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第十三回 実例ストーリーに基づく法則(1)

 子どもを野球好きにさせるには? 子どもを将来野球選手にしたい! そんな親の思惑をことごとく裏切る子どもたち。野球と子育てについて考えるコーナーの第十三回目。野球ライター“ハリケン”こと服部健太郎さんが実話を交えて、「父と子のキャッチボール」について語ります。

あの小学生はいま


「あの子、強豪の○○高校の4番任されてるんやってなぁ! 小学校の時から思い切りのいい、パワフルなスイングやったもんなぁ〜」
「あの子、1年生で○○高校のレギュラーになったらしいよ!」
「へぇ〜知らんかったわ! 嬉しいね、それ!」
 近頃、少年野球の指導者時代に仲良くなった同僚コーチや、他チームの関係者の方々などと食事に出かけたりすると、「その後のあの子」的な話題になることがやけに多い。
 思えば、少年野球に携わり始めたのが今から約7年前。当時小学6年生だった子らは、現在19歳になる。私が初めて受け持った学年の子らも今夏、高校野球を終えた。「小学生時代をお互いが知っている子のその後」という実例ストーリーのストックが各人ともに増えてきているため、その手の話題に花が咲きやすくなっている、ということなのだろう。
「あの子は小学校時代もすごかったけど、中学ではさらにスケールアップしてるみたい」
「あんなにへたれで、小さかった控えのあの子が中学では強豪クラブチームのエースに成長したらしいよ」
「へぇ〜、わからんもんやねぇ!」
 こういう実例ストーリーは聞いていても気分がいい。笑顔が広がり、場も和み、お酒も進む。
「○○高校に誘われてるらしいよ」
「じゃあ甲子園出れちゃうかもね」
「どこまで成長するんだろう」
「プロだって夢じゃないな」
 人生も後半に差しかかったおじさんたちが果たせなかった夢を「小学生時代をよく知っているあの子」たちが成し遂げるかもしれない。忘れかけていた「夢と希望」をテーマに、アルコールが胃袋に流し込まれるピッチはますます上がっていく。

道を踏み外してしまう少年も…


 しかし、この「ビフォー&アフター」話、住宅リフォームの匠が手がける某テレビ番組とは異なり、必ずしもハッピーな展開になるわけではない。
「あの子、小学校時代は怪物って騒がれてたのに中学では並の選手扱いだったみたいやなぁ…」
「この間、スポーツ店で偶然見かけたけど、小学生時代から一向に体が大きくなってないわ」
「あの少年野球界のスーパースターがなぁ…。早熟選手だったということなんかなぁ…」
 こんな実例ストーリーが出されると、場の空気は途端に沈み、お酒のピッチが鈍リ出す。しかし「実例ストーリー残念編」はその後も容赦なく続いたりする。
「中学の強豪クラブチームに入って1年生から上級生に混じって試合に出てた、あのスーパースター選手、野球辞めちゃったらしい」
「え〜!? 小学生の時点で高校からスカウトされていたあの子が!? またなんで!?」
「道をそれてしまったらしい…。学校もろくに行ってないらしい」
「わちゃあ…もったいない…」
「おれ、あいつみたいなやつがプロに行くんだろうなと思ってた」
「おれも」
「まぁ、センスはありすぎるほど親からもらったけど、野球はそれほど好きじゃなかったということになるのかなぁ…」
「努力しなくても人の何倍もできちゃうから、野球に対する執着が生まれなかったのかもね。もったいないという感覚すら本人にはなさそう」
「いやぁ、それにしてももったいない…」
 少年野球に携わっていなかったら、他人様の子どものことでこんなにも気を落とすことは、おそらくなかっただろう。

これが「早熟選手あるある」だ


「なんかさ、『こういう選手は飛躍する確率が高い』『こういう選手は停滞しやすい』みたいなことがだんだんわかってきたような気がする」
「たしかに。100パーセントとはいわないけど、傾向みたいなものはなんとなくわかってきたかも」
 トークテーマは「ビフォー&アフターの実例ストーリーの共有」から、いつしか、「実例ストーリーに基づいた法則」的な話に移っていたりする。
 やはり気になるのは、小学生時代に「怪物」「スーパースター」と呼ばれていた少年たちが、その後、期待値程に伸びていかなかったケースだ。
 このケースをひも解くと、必ずと言っていいほど、前述の会話の中にも登場した「早熟」というキーワードが登場する。ありがちなパターンを紹介すると…。

●小学生の時点で、同学年の子の中で体が圧倒的に大きい。
●パワー面でアドバンテージがとれる。
●少年野球の世界の最大の武器はパワー。投げることにしろ、打つことにしろ、フォームに欠点があり、技術が伴っていなくても、パワーでごまかせてしまうことが多く、パワーに比例した圧倒的な結果が出ることも珍しくない。
●圧倒的な結果が出ていたとしても、並行して、正しい技術習得に励めればいいが、結果が出てしまっているために本人も指導者も親も「別に今のままでいいじゃん」となりがち。
●圧倒的な結果が出てしまっているがゆえ、祭り上げられ、小学生にして鼻が高くなる。
●往々にして親も鼻が高くなる。
●圧倒的な結果が出てしまっているがゆえ、自らを追い込むような努力をする習慣はつきにくい。
●中学に上がって早々、身長の伸びが鈍りだす。
●学校の朝礼の際に並ぶ位置がどんどん前の方へずれていく。
●本人も周囲も「同学年の子に比べ、成長が単に早かった」という事実を知る。
●いつしか野球においてもパワーで押せる選手じゃなくなっている。
●パワーで押せなくなるにつれ、いつしか結果も出なくなっている。
●といって、パワー減をカバーする技術はない。
●といって、努力する習慣は培われていない。
●気づけばごく普通の選手になっている。

 書いていても、なんだか悲しくなってきたが、この手のコースを辿る実例ストーリーは思いのほか多い。
 こんな事例を挙げると、「うちの子、早熟なの。どうしよう」と悲観してしまう方もいるかもしれないが、早熟だから将来的に伸びないという意味ではない。
 早熟の部分に甘えず、小学生の時点で結果が出ている要因を本人、親、指導者で冷静に見極めることができれば、なんら問題のないことだとは思う。しかしこういう実例ストーリーが多いということは、その冷静な見極めができるケースが少ないということなのかもしれないが…。

 スペースが尽きたので今回はこの辺りで。「実例ストーリーに基づく法則」、次回に続きます。



※次回更新は1月7日(月)になります。

文=服部健太郎(ハリケン)/1967年生まれ、兵庫県出身。幼少期をアメリカ・オレゴン州で過ごした元商社マン。堪能な英語力を生かした外国人選手取材と技術系取材を得意とする実力派。少年野球チームのコーチをしていた経験もある。

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