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紙一重の戦いを制した専修大が4季ぶりの東都1部に復帰!!〜2014秋・入れ替え戦レポート

 1部を経験した選手が多く残る専修大と、2季連続最下位に終わってしまった青山学院大。1週間前に熱戦を終えた1部2部入れ替え戦をレポートする。


●終盤に一振りで決めた専修大。エースの熱投に応えた一発

 初戦の先発を任されたのは青山学院大が岡野祐一郎(2年・聖光学院高)、専修大は角田皆斗(4年・栃木工高)。岡野は防御率2点台前半と決して悪い内容ではないが、今季未勝利。一方の角田はリーグトップの6勝をマークし、MVPと最優秀投手賞を受賞した、まさに大黒柱の活躍だった。

 試合は初回から動いた。
 青山学院大は初回、先頭打者の小林愉尚(4年・日大藤沢高)が四球で出塁。次打者は走者を送れなかったが、小林が二盗を決めて1死二塁。

 この場面に吉田正尚(3年・敦賀気比高)がライトへタイムリーを打って青山学院大が先制した。吉田も二盗を決めて、なおもチャンスは広がるが、後続が倒れて1得点で攻撃を終えた。5回にも盗塁を絡めた攻撃で追加点を奪った青山学院大のペースで試合は進んでいった。


▲初回、吉田のタイムリーで三塁を回る小林

 しかし、専修大は6回、先頭打者の重野雄一郎(3年・専大松戸高)がカウント2−1から、打った瞬間それと分かる本塁打をレフトスタンドへ叩き込み、1点差に詰め寄る。数多くのファンが詰めかけた専修大スタンドは歓喜に沸き、重野もそれを全身で感じるかのようなアクションでベースを回った。

 さらに次の7回、岡野と、代わった福本翼(4年・大阪桐蔭高)を攻め立て、2死一、三塁のチャンスを作ると、ここまで無安打だった9番・三浦拓馬(4年・札幌第一高)が0−2からの3球目、センターへタイムリーを放って同点に。

 先発・角田は序盤こそ、制球に苦しんだが、尻上がりに安定してきた印象。走者を背負っても連打は許さずに、スコアボードには0を並べ続けた。

 そして8回、1死から敵失で出塁し、さらに勢いづく専修大。続く4番・濱田竜之祐(3年・鹿児島実高)がこの日3つ目の空振り三振を喫するものの、5番・渡辺和哉(3年・文星芸大付高)が1−0から振り抜いた打球はライト方向へ高く舞い上がった。

 「超えろ!」と願いを込めて、渡辺はベースを回る。そのままライトスタンドへ飛び込み、勝ち越し2ラン。被弾した福本はしゃがみこみ、専大ベンチはみな総立ちで歓喜に沸き、渡辺を出迎えた。

▲勝ち越し2ランを浴びて腰を落とす福本と、ベースを回る渡辺

 9回表、青山学院大は2死からヒットで走者を出すが次打者が三振に倒れて試合終了。2部優勝の専修大が先勝し、1部復帰へ王手をかけた。

★試合後コメント
斎藤正直監督(専修大)


「うちは小技がないチームなので打つしかありません。7、8、9回まで我慢しようと思っていた通りにできました。ギリギリの中でよくしのいだと思います。今日はキャッチャーの時本亮(3年・大垣日大高)がいいリードをしてくれました。入れ替え戦では2部のリームが先勝するのは大きな意味合いがあります。『これで五分五分だ』と選手には話しました。

 渡辺はオープン戦に7〜8本、ホームランを打っていましたが、リーグ戦は警戒されて四球が多くて0本塁打。勝負されないでイライラしていましたが、よく我慢してくれました。まだ喜ぶのは早いですが、久しぶりに野球をやった感じがします」

角田皆斗(専修大)

▲6安打2失点で完投勝利を挙げた角田

「こんなに人が入って、しかも神宮でのナイターなので調子は良かったのですが緊張しました。3回、4回あたりから落ち着いてきました。2回の三者連続三振は狙っていませんが、3回くらいからは狙って三振を取れるようになりました。うちの野手は打撃がいいので3、4点取ってくれるといつも信じているので、それ以上は取られないように投げました」

渡辺和哉(専修大)

「(ホームラン)打ったのはチェンジアップ。右方向を意識して思い切り振りましたが、まさか入るとは思いませんでした。リーグ戦でイライラしていたのは言い訳なので反省しています。リーグ戦中は『何で打てないんだろう』と思っていましたが、3週間で吹っ切れました。明日も欲を出さずにしっかりやりたいです」


●4時間40分を超える熱闘を制したのは……

 翌日の試合は雨予報のために当日午前中に試合中止が決定。1日空いて月曜日に第2戦目が行われた。

 後がない青山学院大の先発は1戦目と同じく岡野が、専修大は高橋礼(1年・専大松戸高)。

 まず、専修大が先制するも、一度青山学院大が同点に。専修大が再び勝ち越すも、今度は青山学院大が逆転に成功。しかし、専修大・渡辺の2試合連続の本塁打で同点。その後、チャンスは作るものの、決定打が出ないまま、延長戦に入り、14回を迎えた。

 青山学院大は先頭打者を塁に出し、無死二塁という3度目のサヨナラのチャンス。2者連続三振で後がなくなったが、途中出場の高島翔太(1年・常総学院高)のセンター前タイムリーで、代走に出た加藤匠馬(4年・三重高)が一気にホームを駆け抜けてサヨナラ勝ちを決めた。

▲サヨナラ打を放った高島を迎え入れる青山学院大の選手たち

★試合後コメント
高島翔太(青山学院大)


「打ったのは高めに抜けたチェンジアップ。9回に満塁で凡退していたので、借り返す気持ちでした。いい当たりではなかったので『落ちろ!』と思っていました。公式戦では初めてのサヨナラヒットです。ここまで来たら明日勝つしかないので、全員で一つになって戦いたいです」

斎藤正直監督(専修大)

「いい試合でした。お互いギリギリの勝負でしたね。最後の角田はシンカーを投げ切れませんでした。(福本は)最初の感じだと点を取れるかと思ったんだけど、開き直られちゃいました。もう少し左打者が打てると思ったのですが、どんな負け方でも負けは負けなので、切り替えたい。明日は精神的なスタミナ勝負でしょう」


●泣いても笑っても今季最後の試合

 1勝1敗となり迎えた第3戦目。
 先発マウンドには昨日と同じく岡野と高橋が上がった。岡野は3試合連続先発となった。

 初回、青山学院大は2死走者無しから3連打で1点を先制する。

 しかし、その裏、専修大打線が岡野に襲い掛かる。先頭の重野がセンター前ヒットで出塁すると、伊與田はバントの構えからバスターでレフト前へ安打を運ぶ。スタートを切っていた重野は三塁まで到達し、その送球間に伊與田は二塁をおとしいれた。わずか8球で作り上げた逆転のチャンスに、荒木翔平(4年・横浜高)は初球をライトへ弾き返し、2者をホームに迎え入れ、あっと言う間に逆転に成功。続く濱田、渡辺もヒットで繋ぎ、無死満塁。

 ここで岡野から、前日148球の熱投を見せた福本にスイッチするも、ストライクが入らず、押し出しで3点目。そして、内野ゴロの間に1点、と打者9人の攻撃で一挙4点を奪った。

 青山学院大はその後、1点ずつを返して1点差にまで詰め寄る粘りを見せる。投げては福本が、無安打に抑える好投を続けて味方の援護を待つ。

●試合を決定づけたのは、やはりあの選手

 しかし5回裏、2死三塁と得点圏に走者を背負い、迎える打者は専修大5番の渡辺。今回の入れ替え戦、渡辺の「対福本との成績」は6打数2安打2本塁打。1、2戦ともに勝ち越し、同点アーチと、ここぞという場面での一発を放っている。

 点差を詰められて、1本がほしい場面……。今回もそれとほぼ同じ状況、仲間、そしてファンの期待を一身に受けて渡辺が打席へと入った。カウント1−1からの3球目、渡辺が振り抜いた打球はレフトのポール際へ舞い上がった。打球はポールを巻き、2ランに。6−3と突き放した。

▲3試合連続本塁打と大活躍した渡辺

 追いすがる青山学院大は直後に1点を返し、8回には1死二塁から猪又弘樹(3年・千葉経大付高)がライトの頭を超える二塁打を放つ。しかし、二塁走者はこの当たりにスタートを切れず、ハーフウェイで打球の行方を確認し、落ちてからスタートを切ったため三塁にストップ。結果、この回は得点に至らずに好機を逸した。

 福本は8回、これまで以上に気迫のこもったピッチングで三者三振に斬って取り、9回の攻撃へつなげた。

▲三者三振に抑えて叫ぶ福本。これが大学ラストマウンドとなった

 だが5回からリリーフした専修大・角田がリードをしっかりと守りきり、最後の打者をショートゴロに打ち取って試合が終わった。大歓声に包まれ、専修大の選手たちがマウンド付近で輪になって、4季ぶりの1部復帰の喜びを味わい、敗れた青山学院大の選手は涙するものもあり、2009年秋に降格して以来9季ぶりの2部に沈んだ。

▲歓喜の輪ができ、それぞれに喜びを分かち合う


▲小雨降る中、和やかな雰囲気で写真に収まる選手たち

 打線は専修大を大きく上回るほぼ毎回の15安打を放つがあと一本が出ず。3試合で290球と奮闘した福本はこの日、わずか1安打投球。あの渡辺に打たれた2ランのみだった。

▲試合後に退任を発表した河原井正雄監督


★試合後コメント
斎藤正直監督(専修大)


「初回の集中力は見事で、本当によく頑張りました。ですが4点は棚ボタでしたね。リードしていた感じがまったくありませんでした。荒木のタイムリーと角田が抑えたのが大きかったです。

 10月19日にリーグ戦が終わってからここまで長かったです。4年生がキャプテンを中心によくまとまってくれていました。練習量は負けていないと思いますし、ナイター練習も19時から23時まで、よく頑張りました。素晴らしい選手ですね」

渡辺和哉(専修大)

「ホームランは手応えはありましたが、ポールのギリギリだったので『切れるな』と思いました。流れがどちらにも来ない雰囲気、何とか出塁すれば流れが来るのではと思っていました。リーグ戦中に調子が悪くても使い続けてくれた監督さんに感謝しています。前回はすぐに落ちてしまったので、1からみんなでやっていきたいです。この場所に帰ってこられてよかったです」


■ライタープロフィール
山田沙希子(やまだ・さきこ)/東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速。ナックルボールスタジアム主催のイベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。

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