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《野球太郎ストーリーズ》巨人2014年ドラフト1位、岡本和真。高校通算73本塁打を放った屈指のスラッガー(1)

《野球太郎ストーリーズ》巨人2014年ドラフト1位、岡本和真。高校通算73本塁打を放った屈指のスラッガー(1)


阿部慎之助を継ぐ4番候補として巨人が1位指名したのは高校球界屈指のスラッガー。パワー、ミート力、変化球への対応力、状況判断力など、すべてにおいて素材の違いを見せる男は「ホームラン王も」と口にした。 (取材・文=谷上史朗)

岡本和真プロフィール

しっくりこない背番号


 背番号が「38」に決まったと聞いた時、正直しっくりこなかった。
長嶋茂雄(元巨人)の「3」と原辰徳(現監督)の「8」をミックスしたイメージで、原監督が発案したという。今年まで「38」をつけていた井野卓はそんなことを思っていただろうか…。
世界の王とミスターが並ぶ「13」を今年からつける香月良太は、このニュースをどう聞いたのだろう…。そんな思いが浮かんできた。

たかが背番号、されど背番号。「松井(秀喜=元ヤンキースほか)のようになってほしい」と大田泰示に「55」を背負わせた時のほうがわかりやすい。「38」で「ミスターと原監督のように…」と期待を口にされても何とも微妙。二兎を追うものは…ということわざの通り、何事も2つを求めることは難しいのだ。

 さて、ドラフト当日、僕は済美高・安樂智大の取材で愛媛にいたため、岡本の喜びの顔を見られなかった。翌日、愛媛空港でスポーツ新聞を眺めていると岡本のコメントが各紙に出ていた。その中に気になるフレーズを見つけた。

「まずはケガしない体を作って、長く活躍できる選手になりたい。いずれはホームラン王もとりたい」

 この一言を見てまず「岡本らしいな」と思った。仮に大阪桐蔭高時代の中田翔(日本ハム)やPL学園高時代の清原和博(元西武ほか)なら、「いずれはホームラン王を獲りたい」と言ったはずだ。つまり、岡本は「ホームラン王も」で、中田と清原は「ホームラン王を」。「を」ではなく「も」を選択したところに岡本の求める打者像が透けて見える気分だった。

「ホームランも」という中学生


 岡本は智辯学園高から程近い五条市立北宇智小1年の時から、少年野球チーム、カインドで野球を始めた。五条東中時代は橿原磯城シニアに所属し、2年夏にジャイアンツカップベスト4、3年時には日本代表の4番を務め全米選手権大会優勝。

子供の頃から大きかった体はみるみる成長し、季節が変わるごとに打球の飛距離を伸ばしていったのだろう…。そんな想像をしていると、「中学時代のホームランは10本くらいでしたよ」と教えられた。当時を振り返り岡本は「あの頃はライナーで逆方向に打つ練習ばっかりやってたんです。試合でもその意識で打席に立ってました。なかなかサクを越えるまではいかなかったですね」とも言った。

 中学生にしてライナーを逆方向に飛ばす打撃に熱心だった、と。普通、これだけの体があれば飛ばしたくなるだろう。しかし、そうはならなかった。この頃すでに、プロ野球選手になることを目標にし、かつ「1軍で活躍する一流選手になる」と強く誓っていた。

だから中学生にして、飛ばしたい欲求を抑え、実戦的なバッティングに徹していたのだ。同じく関西が生んだホームランバッター、中村紀洋(前DeNA)を取材した際、少年時代の話を聞いてみた。すると中村は目を輝かせこんな思い出を口にした。

「僕は子供の頃から、いつもホームランを狙って思い切り振ってました。とにかく打球を遠くへ飛ばすにはどうすればいいかって、そればっかり考えて。足を高く上げるフォームもそんな中でできあがっていったんです」
 「飛ばせる野球少年」の大半は中村のように考えるだろうが、岡本はすでに「ホームランを打ちたい」より「ホームランも打ちたい」というスタイルでいたのだ。


センバツで有言実行アーチ


 智辯学園高へ進むと一段と打球が飛び始めた。バットの芯でなくてもフェンスを越えるようになっていった。岡本は「手首とかが強くなったからじゃないですか」と素っ気なくその理由を語ったが、4番ファーストとして出場した1年秋の県大会3回戦の橿原高戦で、先制3ランと延長11回の勝ち越し2ランを放ち「智辯に岡本あり」を印象付けた。さらに1年時に8本だったホームランは2年時には47本に。一気に翌年のドラフト上位候補に躍り出た。

「2年の時は、小坂(将商)監督から“3年になったらチームのことを考えてプレーするようになるから思い切りできるのは今のうちだけや”と言われていたんです。だから常に思い切りいって、結果、ホームランも増えたんだと思います」

 おそらくこの時期は「ホームランを打ちたい」と、「を」が「も」を上回っていたのだろう。しかし、3年になると再び「ホームランも」に戻る。センバツ出場前には取材が続いたが、岡本は記者泣かせのセリフをしつこく返していた。「チームのためのバッティングをしたい」「ランナーを還すバッティングをしたい」「チームが勝てばそれでいい」…。

ある雑誌で珍しく「バックスクリーンにホームランを打ちたい」と語っていたので聞いてみると「監督からたまには大きなことを言ってみろって言われて…」と裏事情を語った。ただ、口にした手前…と律儀に思ったわけでもないのだろうが、宣言通り、センバツ初戦でバックスクリーンへ一発。思いはかなう、と思わせる見事な有言実行アーチだった。

次号「3割、30本、100打点」




(※本稿は2014年11月発売『野球太郎No.013 2014ドラフト総決算&2015大展望号』に掲載された「30選手の野球人生ドキュメント 野球太郎ストーリーズ」から、ライター・谷上史朗氏が執筆した記事をリライト、転載したものです。)

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