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中央大は1部残留なるか、6季連続“修羅場”に挑む一橋大の結果は?……東都1部〜4部入替戦レポート

★大学野球名物!? “入替戦”は入れ替わったのか?

 6月14日から行われた東都大学リーグ入替戦。まず、1部・2部入替戦から行われた。

 3季ぶりの1部復帰を目指す青山学院大と、16季連続1部でプレーし続ける中央大との対戦。青山学院大は5カード中、4カードを第3戦までもつれる展開になりながら勝ち点を落とさずに優勝を果たした。一方の中央大は開幕8連敗と、くじけた出足を立て直せずに最下位が早々と確定。だが、最終カードは2連勝で勝ち点を挙げてリーグ戦を終了した。

 第1戦の先発マウンドは青山学院大が岡野祐一郎(4年・聖光学院高)、中央大は伊藤優輔(2年・都小山台高)がそれぞれ託された。

 試合は初回から激しく動いた。まず中央大は先頭の松田進(4年・國學院久我山高)がヒットで出塁すると、四球とヒットで無死満塁。4番・小河諒(4年・桐蔭学園高)がタイムリーで先制点を叩き出す。さらに、1死満塁から大城幸泰(2年・糸満高)が2点タイムリーを放ち、中央大が3点を先制した。

 なかなか追加点を奪えない中央大に対し、青山学院大は3回と5回に1点ずつ返して1点差に詰め寄るが、再びリードを2点に広げられる。6回には2死満塁と一打逆転の場面を迎えるものの、リリーフした中央大の村川翔太(4年・浜田高)が内野ゴロに仕留めてピンチを脱した。

 流れが中央大にあるように思われたが、7回、青山学院大が試合をひっくり返す。無死1塁から吉澤岳志(3年・常総学院高)のライトへのヒットの間に一塁走者が三塁を狙い、タイミングは際どかったが判定はセーフ。そのジャッジに対して三塁手が驚き、生まれた一瞬のスキを逃さず打者走者も二塁を陥れた。無死二、三塁から連続タイムリーで同点とすると、犠牲フライで勝ち越しに成功。8回には吉澤に2ランが飛び出し、点差を広げると、7回から救援した葛川知哉(3年・大阪桐蔭高)が3イニングスをパーフェクトに抑える好投を見せ、7−4で青山学院大が先勝。1部復帰に王手をかけた。


▲激しいヘッドスライディングでユニホームが破けた青山学院大・吉澤

★試合前のプレッシャーは、試合後に涙へと変わる

 打撃戦となった初戦とは対照的に、第2戦、第3戦は1点を争う投手戦になる。

 第2戦は、中央大・鍬原拓也(3年・北陸高)、青山学院大・近藤卓也(4年・秋田商高)の両先発が、5回までともに三塁を踏ませない投球。緊迫した雰囲気のなか、試合が進んでいく。

 先制したのは中央大。6回1死二、三塁から野選で待望の1点を奪うと、7回、8回にはタイムリーが出て、3−0で勝利。鍬原は4安打完封、最後まで三塁を踏ませない好投だった。

 初戦と同じ先発で幕を開けた第3戦。中央大はエラーで3回に先制すると、この2戦で7打数1安打だった指名打者・堀内寛人(2年・県岐阜商高)のタイムリーで6回に追加点を挙げる。

 先発の伊藤は青山学院大打線に連打を許さず、8回3安打無失点でリードを守り、最終回は3連投となる鍬原が無失点で締めて、2−0で勝利。中央大が1部残留を決めた。


▲3連投で1部残留を引き寄せた中央大・鍬原

 両校ともに、選手全員がベンチから身を乗り出して声援を送る姿が印象的だった。長くベンチに腰掛ける選手はおらず、この試合に懸ける想いが前面に表れていた。中央大は出場こそなかったものの、山田直(4年・静岡高)が率先して盛り上げるなど3戦ともに明るい雰囲気を保ち続けていた。


▲1部残留に涙する中央大選手たち

 しかし、残留を決めた後には、まるで優勝したかのように涙を流して喜ぶ選手がいるなど、いかに人知れぬプレッシャーを抱えながら戦っていたかがうかがえる。


▲熱い声援を送る中央大ベンチ

 第2戦を取った方が勝つと言われている入替戦。中央大のように初戦を落としても連勝で昇格、もしくは残留を決めているケースと、2連勝のケースは同数で、第2戦に負けながら、入替戦を制したのは2014秋の一度だけだった。

※直近の1部・2部入替戦戦績
2011春○○ (昇格・降格)
2011秋●○○(残留)
2012春●○○(昇格・降格)
2012秋○○ (昇格・降格)
2013春●○○(昇格・降格)
2013秋○○ (残留)
2014春○○ (残留)
2014秋○●○(昇格・降格)
2015春○○ (昇格・降格)
2015秋●○○(昇格・降格)
2016春●○○(残留)

★2部最下位チームの連勝はどこまで続くか

 1部・2部入替戦の翌週に行われたのは、2部・3部、3部・4部入替戦。

 上記のように、1部・2部の入れ替えは多い一方で、2部・3部入替戦は2008年秋を最後に、2部チームは黒星さえも喫していない。2部と3部の間には厚いカベがある。

 今春は国士舘大(2部最下位)vs.順天堂大(3部優勝)の対戦。12安打7得点で初戦を快勝した国士舘大は、第2戦も圧倒的な打力を見せつけた。

 立ち上がり、ともに走者を得点圏に進めながら両投手が踏ん張る展開。順天堂大は初回から2イニングス連続ヒットで出塁するものの、得点には至らず。

 3回、国士舘大は3連打で1死満塁のチャンスを作る。その場面で打球は併殺コースの二塁ゴロかと思われたが、二塁手が一度、弾いてから捕球したため、一塁へ送球。この間に三塁走者が生還して、国士舘大が先制した。続く4回には2死満塁から高部瑛斗(1年・東海大甲府高)が三塁線へ絶妙なバントを試み、これが内野安打となって追加点を挙げる。


▲2試合で5安打4打点の活躍を見せた国士舘大・高部

 5盗塁を決めるなど足も生かして得点を重ね、5−1で迎えた7回。1死から4連打で2点を追加し、粘投を続けていた先発・大野駿(4年・習志野高)をマウンドから降ろす。それでも勢いは止まらず、この回打者13人の猛攻で一挙8得点。弓削田智輝(2年・成田高)は1イニングに2本のタイムリーを放つ活躍を見せた。

 順天堂大は4番・井上裕貴(4年・県前橋高)が2打席連続タイムリーを放ち、なんとか一矢を報いることはできたか。


▲順大の4番を務めた井上は2打点と気を吐く

 13−2で国士舘大が連勝して2部残留。3部優勝チームの白星は、そして2007年春以来となる3部からの昇格は、まだ遠いかもしれない。

★3部に最も近い一橋大。果たして3部復帰は叶ったのか!?

 6季連続入替戦に臨む一橋大(4部優勝)との初戦、息詰まる投手戦を制した成蹊大(3部最下位)。

 2−2の同点で迎えた4回、一橋大は無死一、三塁から品川和哉(4年・湘南高)のタイムリーで勝ち越しに成功。以降は互いに走者を出しながら、ホームが遠い展開。だが8回にエラーで4点目を奪った直後に、スクイズでダメ押し点を奪う見事な攻撃でダメ押しの5点目。前日に先発完投している前野統馬(3年・洛星高)が6回から無失点救援し、1勝1敗のタイに戻した。

 3戦目はこれまでと打って変わり、一方的な展開となる。

 成蹊大は2回、連続タイムリーで2点を奪い、3回にも1点を追加。5回以降は毎回得点と打線が繋がり、19安打15得点と圧勝。前日、ミスが続いた古川真啓(2年・日大鶴ヶ丘高)はこの日、堅守を連発して盛り立て、2安打2打点と攻守に渡り活躍。投げては初戦も完封した池田凌理(3年・桐光学園高)が粘り強い投球を見せ、5安打無失点。2戦連続完封という大活躍だった。


▲2戦連続完封勝利の成蹊大・池田

 昨秋と同じ顔合わせとなった戦いは、成蹊大の3部残留で幕を閉じた。


▲第1、2戦に好投した一橋大・前野だったが、第3戦は6回途中4失点と苦しい投球に

 以上のように、今年の“東都”の入替戦はすべて残留となり、“入れ替わらない戦”となった。


文=山田沙希子(やまだ・さきこ)
東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速中。プレー以外の仕草・行動などから変化を読み取る、鋭い観察眼を持つ。イベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。

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