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開幕投手内定の前田健太(広島)。力の源となる負けず嫌いは母と子の特訓で養われた!?

●「野球太郎育児Vol.1」ではスター選手の両親に取材!

 3月7日に発売された、野球太郎シリーズのニューフェイス、『野球太郎育児Vol.1』。コンセプトは「わが子を野球でたくましく育てたいと願う保護者に贈る球育本」。発売後、知人から「野球育児、あれ面白いねー!」といったお褒めの声を頂く機会が多く、携わった者として嬉しい限りだ。


 「我が家の野球育児論」というタイトルの企画記事も掲載。プロ野球選手本人ではなく、プロ野球選手のご両親に育児論を語ってもらっている。今号では大谷翔平(日本ハム)、前田健太(広島)、内川聖一(ソフトバンク)、安樂智大(楽天)のご両親が登場し、各家庭における育児についての考え方やこだわり、エピソードなどがふんだんに紹介されている。

●一流選手ほど負けず嫌い!?

「やっぱりものすごい負けず嫌いなんだよなぁ」

 前田健太投手の両親へ取材したページを読み、真っ先にそう思った。ドラフト候補選手に取材をした際、「自分の性格を分析すると?」という質問を投げかけることがあるのだが、かなりの高確率で「負けず嫌い」という答えが返ってくる。

「勝負の世界で台頭する上で、気質上の必須項目なのでは?」と確信してしまうほどだ。

 そして一流選手になるほどに、この負けず嫌いの度合いは強くなる傾向があるように思う。前田投手も幼少時代から「じゃんけんで負けるのもイヤ」というほどの負けず嫌い。そして、記事を読む限り、前田投手のご両親も相当な負けず嫌いだ。「学校のマラソン大会でもやるからには一番!」という両親の姿勢があったからこそ、前田投手の負けじ魂はより強固なものに育ったのかもしれない。


 前田家の場合、特にお母さんの「負けず嫌いの度合」がハンパない。前田投手は幼少時代から毎日、ランニングをしていたことは、わりと知られているが、走るようになったきっかけはお母さんの負けず嫌い魂に火がついたことだったという。以下、前田母の証言を紹介する。

「小学生時代、チームを移籍して間もない頃の試合であの子が投げて、打たれたんです。それでもう私も悔しくて、試合が終わってコーチに『どうしたらもっとうまくなれるんですか?』って聞いたら、『ピッチャーはとにかく下半身、走らなアカン』って言われて、それで火がついたんです。それから毎日、晩御飯の前に19時くらいから走ることにしました。忠岡町のグラウンド、最初は1周400メートルを5周くらいからで、健太を走らせるために私も一緒に走りました。車で行って、走ったあとは車のライトで照らしてバットを振ったりして」

 母子の夜の特訓は中学2年の終わりまで続いたという。

●我が家の野球育児「たられば」話

 筆者の自宅界隈においても、親が自転車に乗り、ランニングをしているわが子を追走しながらハッパをかけているシーンに出くわすことが珍しくない。

(といっても、そんな『巨人の星』のような家庭が近所にあふれかえっているわけではなく、数組の家庭の日課を日々見かけているに過ぎないのだが)

 先日も妻と犬の散歩をしていたところ、ある家庭の夜のランニングシーンを目撃。猛烈なスピードで子どもを追走する親子の背中を見ながら、「あそこの家はお父さんが自転車で追いかけるパターンとお母さんが追いかけるパターンがあるのよね」と妻。

「そうなんだ。お母さんのパターンしか見たことないわ」

「私にはできないなぁ。やろうとも思わなかったなぁ」

「うちはあの手の日課面で、結局、強制的になにかをやらせたことは、なにもなかったな」

「自発的にやらないと意味がない、という方針でずっときたもんね」

「でも、時々、思うんよ。もしも、強制レベルで毎日ランニングやトレーニングを幼少時代からやらせてたら、どうなっていたんだろうなって。特にお兄ちゃんの方ね」

 この春で高3を迎える我が家の長男はお世辞にも「負けず嫌い」とは言い難い。のんびり屋さんで自分に甘く、日課の計画を立てても、続いた試しがない。こういうタイプだからこそ、ある程度強制的に物事を追い込んだほうが勝負の世界において、いい結果が出せたんじゃなかろうか。近頃、自転車で子どもを追走しているシーンを目撃すると、毎回そんな思いに駆られてしまう。

 妻は「きっとそんなことしたら野球どこかで辞めて、グレてると思うよ、あの子の場合。それに仮にあなたの方針が強制モードに入ったとしても、私はその気は絶対に起きなかったもん。私が自転車で追走すると思う? そんなシーン、イメージできる!?」と返してきた。たしかに妻が我が子をスパルタ式に追い込もうとするシーンは想像し難いものがある。

「そうだなぁ。確かにイメージできないなぁ。でも、それが問題なんじゃないの? 前田健太のお母さんの逆で、母親の負けず嫌い魂が弱い証でもあるんじゃないの?」

「つまり、あの子がのんびり屋でガツガツに欠けてるのは私のせいだと?」

「いや、そうは言うとらんけど……」

「言ってるわよ!」

 野球育児の話題が夫婦喧嘩に発展することは我が家の場合、決して珍しいことではありません……。


文=服部健太郎(ハリケン)/1967年生まれ、兵庫県出身。幼少期をアメリカ・オレゴン州で過ごした元商社マン。堪能な英語力を生かした外国人選手取材と技術系取材を得意とする実力派。少年野球チームのコーチをしていた経験もある。

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