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ドラフト候補の後ろでチームを支える中央大・羽山弘起、東隆志。彼らの視点から亜細亜大の開幕カードはどう映ったのか?

 先日のTOHKENで紹介した注目選手の1人、羽山弘起選手(中央大)。遊撃手として安定した守備と味方を鼓舞する声掛けが魅力的な選手です。昨秋はバッティングでも目立った成績を残し、その秘密を「間の取り方を意識するようになった」からと教えてくれました。

「去年の春からタイミングの取り方を意識していたのですが、シーズンが終わってからノーステップだったのを足を上げるようにしたんです。元々はバッティングよりも守備という感じだったのですが、やっぱり打たないとダメですから」

 加えて副主将としてもチームを引っ張る立場。中央大の主将は島袋洋奨投手ということもあり、試合中にベンチにいることは少ない。「(投手で主将の島袋には)自分のことだけを考えてやってもらおうと思っています」という配慮も。ますます目が離せない存在となりました。



 そしてもう1人、注目しているのが東隆志捕手(中央大)も投手陣を支える柱的存在。同級生の金子大喜捕手(中央大)とポジションを争っていましたが、開幕戦でスタメンマスクを被ったのは東捕手でした。

「オープン戦でも金子とどちらが正捕手になるかわからなかったんです。金子はバッティングがいいんですが、自分は肩とか守備をアピールしてスタメンを取れました」

 強肩ぶりは目を見張るものがある東捕手。多彩な投手陣を引っ張っていく姿にぜひ注目して頂きたいと思います。

▲左は主将でもある島袋。右が東

 それではそんな2人が属する中央大の開幕カードのレポートをご覧ください。


 現在リーグ5連覇中の亜細亜大。注目を集める山?康晃(亜細亜大)は昨夏、日本代表として日米大学野球で活躍した。そんな亜細亜大と開幕週でぶつかったのは中央大。島袋も鳴り物入りで入学して以降、注目を浴び続けて最終学年を迎えた。

 この日の先発は亜細亜大が山?、中央大は山手幹だった。捕手の東によれば「開幕前のオープン戦でもここ2〜3試合では安定していたし、チームで一番いい投手」ということで開幕投手に抜擢されたという。

 1-1の同点で迎えた8回、中央大は1死一、二塁のピンチを迎えて秋田秀幸監督がマウンドへ向かう。山手、東との長い話し合いの末、投手交代が告げられた。

「自分は山手でいきたかったのですが、久しぶりに8回まで投げて辛そうだったので交代しました」(東)

 結局、この回は無事に無失点で切り抜け、試合は9回に。

 しかし、この回先頭のバッターに投じた初球をスタンドに運ばれて決勝点を奪われてしまう。さらにもう1点を追加され、中央大は1-3で初戦を落としてしまった。

 試合後の東は、9回のあの一球を悔いていた。2年前にも同じことがあったからだ。

 相手も同じく亜細亜大。1-0でリードして迎えた9回、先頭打者に同点弾を打たれ、そして逆転された。

「慎重にいこうと思ったんですが……。あのときのミスを生かせなかった」

 それでもまだ勝ち点を落としただけではない。悔しさをにじませながらも、前向きな言葉を続けてくれた。

「チャンスは作れていましたし、亜細亜にも引けをとっていなかった。とにかくあと1年やるだけです。このチームで優勝したいんです」



 翌2回戦は点の取り合いとなった。
 先発した島袋の制球が定まらず、5連続四死球などで3点を追いかける展開になるが、中盤に追いつき、試合は振り出しに。

 島袋の後を受けた投手陣が踏ん張り、打線は終盤に勝ち越し、ダメ押し点も奪って、この試合を制した。

 投手も野手も全員で繋いで掴んだこの1勝。その中でも間違いなくヒーローは羽山だった。開幕戦こそノーヒットに終わったが、この日は3打数3安打2打点の好成績を残してチームの白星に大きく貢献。

「1打席目にヒットが出てホッとしました。引きずってはいなかったのですが、早く1本を打ちたかったので」と試合後には笑顔で応じてくれた。そしてこの試合に先発した島袋を思いやった。

「あんな形で彼も終わりたくないと思う。黒星をつけるとキツイので、何とかしようと野手陣で話していたんです」



 山手と山?の先発で幕を開けた第3回戦は投手戦となった。互いにチャンスを作るもホームは奪わせない展開で5回が終了。

 だがここで突然、山手の制球が乱れる。

 先頭打者をストレートの四球で歩かせると、犠打で送られて1死二塁。山手はマウンドを降りたが、2番手のサウスポー・村川翔太(中央大)が連続四球を与えて満塁に。この状況で登板を告げられたのは川口貴信(中央大)。前日に好救援を見せた4年生投手だ。

 迎える打者は左の板山祐太郎(亜細亜大)だったが「迷ったが、今日の状態を見ると川口がよかった」(東)

 しかし――。2-2からの5球目、打った瞬間それとわかる満塁弾を許してしまった。

▲満塁本塁打を放った板山

▲板山(右)を出迎える亜細亜大選手

 結局、この試合は0-8で敗れ、勝ち点を落とした。試合後の東は一昨日とは違い、明らかに表情が暗かった。

「打たれたのは真ん中に入った真っ直ぐ。変化球でもよかったんですけどフルカウントにしたくなくて……。満塁だったので押し出しがよぎってしまって……。自分のミスです」

 ゆっくりと思い出しながら、記憶を辿れば辿るほど悔しさが湧いてくるように見えた。未だに悩み、消化しきれていない様子。だが冷静だった。敗戦に消沈しながらも、相手の強みを全身で感じ取っていた。

「亜細亜はここ一番の集中力がすごい。きっと練習から高い意識を持ってやっていると思うので、見習っていきたいです」

 東も認めていたが、開幕時の段階で投手陣の状態がいいとは言えない。3試合で25四死球と課題ははっきりしている。正捕手としてどのような対策を講じてくるのか、武器である守りの面でどのような活躍を見せてくれるのか。東にかかる重圧は大きいが、それ以上に大きな期待感がある。


■ライタープロフィール
山田沙希子(やまだ・さきこ)/東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速。ナックルボールスタジアム主催のイベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。

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