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不安定さもまた魅力! 球界を代表する左腕になれるはず・村中恭兵

【君はこんなもんじゃない選手名鑑2014】
☆潜在能力を評価されたドライチ左腕

 2005年の高校生ドラフトは辻内崇伸(元巨人)、片山博視(楽天)が重複1位指名、柳田将利(元ロッテ)も1位指名を受けるなど、高校生左腕が高い評価を受けたドラフトだった。

 そんな中、ヤクルトが単独1位指名したのが東海大甲府高の村中恭兵。甲子園に出場して注目を集めた辻内、片山、柳田とは違い、村中は甲子園での登板はなく、大舞台でアピールすることはできかった。

 それでも均整の取れた体格と柔らかい腕の振りなど、高い潜在能力を各球団のスカウトから評価されてのドラフト1位指名だった。

☆快刀乱麻のピッチング

 ルーキーイヤーからシーズン終盤に先発登板の機会を与えられ、2年目には6勝、4年目には初の2ケタ勝利(11勝)をマークするなど、村中は順調に成長していった。

 5年目の2011年は故障に泣かされ、レギュラーシーズンは4勝に終わった。しかし、巨人とのクライマックスシリーズ・ファーストステージでは、多くの野球ファンの記憶に残ったであろう鮮烈な投球を見せる。

 普段の先発ではなくリリーフとして登場すると、いつも以上の迫力ある全力投球で150キロ前後の快速球を披露。2試合に投げ、1勝1セーブ。ことごとく巨人打線を封じて、ファイナルステージ進出への立役者になった。

 2013年のシーズン開幕直前、ヤクルト対楽天のオープン戦を観戦する機会があった。先発した村中は、文句のつけようがない、快刀乱麻のピッチングを見せつけた。

 常時140キロ台中盤をマークするストレートはキレにキレ、スライダー、フォークでも空振りの山を築いた。結果は6回を投げ、1安打8奪三振無失点。この試合前日にWBCが閉幕したばかりだったが、村中のボールには日本を代表するにふさわしい、凄みがあった。

 すでに2ケタ勝利を2度マークしていた村中だが、「いよいよヤクルトのエースに、そして球界屈指の存在になる時が来たのでは」と、そう思っていたのだが…。



☆不安定の裏にある「凄み」にもっと光を!

 結局、2013年シーズンの結果は、25試合に登板して5勝9敗、防御率5.00に終わった。以前から見受けられたように、好調時と不調時の波が激しく、シーズン通して不安定な投球が続いてしまった。

 熱心なヤクルトファンにとって、村中は決して評価の高い選手ではないのだろう。毎年毎年、大成しそうで伸び悩んでいるし、2ケタ勝った翌年は必ず成績が落ち込んでいる。

 そして四死球が多く、体調万全時の館山昌平のように安定して勝利が計算できるタイプではない。ひょっとしたら、村中という投手はこのまま「ムラのある投手」として変わることができないのかもしれない。

 しかし、そんな見方で押さえつけてしまうには、あまりにもったいない投手だと思うのだ。

 確かにいい時はいい、悪い時はからっきし。しかし、「いい時」は入場料をいくらでも払ってやると思えるほどの、圧倒的なボールを投げ込むのだ。そこまで思える投手は、日本球界の中でも数少ない。2011年まで中日の所属したチェン(オリオールズ)の好調時もそうだった。

 確かに「こんなもんじゃない!」とは強く感じる。しかし、村中という投手には、「三振かホームランか」というスラッガーと同等の魅力をより感じるのだ。

 プロ野球は勝つか、負けるか、というネット速報を見ればわかる「結果」が面白いのではない。村中のように見ているだけで高揚感を覚える逸材が、人間離れしたパフォーマンスを見せてくれるから面白いのだ。

 どうかヤクルトファンには、村中の底知れない潜在能力をじっくりと、辛抱強く味わってほしいと願う。まあ、もう少しは安定してほしいけれど。



文=菊地選手(きくちせんしゅ)/1982年生まれ。編集者。2012年8月まで白夜書房に在籍し、『中学野球小僧』で強豪中学野球チームに一日体験入部したり、3イニング真剣勝負する企画を連載。書籍『野球部あるある』(白夜書房)の著者。現在は『野球太郎』編集部に所属。

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