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◎ 第八回 世界は広い! 侍ならば潔く負けを認めるべし!!

<はじめに>
 2月よりWBC関連情報をレポートしてきた「侍JAPAN×2013WBC完全攻略法」のコーナー。野球ファンならご存じの通り、残念ながら昨日の試合をもって「侍JAPAN」のWBC3連覇の夢は絶たれてしまいました。試合後は色々と批判や注文があったようですが、反省するべきところは反省し、(少し気が早いですが)次回のWBCに備えましょう。


<過去の記事>
◎ 第一回 2013WBC日本代表メンバー発表とみどころ
◎ 第二回 コメントで振り返る、WBC初戦&第2戦レビュー
◎ 第三回 3.6キューバ攻略大作戦!<ベスト5>
◎ 第四回 3.6キューバ戦の光と影? 明暗分かれたキューバと日本?
◎ 第五回 WBC東京ラウンド中間報告
◎ 第六回 いざアメリカへ! 日本代表が1位通過で決勝ラウンドへ
◎ 第七回 待ったなし! いよいよ決勝ラウンドがスタート
◎ 第八回 世界は広い! 侍ならば潔く負けを認めるべし!!(今回)


 「侍」が真剣勝負に敗れた。日本時間3月18日10時18分に始まったWBC決勝トーナメント準決勝戦。日本はプエルトリコに1−3で敗れ、夢のWBC3連覇は夢のままに終わった。「侍」である以上は潔く負けを認め、敗因を糧にして「次」に活かすべきである。試合のポイントでもあり、いろいろと賛否両論あった問題の3つのシーンを振り返ってみたい。


問題のシーン1:痛すぎる先制点

 これまで2試合に登板して2安打しか打たれていなかった先発の前田健太(広島)だが、5回80球を投げ4安打3奪三振2四球1失点で降板。やはり球審の判定にバラつきがあったのも事実で、先制点を取られた初回から、無意識のうちにボールが中へと集まってしまった感は否めない。トータルでみれば先発の役目は果たしたといえるが、一戦必勝のトーナメント戦で先制点を与えたことはやはり致命的だった。結果的に初回に与えた1点が試合展開を左右してしまった。

 対するプエルトリコ先発のM.サンティアゴは投げるテンポが早い早い。このくらいの投球テンポが球審には合っていたのではないだろうか。サンティアゴ以外のプエルトリコ投手陣は総じて投球テンポが早く、井端弘和(中日)がタイムをかけたが認められなかった場面や、内川聖一(ソフトバンク)が相手の拙守に乗じて放った三塁打の直後の阿部慎之助(巨人)の三振は、早いテンポに幻惑された結果だったようにみえた。

 さらに日本投手陣のほうが間違いなく「美しい」球筋のボールを投げていたが、対するプエルトリコ投手陣は打者の手元でよく動く「汚い」球筋のボールを投げ込んでいた。その汚い球筋に抑えられてしまった日本打線だが、こういった球質の投手と練習試合などで数多く対戦して経験を積むべきだった、といっても後の祭りか。





問題のシーン2:痛恨の被弾

 そのサンティアゴは4回、アクシデントによる交替を余儀なくされる。打ちあぐねていた日本打線にとってはある意味ラッキーな展開だったはずだ。しかしながらここが野球の「不思議さ」だろう。カウント2ボールから登板したデラトーレは中田翔(日本ハム)に四球を与えるも、稲葉篤紀(日本ハム)、松田宣浩(ソフトバンク)を連続三振に斬ってとる神投球をみせる。結果的に日本はここで得点を取れなかったことが敗因だった。

 プエルトリコの投手交代がアクシデントによるものに対して、満を持して交替したはずの能見篤史(阪神)だったが、7回にリオスに痛恨の一発を浴びてしまう。1ボール1ストライクから投じたチェンジアップも、明らかにコントロールミス。こうした一球のミスが命取りになるのが日本のプロ野球のリーグ戦とは異なる、トーナメント戦の特徴だろう。




問題のシーン3:8回のダブルスチール

 そしてミスといえば「最大のミス」を犯してしまった日本代表8回の攻撃。1死から鳥谷敬(阪神)がセンターオーバーの三塁打を放ち、続く井端がいぶし銀のライト前タイムリーヒットで1点を返す。




 内川もライト前へ運んで繋ぎ、1死一、二塁の大チャンスに四番・阿部が打席に立った。しかし、ここで誰もが予想しなかったミスが出てしまう。

 1ストライクからの投球で一塁ランナーの内川がスタートを切ったものの、二塁ランナーの井端はスタートを一度切ったがすぐにストップ。挟まれて、どうすることもできない内川はそのままタッチアウトとなり、この試合、追い上げる最大にして最後のチャンスをつぶしてしまった。




 この場面については様々な憶測が流れているが、総合的に検証するとダブルスチールのサインは出ておらず、相手投手のクイックモーションが大きいという情報を事前に仕入れていた日本ベンチは「(ダブルスチールを)行ってもいいぞ」というサインを出していたそうだ。あとは選手の判断に任せるというある意味、曖昧な采配ではあった。

 しかし、思い出して欲しいのは3月8日の東京ドームでの日本vsチャイニーズ・タイペイの試合。9回2死から鳥谷が盗塁したときも、鳥谷の判断に任せて値千金の盗塁を決めたケースもあった。強制的ではなく選手自身が「行けると思ったら行け」という指示は、強制的に走らされるよりは走りやすいとも言えるのだ。采配のミスとも言い切れない、こういったところが野球の「難しさ」であり「奥深さ」でもあるだろう。



もっと世界の野球を勉強しなければならない

 思い起こせば第1ラウンドは福岡ドーム、第2ラウンドは東京ドームと、日本代表にとっては「庭」である球場で試合を行ってきた。特徴を知り尽くしているマウンドで相手打線を抑え、本塁打が出やすいと言われている球場で長打を連発して相手を「力」でねじ伏せてきた。その球場で試合をすることが初体験である相手に対して、そういった試合運びで勝ち進んできた。

 そして昨日のプエルトリコ戦は今大会初の屋外球場での「ナイター」試合。天然芝、球場の形、球場の風、慣れないマウンド、独特の雰囲気、球審のストライクゾーン、動くボール…。“侍JAPAN”にとって様々な「非日常」が、想定外の打撃不振やミスを誘発したのかもしれない。奇しくも日本ラウンドで日本と戦った他国代表と同じ体験を味わってしまったのだ。さらに追究すると「海外経験の乏しさ」が今回の敗因として挙げられるのではないだろうか。

 例えば海外で試合を重ねるなどして経験を積むこと。様々な状況を経験することで、普段通りの力を発揮して試合に勝つ。我々ファンはそんな日本代表が観たいのだ。そのために出来ることは何か? 次回のWBCまでにもっともっと「世界の野球」を勉強して、次回のWBCでは必ず世界一を奪還して欲しい。


※次回の更新は3月25日になります。


今後のWBC試合スケジュール
<2013 WORLD BASEBALL CLASSIC 決勝ラウンド>
Semifinal 2 3月19日 10:00 ドミニカ共和国vsオランダ @アメリカ・サンフランシスコ・AT&Tパーク(以下同)
Final 3月20日 9:00プエルトリコ代表vs(Semifinal 2 勝者)
※時間はすべて日本時間


<過去の記事>
◎ 第一回 2013WBC日本代表メンバー発表とみどころ
◎ 第二回 コメントで振り返る、WBC初戦&第2戦レビュー
◎ 第三回 3.6キューバ攻略大作戦!<ベスト5>
◎ 第四回 3.6キューバ戦の光と影? 明暗分かれたキューバと日本?
◎ 第五回 WBC東京ラウンド中間報告
◎ 第六回 いざアメリカへ! 日本代表が1位通過で決勝ラウンドへ
◎ 第七回 待ったなし! いよいよ決勝ラウンドがスタート
◎ 第八回 世界は広い! 侍ならば潔く負けを認めるべし!!(今回)



■プロフィール
イラスト=ながさわたかひろ/ヤクルト芸術家。昨年のほぼ全試合、ヤクルト戦をイラストに起こした。それが1冊にまとまった『プロ野球ぬりえ2012全記録集』を作成。ブログ、Twitterアカウント→@t_nagasawa

文=鈴木雷人(すずき・らいと)/会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。日本代表が現地入りした後のジャイアンツ、カブスとの練習試合も眠い目をこすりながら全てTV観戦した。Twitterは@suzukiwrite

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