対しては「もう弟にも抜かれちゃいまして…」と自虐的な対応をしているらしく、妻が不憫がる気持ちもわからないではない。

「俺の執念が足りなかったのかなぁ…?」

 父の顔がふと頭に浮かび、思わずそんなことを口にしていた。

妻の鋭すぎる夜更けの指摘


「そんなふうに思うことないんじゃない? 本当はもっと伸びないはずで、執念があったから177センチになったのかもしれないし。少年野球時代に一緒だった子らを見てても、背が高くなってる子はやっぱりお母さんの身長が高いパターンが多いよ。私がもっと身長あったらよかったんだよ」

 こんな夜更けに二人で原因究明話をしてところで仕方がない。私がそう言うと、妻も「そうだね」と返してきた。そしてこう続けた。

「ゆうたろうが伸び悩んでるからか、なんか最近、『お父さんみたいに体が大きくても仕方がない』みたいな話をついついあの子らにしちゃうのよね」

「時々聞こえてくるがな。こないだなんか、『服のサイズも靴のサイズも困るし、頭はしょっちゅうぶつけるし。結婚して20年一緒に暮らしてるけど、185センチの身長があってよかったなんて思う場面、棚の高いところのお皿をとってもらうときぐらいよ!?』って言ってなかったか?」

「アハハ、言ったかも」

「ひでえ言われようだなと思いながら、聞いとったわ」

「それを聞いて、最近、弟君のほうが『もう、おれこれ以上伸びたくない! 止まってほしい!』とか言い出してるよ。ハハハ」

「そうなんかよ!」

「でもさ、そこまで大きくて、いいことなんかあった? 野球やってた頃はピッチャーとして高い方がよかったかもしれないけど、大人になってから、そんなに役に立ったなって思うことある? 一緒に買い物行っても、服が思うように見つからなくて、イライラしてることの方が多いじゃん?」

「いつも、食器棚の高いところのもん取ってるやん!」

「ほら、やっぱりそれくらいやん!」

 あれ…? 天国のオヤジよ、あなたが望んだメリットってその程度でしたっけ…?


▲大阪桐蔭高時代の197センチ・藤浪晋太郎(現阪神/右)と170センチ・森友哉(現西武・左)。30センチ近い身長差があるが、両者ともドラフト1位指名された。



文=服部健太郎(ハリケン)/1967年生まれ、兵庫県出身。幼少期をアメリカ・オレゴン州で過ごした元商社マン。堪能な英語力を生かした外国人選手取材と技術系取材を得意とする実力派。少年野球チームのコーチをしていた経験もある。

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