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第二部 2013年ドラフトを斬る!

『野球太郎No.004 2013年プロ野球12球団選手名鑑&開幕特集号』発売記念トークライブ
 去る4月12日に『野球太郎No.004』の発売を記念して開催されたトークイベント当日の三省堂書店神保町本店7階の特設会場は「野球好き」で埋め尽くされ、熱気ムンムン。先週お送りした第一部「2013プロ野球大予想!」に続いて、今週は第二部「2013ドラフトを斬る!」の模様をダイジェストでレポートします。

〜第二部「2013ドラフトを斬る!」〜
 データスタジアム社のベースボールアナリスト・金沢慧氏の鋭いデータ分析に注目が集まった第一部に対して、第二部はそのデータ分析とは対照的な内容となりました。主役は言わずと知れた「流しのブルペンキャッチャー」安倍昌彦氏。安倍さんが「生身」で投手の球を受けて成り立つ「取材」で得た経験は、データ分析とは異なる視点で非常に興味深く、野球好きには貴重なトークが盛りだくさんの内容となりました。進行役は週刊野球太郎で連載している「リアル公開野球レクチャー“野球の見方” 」にも登場しているライターの久保弘毅氏。安倍さんとの軽妙な掛け合いにも注目です。



【これは「野球の学校」だ!】
 安倍さんが実際に球を受けることによって成立するコミュニケーションは、どんな取材方法よりも濃密で、まさに心のキャッチボールを具現化したものに他ならない。しかもそのキャッチボールの相手がドラフト候補の投手である…という、プロアマ問わず全ての野球ファンが注目する「流しのブルペンキャッチャー」。『野球太郎』本誌の名物コーナーとして毎回、楽しみにしている読者の方も多いのではないでしょうか。
 もちろん自分も楽しみにしている読者の一人ですが、なんと言ってもその安倍さんの語り口がとても良いのです。ドラフト候補投手の唸りを上げる剛速球をブルペンで実際に受けながら、時には厳しく、時には優しく言葉をかけることで対話は進み、さらには安倍さんの長年の経験から導き出される「野球人論」に、ドラフト候補投手がグイグイと引き込まれる…。いつのまにかドラフト候補投手が安倍さんを先生役として仰ぐような、そんな流れで進む同コーナーですが、今回のトークライブも安倍さんが先生役で、会場に集まった野球ファンが生徒役というような、さながら「野球の学校」で授業を受けているような雰囲気でトークライブは始まりました。

【「文字通りの“未完の大器”」甲斐翼投手(宮崎日大高)】
 まずは「捕りたてホヤホヤ」といってもよいでしょう、3月中旬に宮崎日大高のブルペンで実際に球を受けた甲斐翼投手の取材秘話からスタート。同じ高校の2つ先輩の武田翔太投手(ソフトバンク)が「理論派」タイプなら、甲斐投手は「やんちゃ」で良い意味で「目立ちたがり屋」タイプだと分析。同じ宮崎日大高校のブルペンで両投手のボールを受けた経験がある安倍さんだからこそ言える独特の表現で甲斐投手を評していきます。投球動作を撮影した動画を見ながらフォーム分析をする安倍さん。「軸足の蹴りは中日で活躍していたチェン投手(オリオールズ)とそっくり」という解説に会場全員が頷きます。まだまだ「野球の勉強」が必要な選手ではありますが「大器」であることは間違いなし、と太鼓判を押す安倍さんでした。



【「和製ライアン」小川泰弘投手(ヤクルト)】
 左脚を顔付近まで上げる独特のフォームに注目が集まるヤクルトのルーキー・小川泰弘投手ですが、安倍さんの「見方」はちょっと違う。グラブを持つ側の左腕を捻って身体の開きを止める投球動作は、投手としては小柄な身体をいかに合理的に使えるか、小川投手の研究熱心さの賜物だと評します。小川投手の身体的特長といえば「実際に触らせてもらった」という強靱な下半身。独特な投球フォームを支える下半身は「澤村拓一(巨人)レベル」だといい、創価大時代に投球を受けた際には投球動作の途中、左脚を上げたトップの位置で身体を押してもビクともしなかったそう。
 さらにその取材時には小川投手の「目つき」が印象的だったとのこと。今までたくさんの投手の球を受けて取材をしてきた安倍さんでさえ、誰よりも個性的だったという、その「眼力(めぢから)」は「小川投手の負けず嫌いな性格がにじみ出ている」と評し、その写真が映し出されると会場全員が喰い入るように見入っていました。


▲ 目つきの鋭さは大学時代の写真からも感じられる


【「アーム式投法からの脱却」則本昂大投手(楽天)】
 続いてはこちらもルーキーながら開幕投手に抜擢された楽天の則本昂大投手を徹底解剖。安倍さんが投球を受けたのは三重中京大学在籍時代の去年の5月頃ですが、その時に驚いたのが投球フォームの変化だったといいます。以前は腕が伸びたまま投げる「アーム式」の投げ方だった則本投手でしたが、約半年でフォームを改修。安倍さんは身振り手振りを交えてアーム式からの変貌ぶりを解説。あまりの白熱したパフォーマンスで机の上の飲料水を倒してしまいましたが「アーム式は直るのではないか」という持論も展開。
 また「則本ボール」と称するスライダーとカーブの中間のような、いわゆる「スラーブ」を実際受けた安倍さんは「曲がり幅の大きいカーブで、一度ホップしてから落ちてくる」とリアルに表現。「これが則本投手の大きな武器」と、実際に球を受けている安倍さんならではの解説に会場は全員が納得の表情を浮かべていました。

女性ファンも是非参加を!
 その後は会場を埋め尽くした熱心な野球ファンからの質問コーナーに進み、あっという間に予定の1時間が終了。自らを「プロ野球ではファームの選手を担当」と語る安倍さん。一軍選手を評するのではなく、これから活躍が期待される二軍選手を中心に評する機会が多いというだけあって、ファームの試合観戦にもマメに足を運んでいます。実際、中村悠平捕手(ヤクルト)や森雄大投手(楽天)、桑原将志(DeNA)についての質問が飛ぶと、ファームで試合を観ているからこそ話せる「濃い」内容のトークが続きました。これは若手選手を追いかけている女性の野球ファンの方々も大いに楽しめるはずです。
 そして安倍さんが分析した甲斐翼投手の軸足の蹴り、小川泰弘投手の左腕の捻り、則本昂大投手の投球フォーム…。「次にこの3人の投手を観る機会があったら、それぞれ安倍さんが指摘したポイントを注目して観てみよう」と改めて思いました。

 第一部「2013プロ野球大予想!」のデータ分析から観るプロ野球もとても勉強になりましたが、第二部「2013ドラフトを斬る!」も含めて、このトークイベントに参加したことで「野球を観る目」が鍛えられたと思います。野球をもっと知りたい、詳しくなりたいという方は是非とも、次回開催に足を運んでみてはいかがでしょうか。男女問わず全ての野球ファンの「野球の観戦力」が上達することは間違いないでしょう。

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