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「初回に1点を取れば6割、2点を取れば7割が勝てる。」《今回の野球格言》

《今回の野球格言》
・初回に1点を取れば6割、2点を取れば7割が勝てる。
・もともと盗塁は、間に合わないようにできている。
・インコースは死角に入るのが早い。


★球言1


《意味》
 流れのスポーツである野球は、先制点を取ったほうが有利。特に初回の得点は、勝利につながる確率が高い。ただし、1点で6割、2点で7割という数字は、実力が五分五分の場合に限る。

《寸評》
 プロ野球で「初回に得点した」チームの勝率をまとめたデータがある(※28)。阪神の8割ちょうどを筆頭に、11球団が6割3分以上(楽天のみ3割台)。上位7球団に限れば、勝つ確率が6割7分以上と、ほぼ今回の格言を裏づけるような数字となっている。
※28・『データで読む常識をくつがえす野球』(小林信也著、データスタジアム(株)協力/草思社)の2005年データより

《作品》
『ラストイニング』(中原裕、神尾龍、加藤潔/小学館)第5巻より


《解説》
 沖縄合宿の費用を求める彩珠学院・鳩ヶ谷圭輔監督に対し、学校側は強豪・聖母学苑との練習試合を提案。野球部に投資する価値があることを証明するように迫る。

 少ない戦力で金星を狙わざるを得なくなった鳩ヶ谷は、長らくクリーンナップを打ってきた日高直哉を1番に起用。打線に縛られない「0番バッター」として、自由に打たせることを決意する。

 試合開始直前、ベンチの前に並ぶナインたちに鳩ヶ谷は言う。

「今回のオーダーは先制点を取るためのもんだ!! 野球は初回に1点取れば6割!! 2点取れば7割勝てる!! だから絶対に先に点を取るぞ!!」

 鳩ヶ谷のかけたハッパに、真剣な表情で応えるナインたち。

「よし、行ってこい!!」

 オオオオ。一斉に声を挙げ、新生・彩珠学院野球部が整列に向かう。

★球言2

《意味》
 高校野球の場合、速球派の投手は1.3秒前後で捕手にボールが届く。捕手がボールを捕ってから、送球して二塁に到達するまでは2.0〜2.2秒。合計タイムは3.3〜3.5秒。足の速い走者でも、ストレートならば盗塁は間に合わない計算となる。

《寸評》
 計算上、間に合わないはずの盗塁がなぜ成功するのか。投手の制球ミス、捕手のキャッチングミス&送球ミス、走者のギャンブルスタート、打者の援護スイング……。なかでも影響が大きいのが、ストレートと変化球のスピード差。変化球のタイミングを見極めることで、成功率は上昇する。

《作品》
『風光る 〜甲子園〜』(七三太朗、川三番地/講談社)第40巻より


《解説》
 大会最強の呼び声高い関大淀川と、夏の甲子園2回戦で当たってしまった多摩川。4−1とリードした3回裏、関大淀川の8番・桑原をセンター前ヒットで出塁させる。

 無死一塁。走者の桑原は、予選で10個の盗塁を記録した俊足。甲子園でも2つの盗塁を成功させている。

 桑原が持つ「足の理論」は、“ストレートを捨て変化球を狙う”というもの。二塁への盗塁に3.6秒かかる桑原は、多摩川バッテリーが変化球を投げるタイミングを慎重に待つ。

「もともと野球は 盗塁は間に合わんようにでけとる しかしな……」

 桑原の「足の理論」は、世界の盗塁王・福本豊(元阪急)が残した「変化球の時に走るんや」という教えを実践したものだった。

★球言3

《意味》
 外角に比べ、内角に来た球は打者が目を切るタイミングが早い。したがって、打ち気になっている打者に対しては、ストレートに近い軌道で小さく曲がるスライダーなどが有効的。

《寸評》
インコースに1球、ストレートを見せた後、同じコースへスライダーを投げれば、打ち取れる可能性はさらに高くなる。作中では、明訓の里中智−山田太郎バッテリーが、打席でも強気な青田・中西球道の裏をかく形で、この配球を採用した。

《作品》
『大甲子園』(水島新司/秋田書店)文庫版・第8巻より


《解説》
 夢の対決が実現した大甲子園。神奈川代表・明訓と、千葉代表・青田の対決は、予想通りの投手戦へ。

 2回裏、青田の先頭打者は4番・中西球道。1点勝負の突破口を開くべく、左打席に入る。長打を警戒したいこの場面。捕手・山田太郎が選択したボールは、インコースのストレート。投手・里中智が絶好調だと見た上での判断だった。

 意外なボールに手が出ず、見送る中西。続く2球目もボールはインコースへ。今度はすかさず打ちに行くも、中西の手もとでボールが微妙に変化。打者の「死角に入るのが早い」というインコースの特性を利用し、山田がスライダーを要求していたのだった。

 体勢を崩されながらも、強引にピッチャー返しをする中西。ワンバウンドした強烈な打球が、里中の頭部を直撃する。


■ライター・プロフィール
ツクイヨシヒサ/1975年生まれ。野球マンガ評論家。幅広い書籍、雑誌、webなどで活躍。著書に『あだち充は世阿弥である。──秘すれば花、『タッチ』世代の恋愛論』(飛鳥新社)、編著に『ラストイニング 勝利の21か条 ─彩珠学院 甲子園までの軌跡─』(小学館)など。ポッドキャスト「野球マンガ談義 BBCらぼ」(http://bbc-lab.seesaa.net/)好評配信中。

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