週刊野球太郎
中学、高校、プロ・・・すべての野球ファンのための情報サイト

下位指名、低身長も関係ない!社会人時代にスカウトを魅了したプレーでプロでも輝く西野真弘/file#037

 下位に低迷するオリックスで、ひとり気を吐く小さなルーキー。ドラフト7位で入団した西野真弘の活躍は、多くの野球ファンを驚かせた。

社会人がちょうどいい選手だった


 西野を初めて見たのは国際武道大の4年秋。明治神宮大会の予選にあたる関東大学選手権の決勝戦だった。この年の国際武道大は1番・西野から始まり、2番・野中祐也、3番・藤島翔太郎(ともに日立製作所)、4番・長谷川拓真(JR東日本)、5番・友永翔太(日本通運〜中日)と、のちに社会人でもレギュラーになる人材が揃っていた。当時の西野の印象は「確かに足は速いかな」程度。上背がないので「社会人がちょうどいい」という印象だった。

 JR東日本に入ってからも、イメージは変わらなかった。1学年上に同系統の田中広輔(現広島)がいたこともあり、西野の印象は薄かった。田中の鼻っ柱の強いプレースタイルに対して、西野はまとまっている分、インパクトに欠けていた。田中が課題だったスローイングを克服してショートで活躍していたのに比べて、西野がセカンド専門というのもマイナスポイントだった。

 しかし、ある日を境に、西野を見る目が大きく変わった。



4球でダイヤモンドを1周した機動力


 昨年の都市対抗初戦の室蘭シャークス戦で、5回裏1死から西野が死球で出塁した。シャークスのバッテリーは瀬川隼郎(現日本ハム)と井川直人。経験豊富なベテラン左腕と、北海道を代表する俊敏な捕手を相手に、西野は続けざまに盗塁を決めた。初球で二盗、2球目で三盗を成功させ、3球目のサードゴロで本塁に突入した。おそらくゴロゴーのサインが出ていたのだろう。惜しくもホームでタッチアウトになったが、もしかしたら西野の足だけで1点が入っていたかもしれない。ここ一番で勝負をかけられる判断力。堀井哲也監督が仕掛けた一か八かの勝負に乗っていける度胸。この機動力ならプロでも通用するのではないか? ――そんな期待が膨らんだ。


 その後、西野を担当したオリックスの牧田勝吾スカウトに、話を聞く機会に恵まれた。牧田スカウトは、この試合を生では見ていなかったという。それ以前から西野のプレースタイルに惚れ込んで、指名を検討していたらしい。さすがプロのスカウト。目の付けどころが違う。

(西野がいると)「うまいこと野球が回っていきます」


 しかも、西野は開幕から予想をはるかに超える活躍で、セカンドの定位置を奪い取った。交流戦終了時点で49試合に出場し、打率.306で3本塁打。8盗塁は当然として、ここまで打てるとは……。倉本寿彦(日本新薬〜DeNA)、井領雅貴(JX-ENEOS〜中日)と、日本代表で西野より打力があるとされていた左打者が軒並み苦戦する中、十分すぎるくらいの数字を残している。四球も選べているから、文句のつけようがない。


 1軍のある試合で、相手捕手が捕球し損なった隙をついて、西野が二塁に進塁した。盗塁にはならなかったが、記録に残らない好走塁。この場面をテレビで見ていた時、牧田スカウトの言葉が頭に浮かんだ。

「西野はバンバン走れるわけではないですけど、相手にプレッシャーをかけられる『走塁の巧さ』があるんですよ」

 また、牧田スカウトは「こういう細かい足の動きができる選手がひとりいると、うまいこと野球が回っていきます」とも言っていた。

 大型補強が不発に終わり、苦しい戦いが続くオリックス。いまひとつ調子の上がらない大砲候補が多いから、西野の存在は一際輝く。夏場以降も、これまでと同様の活躍を。そして、オリックスが「打線のスケールアップ」を目指して、西野を軽視することのないように願いたい。



■ライター・プロフィール
久保弘毅(くぼ・ひろき)/1971年生まれ、奈良県出身。元アナウンサーという異色の経歴を持つスポーツライター。得意技は実況風ライティング。ハンドボールライターの第一人者でもある。ブログ「手の球日記(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/handjpn/)」

記事タグ
この記事が気に入ったら
お願いします
本誌情報
雑誌最新刊 野球太郎No.32 2019ドラフト直前大特集号 好評発売中
おすすめ特集
2019ドラフト指名選手一覧
2019ドラフト特集
野球太郎ストーリーズ
野球の楽しみ方が変わる!雑誌「野球太郎」の情報サイト
週刊野球太郎会員の方はコチラ
ドコモ・ソフトバンク
ご利用の方
KDDI・auスマートパス
ご利用の方