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2016年プロ野球界トレンドに迫る! 時代は本塁打から安打・打点至上主義に移り変わった

 1月30日(土)に発売された『野球太郎テクニカルVol.01』。常に「変化」を続けているプロ野球界の進化する「トレンド」を紹介する内容は反響を呼んでいる。

 80年以上の歴史を誇る日本プロ野球界。その間には技術の進歩、戦略の進化、補強の傾向などは、時代とともに変化。2016年シーズン開幕前に、現在の球界で「主流」となっている最新のトレンドを【投手編】【野手編】【首脳陣編】【ドラフト戦略】の4回に分けて紐解いてみよう。

 第2回目の今回は、野手編として、打撃についてのトレンドを考察したい。

投手有利から、打者有利の時代へ


 プロ野球の創成期、野球というスポーツは、圧倒的に「投手が有利」なものだった。グラウンドは広く、ボールやバットなどの道具品質は粗悪で、なかなかボールが飛ばない。プロ野球が開幕した1936年、記念すべき初代本塁打王はミスタータイガース・藤村富美男ら3人が分け合ったが、その記録はわずかに2本でしかない。

 歴代本塁打王の記録を見ても、1リーグ時代の1930〜40年代にかけて、タイトルホルダーの本数は多くても10本程度。現在のような30発、40発を放つ打者は皆無だった。

 そんなプロ野球界に衝撃が走ったのが1946年。戦後プロ野球の再開とともにセネタースに入団した大下弘だ。大下はデビュー戦でいきなりサク越えを放つという衝撃を与えると、この年、史上最多の20本塁打を記録。ちなみに、この年のリーグ本塁打数は211本で大下はリーグ全体の実に9.5%の本塁打を放った。

 この記録は、2011年に中村剛也が10.6%を記録して抜き去るまで、実に65年にもわたり日本記録として君臨し続けた。

 大下の出現は敗戦で打ちひしがれた観客たちの支持を一挙に集め、誰もが記念すべき初の20号本塁打を待ち望んだ。この頃から、日本プロ野球界には空前の「本塁打ブーム」が沸き起こる。

 1940年代後半から50年にかけて本塁打が量産された理由は、ラビットボールと呼ばれる「飛ぶボール」にあったと言われている。

 イシイ・カジヤマが製造したボール自動製造機械によって造られたボールのことを指し、ボールの精度が格段に上昇。一躍、「ホームラン」が時代のトレンドとなっていく。

 戦後復興の合言葉もあり、国民感情的にも点の入らない地味な試合より、本塁打の量産される派手な試合の方がいい。ラビットボール導入の背景には、戦後ニッポンの、そういう事情もあった。

 投手有利から、打者有利の時代へ。戦争をはさみ、野球界は大きな変革を遂げたのである。

 プロ野球における「本塁打至上主義」は、その後もしばらく続く事になる。1960〜70年代に活躍したのは、後に868本塁打の世界記録を樹立する王貞治や、長嶋茂雄、歴代2位の657本塁打を誇る野村克也などに代表される強打者たち。


 高度成長期真っ只中のこの時代。野球は国民にとって最高の娯楽だった。その野球で、豪快な本塁打を放つ彼らは、国民のあこがれの的だった。


秋山幸二とイチローの出現


 1980年代に入ると、プロ野球界に「秋山幸二」というこれまでのプロ野球選手とは少し毛色の違う選手が現れた。打って、守れて、走れる。そんな選手は確かに過去にもいた。

 しかし秋山のそれは、過去のどんな選手とも明らかに違う印象をファンに与えたのだ。40本塁打を軽々クリアするパワー。1990年に51盗塁を成功した時のような圧倒的なスピード。まるでアフリカ系アメリカ人のような高い身体能力を持つ「アスリート」が、プロ野球界にも現れた瞬間だった。

 秋山の出現後、選手のアスリート化はより顕著になったといっていい。ちょうど時代も昭和から平成に変わり、腹の出た「昭和のプロ野球選手」は徐々にだが確実に減っていった。

 そんな最中の1994年、球界にまた新たなスターが誕生する。前年まで本名の鈴木一朗としてプレーしていた20歳の若者が、登録名を「イチロー」に変え、この年、突如ブレイクしたのだ。

 開幕から1軍に抜擢されると2番に定着。約1カ月ほどで1番に打順を変えると、4割前後の高打率を推移し、5月から8月にかけては69試合連続出塁の日本記録も樹立した。9月11日には早くも藤村富美男が持つ日本記録のシーズン191安打に並び、次の試合ではあっさり更新。シーズン122試合目にして日本プロ野球史上初のシーズン200本安打を達成した。

 前年までの実績がほとんどなかったプロ3年目、20歳の若者の偉業には、日本中が湧いた。現在は当たり前になった「最多安打」のタイトルも、この年のイチローを表彰するために出来たものだ。

 イチローの存在が球界に与えた衝撃は大きい。まず、安打に対する意識を変えたこと。それまでも当然、首位打者などのタイトルなどで安打を打つことの重要性は語られてきたが、やはり本塁打と比べると落ちる。

 その認識は間違ってはいないし、否定もできない。しかし、イチローの出現が「安打」の価値を飛躍的に高めたのは間違いない。

 イチロー前、イチロー後で、ファンはもちろん選手の意識も大きく変わる。それまで、「打率3割」と率を目標に掲げる者はいたが「安打数」を掲げる者はいなかった。確率を上げる、ではなく積み重ねる。その偉大さを、イチローは教えてくれた。



イチロー海外移籍後のトレンドは?


 では、イチローがメジャーに移籍して以降の、日本のトレンドはどうか。相変わらず、安打や出塁、リードオフマンに対しての特別視はあるが、ここ数年もっとも感じる傾向が「打点重視」だ。強豪チームの主力打者は、皆必ずこれを口にする。

 ではなぜ、現在のプロ野球選手たちは「打点」を意識するのか。そこには、勝利に対する意識と、ある意味「冷めた」見方がある。「ホームランを打っても、結局負けたら意味がない」

 さらに加えると、近年は「高打率」、「高弾道」の打者がトレンドとなっている。日本であれば柳田悠岐、山田哲人の名前が挙げられる。

 このトレンドは、メジャーリーグの流れを汲んでいると考えられる。ミゲル・カブレラのように、パワーもありながら性格な技術を兼ね備える。

 メジャーでも三冠王を獲得しているスーパースターをお手本にする選手などいないかもしれないが、打率も残せて長打も打てるのが、当然打者としての理想的な姿なのは間違いない。

 さらに、山田、柳田は「高弾道」、「高確率」に加えて「高速」までも併せ持つ。彼らだけではない。現在、日本球界には梶谷隆幸、丸佳浩、陽岱鋼といった5ツールプレイヤー候補が多数出現し始めている。また、メジャー移籍については中田翔が「現実的に考えているかは別として、単純に行ってみたい。3年ぐらい」と語った。


 この発言には、多くの批判も集まった。「そんな気持ちじゃ通用しない」、「最初から帰りを想定するな」。ただ、もしかしたら、これが今後、日本でトレンドになりうるかもしれない。メジャーの選手が期間限定で日本にやってくるように、その逆もあるのでは。中田の発言にはそういった意味もあるかもしれない。

 本塁打、安打、打点……そしてメジャーとの関係性。今後、日本球界のトレンドは果たしてどうなっていくのだろう。


この記事は『野球太郎テクニカル Vol.01』から、ダイジェストでお届けしております。


構成=野球太郎編集部

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