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◎2012年10大ニュース【プロ野球編】

 今週の『野球見どころランキング』は、年末特別企画として、『2012年10大ニュース【プロ野球編】』と題し、今年プロ野球界で起きた注目すべき10のトピックをランキング形式で振り返ります。

角中勝也が首位打者に。四国IL出身選手で初のタイトル獲得

 今シーズンは、ロッテの角中勝也が首位打者を獲り、日本の独立リーグ出身選手としては初のタイトル獲得者が生まれました。角中は日本航空第二高(石川)卒業後、高知ファイティングドッグスに入団。1シーズン主軸を打った成果を認められ、2006年ドラフト7巡目でロッテに指名されます。入団から4年間は1軍定着できませんでしたが、イースタンリーグでの打撃成績では上位に顔を出し、08年には独立リーグ出身選手としては初の公式戦本塁打を放つなどの活躍も見せていました。
 転機は2011年。シーズン後半にレギュラーを奪い41安打を放ち打率.266と統一球環境下ではまずまずの確実性を見せ信頼を得ます。そして今シーズンは128試合に出場し149安打、打率.312と3割に乗せる成長を遂げました。最後はベンチのサポートはありましたが、中島裕之(西武)を抑えて首位打者を獲得しました。

ノーヒットノーランが3回達成

 統一球導入後、投高打低状態の続くNPBですが、それも影響しているのでしょうか、今年は3度の無安打無得点試合(ノーヒットノーラン)が達成されました。1人目の前田健太(広島)は4月6日、横浜スタジアムのDeNA戦で達成。これは06年に山本昌(中日)が達成して以来の6年振りの快挙でした。2人目は杉内俊哉(巨人)で、5月30日の東京ドームでの楽天戦。これは9回2死2ストライクからの四球という惜しすぎる形で完全試合を逃した後に達成したもの。そしてシーズンも終わりが近づいた10月8日に3人目の西勇輝(オリックス)がヤフードームでのソフトバンク戦で達成。この試合は小久保裕紀の引退試合だったため、主役の座を奪ってしまった西は恐縮しきり。
 なお、ノーヒットノーランは1940年には年間5回、43年には4回達成されたことがありました。戦後も年間3度というケースは何度かあり、最近だと95年に西崎幸広(日本ハム/7月5日の西武戦)佐藤義則(オリックス/8月26日の近鉄戦)テリー・ブロス(ヤクルト/9月9日の巨人戦)が達成しています。なお、MLBも当たり年だったようで、ノーヒットノーランが7度、そのうち3度は完全試合という異常事態でした。

サンフランシスコ・ジャイアンツがワールドシリーズ制覇

 映画「マネーボール」で知名度を上げたアスレチックス、イチローのヤンキースがリーグ優勝決定戦で敗れ、日本人選手が所属しないチーム同士の対戦となり、一般的な注目度は下がったような気もするワールドシリーズ。ジャイアンツとタイガースのカードで行われ、4連勝でジャイアンツが優勝。2010年以来2年振りの制覇でした。ジャイアンツはそれぞれの試合で8点、5点、7点、9点を奪う攻撃力で勝利を引き寄せましたが、注目を集めたのは第1戦、26歳の巨漢のベネズエラ人、パブロ・サンドバル3打席連続ホームランでした。初戦を任された昨年のサイヤング賞投手で、今シーズンも17勝を挙げていたジャスティン・バーランダーから2打席連続弾。その次の打席も本塁打を放ち、この日は4打数4安打4打点。ワールドシリーズでの1試合3本塁打は、アルバート・プホルスレジー・ジャクソンベーブ・ルースだけが達成している偉業でした。サンドバルはシリーズMVPにも輝きました。

ミゲル・カブレラ、MLB史上12人目の三冠王に

 日本では阿部慎之助(巨人)が三冠王を惜しくも逃しましたが、アメリカでは、打率.330、本塁打44本、打点139を記録したミゲル・カブレラ(タイガース)が見事手中に収めました。昨年108個あった四球が66個に減っていることからもわかるように、後続に強打者プリンス・フィルダーが入ることにより、勝負を避けられることが減った恩恵も受け残されたものと言えます。三冠王は1967年以来の45年振りの快挙で、チームはワールドシリーズ出場も果たしており、まさに価値ある三冠王と言えるものでした。MVPの投票では、打撃ではカブレラに劣ったものの、守備力を計る指標で高い数値を出した新人のマイク・トラウト(エンゼルス)のほうが総合的には価値のある選手だ、という声が上がるという事態も話題になりました。それでも45年振りの三冠王、さらにはチームのワールドシリーズ出場のインパクトは大きく、記者投票では28人中22人がカブレラに投票。無事MVPに選ばれました。

ダルの穴埋めた日本ハム、パを制覇

 チームの柱だったダルビッシュ有が退団し、大幅な戦力ダウンが予想された日本ハムでしたが、既存戦力をうまく活用しパ・リーグを制しました。ダルビッシュのポスティングでの落札額として得た40億円は補強には使わず、シーズン前はどうやりくりするのか予想もつきませんでしたが、過去3年間0勝の吉川光夫が、待っていたかのようなタイミングで台頭し14勝。さらには糸井嘉男、陽岱鋼、中田翔の外野陣が攻撃、守備ともにチームに上積みをもたらしダルビッシュの穴を埋めることになりました。優勝を争った西武が栗山巧を、ソフトバンクが松田宣浩を勝負どころで故障で欠いたことや、先発投手がイニングを稼げず、負荷の高まっていた日本ハムリリーフ陣のメンテナンスに夏場成功したことなど、運やマネジメント力も結果に影響を与えていたと思われます。

巨人が盤石の強さでセを制覇。ポストシーズンも勝ち抜く

 元々充実していた戦力にソフトバンクから杉内俊哉、ホールトンを加えた投手陣、弱点だった三塁にDeNAから村田修一を加えた打線が噛み合い出すと額面通りの力を発揮。シーズンの出だしこそもたついたものの、交流戦をセ・リーグのチームとして初めて優勝。その後は勢いに乗り後半戦は独走しました。クライマックスシリーズでは杉内らの離脱もあり中日に3連敗。一度は追い込まれましたが、意地の3連勝を決めて日本シリーズへ。シリーズではリーダーケガを抱えた阿部慎之助らが奮闘し粘る日本ハムを退け日本一に。アジアシリーズも危なげなく勝ち抜きました。“物量の差”で押し切れるレギュラーシリーズだけではなく、短期決戦でもしっかり勝てるところに、真の意味でチームの充実を感じさせるシーズンでした。

大物選手が次々に引退

 90年代から00年代の球界をリードしてきた選手の引退が続いた年でもありました。8月14日に小久保裕紀(ソフトバンク)が、27日に石井琢朗(広島)が今シーズン限りでの引退を表明。8月31日にはBCリーグでプレイングマネジャーを務めていた高津臣吾(新潟)も引退表明。9月12日には金本知憲が、28日には城島健司(ともに阪神)もユニフォームを脱ぐ決断をしました。
 そのほか草野大輔(楽天)、福地寿樹(ヤクルト)、英智(中日)、平尾博嗣(西武)、今岡誠(ロッテ)らも引退を表明しています。


稲葉篤紀、宮本慎也、小久保裕紀――3選手が2000本安打達成


 今年は2000本安打を3選手が達成しました。日本ハムの稲葉篤紀は4月28日(楽天戦)にて達成。ヤクルトの宮本慎也は5月4日(広島戦)に41歳5ヵ月の史上最年長での達成。ソフトバンクの小久保裕紀は残り1本の1999本を放ちながら5月25日に腰の痛みで登録抹消。1ヵ月ほど調整し復帰した6月24日に達成しました。3選手はいずれも今シーズン終了時点で40歳の大台に乗っている選手。まず何よりも試合に出場する努力を、実直に続けたことにより成し遂げられた大記録でした。


イチローが名門ヤンキース電撃移籍


 昨シーズンで年間200本安打の連続記録が途絶え、今年も調子が上がらないままシーズンを送っていたイチローが迎えた、人生の転機とも言える移籍も印象的でした。
 イチローのヤンキースへの交換トレードが発表されたのは7月23日のこと。記者会見でイチローは「20代前半の選手が多いこのチームに来年以降、僕がいるべきではないのではないか」「僕自身も環境を変えて、刺激を求めたいという強い思いが芽生えてきた」と涙を浮かべながら話しました。この時にはイチローがヤンキースでポジションをつかむのはむずかしいように思われ、ビッグネームの悲壮感漂う退団会見にも映りました。
 ところが、なじみのある背番号51番を固辞して31番を背負い、さらには下位打線での出場ながら「ヤンキースのイチロー」は生まれ変わったかのようなプレーを見せました。67試合に出場し227打数73安打、打率は.322とかつての輝きを取り戻し、久々に出場したプレーオフでも“らしい”プレーを連発。ニューヨークのファンの支持を完全に得ることに。当初は今年限りと思われていた契約も延長に成功。新たに2年契約を結び、イチローがまだ経験していないワールドシリーズ制覇を、名門球団の一員として目指します。


ダルビッシュ有、MLBデビュー

 NPBで167試合に投げて93勝、防御率は1.99。現代の投手で、伝説級のプロ野球選手たちの記録に迫る可能性を秘めた唯一といっていい日本のエース・ダルビッシュ有。その渡米が、2012年最大のニュースでした。
 昨年の今頃、5170万ドル(約40億円)を投じ交渉権を獲得したレンジャーズと6年5600万ドル+出来高払い400万ドル(約46億円)で契約したダルビッシュは、アメリカでもトップレベルの注目を浴びながらスプリングトレーニング期間を過ごし、現地4月9日のマリナーズ戦でメジャーデビュー。5失点しましたが強力打線の援護で初勝利を挙げました。制球が定まらないのは「メジャーの公認球に慣れていないのでは」という理由が思い当たりましたが、外野まで軽々ボールを運ばれていたことには現実を突きつけられた思いも。いい当たりをされること自体がまれだった日本でのピッチングを見慣れていたこともあり、大きな当たりを何度も打たれるダルビッシュの姿は少々ショックだったファンも多いのでは?
 その後も基本的には日本のような投球はできないままシーズンは進んでいきました。この結果に誰より面食らっていたのはダルビッシュだったはずですが、メディアの前では前向きな言葉を残し、Twitterでぶつけられる罵詈雑言にも、ジョークを交えなが斬り捨て続けるメンタルはさすがでした。すると、夏から秋にかけては環境にもフィットし、コントロールは向上。四球が減り三振が増えていきました。191回3分の1を投げ16勝9敗、防御率3.90。苦心の投球を続けながらも先発の役目を守り一定の結果を残しました。日本のような投球ができなかったのは残念でしたが、その状況の中でアジャストするための「手立て」がある懐の深さには、やはり天才? という印象も受けました。


(2012年プロ野球のまとめ)
 日本の野球ファンとしては、ダルビッシュ有という日本では絶対的な存在が、メジャーの舞台で苦しむ姿を歯がゆい思いで見ていました。頭ではやむなしと思いつつも、やっぱりバッタバッタと三振を奪ってほしかった……そんな思いが頭をよぎったものです。
 ただ、復活を果たしヤンキースと2年契約を結んだイチローはこんな言葉を残しています。
「ポテンシャルだけでやってきた39歳と、いろんなものを積み重ねて、さまざまなことを考えて、そこに来た39歳を一緒にしてほしくないと思っている」
 1年目からMVPと首位打者を獲得し全米を震撼させた存在であるイチローは、野手と投手の違いはありますが、言うならば私たちがダルビッシュになぞってほしいと願うモデルだったと言えます。あの頃のイチローは才能でメジャーを凌駕したように映ったものですが、決してそんなことはないということなのでしょう。なんだかダルビッシュへのエールにも聞こえる言葉でした。
 NPBについては、巨人の圧勝やオフに大型補強に務める阪神の様子を見ていると、持つ者と持たざる者の違いがさらに明確になっている印象を強く受けます。そんな中、成功事例と呼んでいい育成力の日本ハム、有力外国人獲得に積極的に動く楽天、高田繁GMが手腕をふるうDeNAなどがいかに食らいついていけるのか。ペナントレースが盛り上げるために、頭を捻る球団の頑張りに期待したくなります。

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