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第8回 あのアイドルの丸刈りアタマと体罰と高校球児!?

 バリカンで頭を丸めた女性が、号泣しながら謝罪を述べるその動画は瞬く間に世界中を駆け巡った…。記憶に新しい「丸刈りアタマ」の謝罪会見の動画を見て、驚いた読者の方々も多くいたのではないでしょうか。野球の旬な話題に鋭く踏み込んで紹介する「クローズアップ得点圏内」のコーナー。今回はその「丸刈りアタマ」と「体罰」と「高校球児」をキーワードに進めていきます。

グループの御法度を破って謝罪

 あのアイドルグループに所属するその女性は、グループの御法度を破って、ある男性と外泊したことが週刊誌で暴露され、すぐに頭を丸めて、Youtubeを通じて謝罪をしました。以前のロングヘアーから想像もできない丸刈りアタマで涙を流して謝る姿は、悲壮感すら漂わせていました。グループを知る人もそうでない人も喧々諤々(けんけんがくがく)、日本のみならず米国CNNでは「日本の武士道精神だ」など、よく分からない報道をされたり、それはもう最近の話題を独占したニュースでした。

強制的な丸刈りは「体罰」?

 「野球と関係ない話では!?」
 いえいえ、そんなことはありません。丸刈りアタマといえば高校球児。「丸刈りにしてなんでも許されるんなら、高校球児はいつも謝ってることになるじゃねーかっ!」と、有楽町の居酒屋で野球好きの仲間と吞みながら話をしていた自分と同じように、そのグループのファンからも、そうでない人々からも様々な意見が飛び出します。
「丸刈りにさせるなんて人権侵害も甚だしい」
「体育会系の気質が社会に残っている証拠」
 といった声がネット上を席巻しました。あの丸刈りアタマが連想させるのはズバリ、体罰。「所属事務所からの体罰じゃないか?」といった声もあがり、まるでタイミングを計ったかのようなこの丸刈りの話題は、昨年末に発覚した大阪・桜宮高校で起きたバスケットボール部顧問の体罰事件に端を発する「スポーツ界の体罰問題」と重ね合わせるように報じられるケースがみられました。

バスケ部の次は野球部

 さらには女子柔道日本代表の暴力、ハラスメント問題が明るみになり、部活動だけではなくて、トップ選手にまで蔓延していたという事実は、反響を呼びました。正直に言って、中学、高校と野球部に所属していた自分にとっては「バスケ部の次にやり玉に挙がるのは野球部だろうな…」という思いはありました。残念がらそれは現実となり、複数の高校野球部で「体罰があった」と報告され、この原稿を書いている今も、甲子園出場経験もある都立の強豪校・雪谷高校で体罰問題が発覚。日本高野連から指導者による体罰、部員によるいじめの根絶を求める通達を都道府県高野連を通じて加盟校に出したというニュースも入ってきました。

「体罰」の今と昔

 かく言う自分も野球に明け暮れていた中学、高校時代には「体罰」はありました。名門校とはほど遠い、どこにでもあるような田舎の公立高校でも「体罰」は日常茶飯事でした。エラーをするとケツバット一発。地元では有名なワルが集まる学校に進学した中学時代は先輩の「しごき」にビビりながら毎日、野球をやっていました。
 あの偉大な三冠王・落合博満氏は高校時代に所属していた野球部の上下関係に嫌気がさし、有り余る才能を持ちながら入退部を繰り返したという話も聞いたことがあります。
 「指導者や先輩には絶対服従!」といった暗黙の了解から、昔は自然と納得してしまっていた「しごき」。「服従しても(殴られても)野球はうまくならない」という当然のことが、時代の変化とともにやっと受け入れられはじめ、「しごき」は減少していきました。このことについては連日のようにマスメディアに登場する桑田真澄氏が詳しく、大学院での研究領域でもあり、自らが昔に受けた体罰について辛辣に切り捨てていました。また桑田氏曰く、メジャーで野球をしたときは、どこに行っても殴ったり怒鳴りつけたりするコーチは一人もいなかったとのことです。
 その一方で日本に残り続けてしまった悪い風習は「体罰」として認識されるようになりました。

どこまでが「体罰」?

 野球がうまくなってほしい、という指導者の想いがありながらも殴る・蹴るといった行為をはたらいてしまうのは、もちろん論外ではありますが、問題は指導者だけなのでしょうか?
 「しごき」の減少とともに、折り目正しく決まっていた上下関係が最近は希薄になってきたように感じます。選手側が目上の指導者を軽くみている、言うことを聞かない、といったことも影響しているのではないでしょうか。
 体罰報道の中身を見ると、高校生として、一人の人間として間違った行動を繰り返している生徒に手を出したケースもあります。挨拶もろくにできない、練習も適当にやり過ごす、そんな未成年の野球少年(昔の自分みたいなハンパ者)には、何度注意しても分からない場合は平手ビンタ一発! のほうが(自分の経験をふまえると)分かりやすいのでは…と思うときもあります。いずれにせよ、そんな「しつけ」と「体罰」の“線引き”は、当事者たちによって引かれるもので、受け取り方ひとつで大きく変わってしまうのも事実です。

お互いをもっと知るべき

 上下関係が希薄になっている今の時代は、指導者側と選手側はもっとお互いを知ってもらう、興味を持ってもらう努力を両者ですることが大切なような気がします。お互いを信頼する気持ちが足りていないから「しつけ」と「体罰」の境目が「あやふや」になっているのではないでしょうか。「鉄拳制裁」で有名だったプロ野球監督はその昔、ベンチ裏でボコボコに選手を殴って鼓舞させるも、選手もそれについてきたのは必ず結果が出たから、つまり野球が上手くなったからだといいます(もちろん、殴った後のフォローもあったそうですが)。
 さらに思い出されるのは「西さんのゲンコツはアツい」と選手に言わしめた西本幸雄監督。厳しい練習やキツい体罰があっても、監督と選手の間に蓄積された「信頼関係」があったからこそ、選手は納得して監督に服従していたのでしょう。高校野球でも「あの監督さんの元で野球がしたい!」という選手の信頼があれば、ケツバット一発! があったとしても「体罰」にはならないと思います。
 とりあえずは指導者側の皆さん、まずは「丸刈りアタマ」にしたアイドルの名前を覚えて、選手たちと話をしてみるのもコミュニケーションをとるきっかけになるかもしれませんよ。メンバーが多いのでややこしいですが、がんばりましょう!





■プロフィール
文=鈴木雷人(すずき・らいと)/会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。自他共に認める「太鼓持ちライター」であり、千葉ロッテファンでもある。Twitterアカウントは@SuzukiWrite

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