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カウントごとに出しやすいサインはなんだ?カウントごとの考え方(2)(第十九回)

『野球太郎』で活躍中のライター・キビタキビオ氏と久保弘毅氏が、読者のみなさんと一緒に野球の「もやもや」を解消するべく立ち上げたリアル公開野球レクチャー『野球の見方〜初歩の初歩講座』。毎回参加者のみなさんからご好評いただいております。このコーナーはこのレクチャーをもとに記事に再構成したものです。
レクチャーは予定していた全5回が終わってしまいましたが、新たな企画を思案中です。その連絡ができるまでお待ちください。
また、レクチャー終了に伴い、こちらの連載は20回目が最終回となります。ラスト2回となりますが、最後まで楽しく、勉強していきましょう!


◎無死一塁で考える
0ボール1ストライク(▼)は投手有利で動きにくい


キビタ:前回に続いて、無死一塁のカウント別の考え方を整理していきます。まずは0ボール1ストライク。このカウントは、バント以外はちょっと動きにくくなります。
久保:バッターが不利なカウントには▼をつけています。
キビタ:次にボール球や得意じゃない球も投げられるので、攻撃側は仕掛けにくいですね。バッテリーがボール臭いところを攻めてくる可能性の高いカウントと言えます。

久保:打つ場合の狙いはどうでしょう?
キビタ:ピッチャー有利ではありますが、まだ余裕はあるので、狙い球を絞って打ちます。初球に甘い球を見逃して0ボール1ストライクになり、次はそれよりも難しい球がきて、手を出すと凡退になりやすい、といったケースがよく見受けられます。「簡単な球を見逃して、難しい球に手を出しやがって」というパターンですね。
久保:読みではなく、反応で打つタイプだと、0ボール1ストライクからも打ってきませんか?
キビタ:そういう傾向はありますね。だからヒッティングのところは「?」(チームや選手次第)にしておきました。


【0ボール1ストライク】の場合


1ボール1ストライク(◆)は唯一の平行カウント

キビタ:1ボール1ストライクはニュートラルなカウントです。
久保:平行カウントという意味では2ボール2ストライクもありますけど…。
キビタ:数字のうえでは確かに平行カウントですけど、2ボール2ストライクはバッターが追い込まれているのでニュートラルとは言えません。1ボール1ストライクから先はピッチャー有利かバッター有利のどちらかしかありません。0ボール0ストライクとほぼ同じ状況ですけど、ここまでの2球の情報がある分、読みやすくなります。

久保:必ずしもストライクがくるとは限らないカウントなのでしょうか?
キビタ:そうですね。1ボール1ストライクからストライクを取りにくる傾向のあるピッチャーであれば、エンドランをかけてもいいでしょうけど、必ずしもそうとは限りませんので、相手を見て判断した方がいいと思います。

【1ボール1ストライク】の場合


2ボール1ストライク(●)は勝負のカウント

キビタ:2ボール1ストライクはバッター有利ですが、次がストライクになれば一気にピッチャー有利に変わります。平行カウントを経由しないで状況が一変するので、勝負の分岐点とも言えるカウントです。
久保:【カウントマップ】を見ればわかるように、それまでは1ボール1ストライクというニュートラルなカウントを経由するのに、2ボール1ストライクだけは一気に形成が変わって、2ボール2ストライクでバッターが追い込まれてしまいます。

【図】カウントマップ


キビタ:古田敦也さん(元ヤクルト)はコントロールのよくないピッチャーには「とにかく2ボール1ストライクにしろ。そうしたら後は何とかなるから」と言っていたそうです。
久保:とある大学の監督は、スコアラーに「初球と2ボール1ストライクに何を投げてくるかをメモしておけ」と言っていました。仕掛ける側からしても勝負のカウントなのでしょう。
キビタ:外れると3ボール1ストライクになりますから、次にストライクを取りたいカウントです。だからエンドランのサインも多くなります。

【2ボール1ストライク】の場合


●3ボール1ストライクはかなり攻撃有利

キビタ:バッター有利。バッテリーとしては何としてもストライクがほしいカウントです。ピッチャーがストライクをほしがっているのか、単なる荒れ球かで、作戦は違ってきます。
久保:ストライクを取りにくるタイプなら…。
キビタ:作戦は仕掛けやすいですね。この場合はヒットエンドランというより、「ボールなら見逃せよ」というランエンドヒットの形になります。相手が荒れ球なら「待て」のサインになるでしょう。
久保:ランエンドヒットなのに、ついボール球に手を出てしまう選手もいます。
キビタ:サインが出てテンパッてしまうタイプは、ボール球に手を出しがちですね。

【3ボール1ストライク】の場合


0ボール2ストライク(▼)から3球勝負の時代

キビタ:圧倒的にピッチャー有利のカウントです。まだボール球を投げる余裕があるので、腕を振って投げられます。バッターはストライクゾーンを広くして、きた球に対応していくしかありません。動くのは難しいです。
久保:今の野球は3球勝負が流行になっています。昔であれば高めや外につり球を投げて…、といった定石がありましたけど。
キビタ:ストライクをポンポン投げている時は調子がいいんだけど、つり球をひとつはさむと急に調子を崩すピッチャーがたまにいるんですよ。リズムを大事にするタイプであれば、3球勝負で行った方がいいでしょうね。
久保:バントが「?」になっていますけど、3バントはありますか?
キビタ:昔の広島商は2ストライクを取られてからバントをするのがセオリーだったので、一概に「ない」とは言い切れないんですよ。

【0ボール2ストライク】の場合


▼1ボール2ストライクから意外と動いてくる

キビタ:1ボール2ストライクは依然としてピッチャー有利なのですが、意外と動いてくるケースが多いカウントです。
久保:確かに動いてくるイメージがあります。
キビタ:バッターに「空振りをしない」意識を持たせるために、このカウントでエンドランを仕掛けてくる高校はあります。大振りさせないというか、なんとか状況を動かしたいという場合のエンドランです。
久保:2ボール0ストライクからの積極的なエンドランとはかなりニュアンスが異なりますね。
キビタ:2ボール0ストライクからのエンドランは、一、三塁を作るためのエンドラン。1ボール2ストライクからのエンドランは、ゲッツー回避の意味合いが強くなってきます。その違いを理解して打てているバッターは、チームバッティングを理解していると言っていいでしょう。

【1ボール2ストライク】の場合



2ボール2ストライク(▼)にたどり着いたルートは?

キビタ:ピッチャー有利のカウントではありますが、どういうルートで2ボール2ストライクになったかが問題です。2ボール1ストライクからストライクを取られた場合は、バッター心理からすると「追い込まれた」意識が強くなります。逆に1ボール2ストライクから2ボール2ストライクになった場合は、絶対に三振しない自信のあるバッターなら「よしよし、タイミングが合ってきたぞ」と、気持ちが盛り上がっているでしょう。
久保:作戦は何が考えられますか。
キビタ:1ボール2ストライク同様、三振をしたくない、最悪でもランナーを進めたいという意図で、エンドラン等を仕掛けてきます。

【2ボール2ストライク】の場合


3ボール2ストライク(★)までくれば…

キビタ:ある意味で開き直りのカウントです。3ボール1ストライクからなら、バッターは追い込まれた気持ちになります。2ボール2ストライクからだったら、ある種の開き直りというか「ここまで粘れば許してくれるでしょ」というところはあります。特に下位打線であれば、ある程度役目を果たしたと言っていいでしょう。
久保:間にファウルがはさまっていれば、凡退の質は悪くないと言えますね。
キビタ:ランナーは動きやすいケースです。もちろん三振ゲッツーのリスクはありますけども、最近はほぼ自動的にランエンドヒットになります。それもどうかと思うんですけど。
久保:意外とボール球に手を出してしまうカウントなので、バッターの力量が問われるカウントとも言えそうです。

【3ボール2ストライク】の場合


キビタ:これで12通りのカウントをすべて網羅しました。あとは塁がうまっているか、そうでないかで作戦は違ってきますし、三塁にランナーがいれば、無死、1死でスクイズの可能性もあります。
久保:次回はいよいよ最終回。実際の試合を題材に、流れを左右する要素を見ていきます。


■プロフィール
キビタキビオ/野球のプレーをストップウオッチで測る記事『炎のストップウオッチャー』を野球雑誌にて連載をしつつ編集担当としても活躍。2012年4月からはフリーランスに。現在は『野球太郎』を軸足に、多彩な分野で活躍中。Twitterアカウント@kibitakibio

久保弘毅(くぼ・ひろき)/テレビ神奈川アナウンサーとして、神奈川県内の野球を取材、中継していた。現在は野球やハンドボールを中心にライターとして活躍。ブログ「手の球日記」

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