週刊野球太郎
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記者と選手が魂をぶつけあいながら喜怒哀楽の人間ドラマを描く…スポーツ新聞は人間くさいメディアです!

 昨夏に開催され、野球太郎史上最多の参加者が集まったトークイベント「スポーツ報知・野球デスク 加藤弘士のスポーツ紙野球面を10倍楽しく読む方法」。その第2回が2月27日に開催された。

 前回同様、出足からフルスロットルの熱さと、観客の心を掴む巧みな話術で盛り上がったイベントの様子を今週から『週刊野球太郎』でお伝えしていきたい。記者志望の学生、加藤デスクファン、そして野球を愛するすべての方必見です。

喜怒哀楽の人間ドラマを描いていきたい


菊地 今回も、スポーツ紙記者の中でもっとも危険な人であろう、スポーツ報知・野球デスクの加藤弘士さんにお越しいただいています。開幕に向けてお忙しい時期かと思いますが。

加藤 いやぁ、実はですね、デスクって4、5人いるんですが、一面は何にする、じゃあ、二面は? 三面は? と、その日の野球面の責任を負う「責任デスク」という役回りが先発投手みたいに中4〜5日間隔で回ってくるんですよ。今回、開幕日3月27日の栄えある「開幕デスク」を務めることが決まりまして……(会場一同拍手)、いやいや、あーもう、今からお腹痛い!(笑)

菊地 開幕投手みたいなものですね。じゃあ、開幕戦の結果を受けて、どんな紙面にしていくかを決めなくちゃいけないと。

加藤 当日は昼間にセンバツ高校野球を会社で見た後、ナイター6試合をテレビ画面で見ながら、ゲームの展開を追って紙面をシミュレーションしていきます。その上で現場の記者からの報告、売り込みを聞いて、瞬時に一面はコレ、二面はコレ、三面は……と決めていきます。締め切りは待ってくれないので、瞬発力が必要ですよね。「一晩、考えさせて下さい」とかできませんから(笑)。翌日、「あーすればよかった」「こーすればよかった」と反省することもしばしばです。正解がないんですよね。

菊地 では、その一面はどうやって決めていくのかというのを、具体的に紙面を使って解説していただこうと思います。今日(2月27日)の一面は原監督の独占インタビューでした。

加藤 スポーツ新聞は「どれを読んでも一緒じゃないか」という声もあります。囲み取材で話を聞くこともあるので、記事が似かよってしまうこともある。でも、それだけじゃやっぱり、お金を出して購入してくださる読者の方に失礼です。ウチにしか出せない、オンリーワンなものを打ち出さなくては意味がない。そこでキャンプ総括では、原監督の独占インタビューを掲載しました。この独自色を出そう、というのは報知だけではありません。スポニチさんもニッカンさんもサンスポさんも……まあ、デイリーさんは何もしなくても独自色が出てしまうんですけれども(笑)、各紙、努力している部分ではあると思います。



菊地 なるほど。

加藤 もうひとつ、よくご批判いただくことに「報知は巨人の機関紙だから、巨人をかばいすぎだ」というものがあります。いやいや、何を言うんですか。逆ですよ。ウチぐらいです、巨人の選手に対する厳しい言葉がしょっちゅう一面を飾るのは!

菊地 原監督からの痛烈なメッセージが、たびたび繰り出されますよね。

加藤 現場のリアルを届けることが一番大事だと思います。たとえば、監督から「だらしない」と名指しされた選手は、記事を読んで気分を害するかもしれません。でも、そこは自主規制をかけるべきではなく、むしろドーンといくべきだと考えます。男と男が真剣勝負をしている以上、そこに魂と魂のぶつかり合いが生じるのは、当然のことだろうと思うからです。ファンが野球に興味深く惹かれる要素も、そういった喜怒哀楽の人間ドラマではないでしょうか。

スポーツ新聞はとても人間くさいメディア


菊地 ただ、勝手に心配してしまうのは、紙面で批判された選手の担当記者の方は、一体どんな顔で次の日の取材に行かなくちゃいけないか、という。

加藤 そういうことです! そこが週刊誌とスポーツ紙の違いでもあると思います。僕らは、選手を批判する記事を書いても、また翌日に会って取材をしなければいけない。

菊地 毎日顔を会わせなきゃいけないからこそ、「書き逃げ」ができない。

加藤 はい。それで記事に怒って「報知、どういうことだっ。こんな一面作りやがって!!」なんて思っている選手はハッキリ言って、二流です。野村克也さんの有名な言葉に「無視・賞賛・非難」というものがあります。三流なうちは無視されてしまう。二流になると賞賛されることもある。さらに、そこから一流に登りつめた選手だからこそ、非難される機会も増していくという、選手の評価軸に関する言葉です。つまり、新聞の一面で非難されるなんて、世間の大きな期待の裏返しであり、一流の証明なわけですよ。だから選手としては、一面でディスられるだなんて、意気に感じなきゃいけない部分だと思うんです……。まあ皆さん、実際のところはやっぱり怒りますけどね(場内笑)。



菊地 本人の言い分もあるでしょうし、負けず嫌いだからこそプロ野球選手の一流になれたわけですから。

加藤 でも、「加藤さん、今日の報知の記事、なんなんですか!?」みたいに言ってくれたほうがありがたい場合もあります。その場合は説明を加えることもありますね。「事実は事実だから書いたよ。でも、本当は期待しているんだから、次は活躍してオレに“ヒーロー原稿”も書かせてくれよ」みたいに。そういう心と心のふれあいの中で、キャンプインからシーズン開幕、シーズンオフと季節が巡っていく。そういう心の通い合いがあるという意味では、スポーツ紙というのはとても人間くさいメディアだとも思います。

デスクとしてこだわりたい記事


加藤 今日の紙面で私が好きだった原稿はというと、日本ハムのルーキー・有原航平投手が最近気になったニュースとして、女子プロレスの世W虎選手と安川悪斗選手の件を挙げた、っていう話題ですね。

菊地 ありましたね。壮絶な喧嘩マッチになってしまって重傷を負ってしまったという。

加藤 そうなんですけども、この記事のキモとしては有原が「世W虎で『よしこ』って読めないですよね」とコメントしているという(場内笑)。これ、本紙の独自ネタです。ウチにしか載っていなかったもん(笑)。でも、やっぱり見出しをつける部署の整理部からは「有原の写真をデカくしたいのでこのネタ、飛ばしてもいいですか?」と相談が来ました。でも、絶対に載せる!! とデスク権限で言い張って(笑)。写真が小さくてもいいから、「世W虎対安川悪斗、有原読めず」は絶対に入れると。

菊地 デスクのこだわりとして。

加藤 だってこれ、私も読めなかったし、みんな読めませんでしたよね? むしろこれで「よしこ」と読むって一種の「発明」ですよね。海のキレイな沖縄の最北端の地・国頭で「世W虎」に思いを馳せるドラフト1位の有原……考えただけで楽しくなってくるし、これは拾わなきゃダメだろう、と。人事に関するスクープや、打った、投げたの記事はもちろん大事ですけれど、やっぱり、こういう軽やかな記事も載せたいな、好事家の読者のツボを刺激したいな、ということも紙面を作る上では、常に考えたりしています。


■加藤弘士(かとう・ひろし)
1974年4月7日、茨城県水戸市出身。水戸一高ではプロレス研究会に所属。慶應義塾大法学部法律学科を卒業後、1997年に報知新聞社入社。広告局、出版局を経て、2003年からアマ野球担当。アマ野球キャップや、野村克也監督、斎藤佑樹の担当などを経て、2014年より野球デスクとなる。

■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」、「AllAbout News Dig」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。近著に『福島のおきて』(泰文堂)。Twitterアカウントは@oguman1977(https://twitter.com/oguman1977)

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