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「NPBの選手の自主トレにはハードさはないです」―独立リーガー・西本泰承の自主トレ―

 2月1日。プロ野球選手・関係者、それにファンにとってもこの日は、「元日」。お好みのチーム、選手がユニフォームに身を包んで、フィールドに現れるのをテレビの画面を通して見ると、「いよいよ今シーズンも始まりだな」と開幕が待ち遠しくなる。


☆広場でトレーニングする独立リーガー

 オフは、「オーバーホール」とは名ばかりの温泉とゴルフ三昧に浸っていた昔の野球選手と違って、今の選手はオフにもそれなりに体を動かし、キャンプインすれば、すぐにでも動けるように仕上げてくる。それだけに年明けからの自主トレにその年の活躍がかかっている。ただ、この自主トレ、グラウンドの確保やパートナーの確保など選手にとっては頭を悩ますものでもあるようだ。だから最近は、ベテラン選手が練習場所を確保し、気の合う若手を引き連れる、という方式がよくとられている。

 1月初旬のある日、例年より暖かい中、ある球場でグラウンドを走ったり、ノックを受けたりする大人の集団があった。このオフ、オリックスからヤクルトに移籍し、心機一転、セ・リーグで大暴れしようという坂口智隆をリーダーとするプロ野球選手たちだ。

 専門学校生の白いユニフォームに混じって内野でノックを受ける彼らの中に、一人の独立リーガーがいた。西本泰承という、日南学園高から奈良産業大(現奈良学園大)を経て、日米独立リーグのチームを渡り歩き今年8年目を迎えるベテラン内野手だ。坂口らと一緒に自主トレを行うようになって今年で5年目。四国アイランドリーグplusで対戦するソフトバンクの元選手の仲介で、ここ数年、「坂口軍団」の自主トレに加わっている。

▲自主トレ中に談笑する西本(左)、金子圭輔(ソフトバンク・真ん中)、坂口智隆(ヤクルト・右)

 独立リーガーにとって最大の悩みの種は、オフのトレーニングの場所の確保だ。彼らの契約は11月初めまで。これを過ぎるとある意味「ただの人」に戻ってしまう。大半の選手は、この時期は生計を立てるためにアルバイトをしながら、自分のできる範囲で体を動かすのみになってしまう。これではオフの間も球団の施設で思う存分練習できるNPBの選手との差は開くばかりだ。

 それに、練習しようにも場所がないし、トレーニングのためジムに通えば、身銭を切らなければならない。引退したある選手は、深夜に近所の学校に忍び込んで壁当てなどをしていたと言うが、いまであれば下手をすれば警察に通報されてしまう。西本も独立リーガーとなって3年は、オフの練習場所の確保には苦労したという。

「自分で中学時代の所属チームに行ったりしてましたね。あとは、友達に声かけて、相手してもらいました。5時に仕事が終わるって言われれば、それまではウエートしたり、走ったり、一人でできることをして、夜に数千円出してナイターで球場を借りてバッティングしたり、ノック打ってもらったり。土日もグラウンドを借りましたね。アメリカへ行く前なんかは、芝生の広場を探して、そこでノック受けてました。本場の球場とは違ってデコボコだらけでしたけど(笑)。今は都会ではどこでもキャッチボール禁止ですけど、幸い、僕の田舎は和歌山なんで、河川敷のサッカー場なんかが空いてます」

☆トータルだとNPBの選手の方が練習量は多いんじゃないでしょうか

 NPBの主力選手を紹介してもらい、自主トレに加えてもらったのは、ひとえに西本の人懐こい性格によるところが大きいだろう。そして、独立リーガーの目標とする彼らと同じフィールドで体を動かすことは西本にとって大きな糧になっていることは間違いない。ただ、自主トレのメニューについては、意外なセリフが西本から返ってきた。

「オフのトレーニングに関しては、独立リーガーの方がハードなトレーニングをしてるかもしれません。NPBの選手の自主トレにはハードさはないです。本当に軽く走る、投げるって感じで。今日はバッティングしたから、次の日は力を抜く、っていう感じで2勤1休みたいな。まさにキャンプに向けた体づくりです。キャンプがしんどいみたいなんで、そこで体を壊さないように、という準備ですね。キャンプで振り込むから、この時期は目一杯に振りこまない。その年のスイングの形を作るだけで数自体はそんなにやらないです」


 この時期、スポーツ新聞などでは、つらいトレーニングを終え、汗だくになっている上半身裸のNPB選手の写真をよく見かけるが、どうもあれはメディアの演出のようだ。

 しかし、これを西本ら独立リーガーが見習えばいいと言うわけでもなさそうだ。

「独立リーガーと比べて、そもそもの能力が違いますから。それに、キャンプに入れば、NPBは指導者の数も多いんで、ノックを受ける数もボールを打つ数も僕らとは比べ物にならないくらい多いはずです。

 一度、NPBのキャンプを見学に行ったことがあるんですど、やっぱり、密度が濃かったです。スケジュール通りに動いてた、という印象ですね。スタッフが多いからできるんでしょうけど。たとえば、バッティングというとNPBは打ちっ放しで終われるでしょう。でも僕らは、打った後、ボールを集めなあかん。そこまでがバッティングの1セット。僕らが10分打って、5分で後片付けするなら、彼らは15分まるまる打てる。それが毎日続くと、絶対的な数は違ってきますよね。ノックだってそうでしょ。これが独立リーグとNPB環境の違いですね。内容的には大きくは違わないと思います。

 だから、自主トレの1日の練習だけだったら独立リーガーの方が量的にはやってるかもしれません。けど、2月以降の練習量、シーズン入ってからの環境が違うんで、トータルでみれば、NPBの選手の方が練習量は多いんじゃないでしょうか」

▲「坂口軍団」のおかげでオフでも充実した練習ができる西本(左/右は坂口)

☆アメリカ独立リーグで学んだこと

 と言う西本も現在の自主トレには満足している。「そんなに数をこなせるタイプじゃない」と自らを評する西本だが、練習量に対するアプローチは、アメリカの独立リーグに移籍して大きく変わったという。坂口らと自主トレするようになった2012年、彼はアメリカ独立リーグの強豪、アメリカン・アソシエーションに挑戦したのだ。

「向こうに行って気づいたのは、“練習は量じゃない”ってことです。どれだけ考えるか、それが大事。確かに、若い独立リーガーには、量をこなさないと気が済まない、っていう子もいるんで一概にどっちがいいとは言えないと思いますが」


文=阿佐智(あさ・さとし)
1970年生まれ。世界放浪と野球観戦を生業とするライター。「週刊ベースボール」、「読む野球」、「スポーツナビ」などに寄稿。野球記事以外の仕事も希望しているが、なぜかお声がかからない。一発当てようと、現在出版のあてのない新刊を執筆中。ブログ「阿佐智のアサスポ・ワールドベースボール」(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041)

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