週刊野球太郎
中学、高校、プロ・・・すべての野球ファンのための情報サイト

《テリー伊藤インタビュー1》長嶋茂雄を思うと、涙が出てくるのはなぜだろう

 テレビ演出家として「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」「ねるとん紅鯨団」など数多くのヒット番組を手がけてきたテリー伊藤がこの春、野球の本を世に放った。

『長嶋茂雄を思うと、涙が出てくるのはなぜだろう』(ポプラ新書)


 実はテリー伊藤、過去にも『お笑いプロ野球殿堂 ダメ監督列伝』『君は長嶋茂雄と死ねるか!』『王さんに抱かれたい』『なぜ日本人は落合博満が嫌いか?』『松井秀喜がダメ監督にならないための55の教え』などなど、数多くの野球関連書を世に送り出してきたことでも有名だ。

 そんな男がなぜ今、改めて長嶋茂雄の本を出したのか? 『週刊野球太郎』スペシャルインタビューとして、長嶋茂雄との思い出、そして今、野球界に思うことを余すことなく語ってもらった。

☆長嶋茂雄に救われ続けたテリー伊藤

「僕の家の表札は、長嶋さんに書いてもらったものなんですよ。2004年に脳梗塞で倒れた後に、左手で『テリー伊藤さんへ』と書いてもらう機会がありまして、その『伊藤』の部分を表札に仕立てたんです。毎日、ミスターの文字を目にすることができるから、元気に過ごすことができていると思います」

 本書においても『天才長嶋の元気が出る表札』として紹介されているエピソードだ。他にも、何かつらいことがあった時は、いつも田園調布の長嶋邸周辺をドライブして英気を養っていたことなど、テリー伊藤の人生において、いかに長嶋茂雄が欠かせなかったかが本書の中で綴られている。

 テリー伊藤は1949年生まれ。長嶋とは14歳差であり、少年時代から既に長嶋茂雄はスターだった。だが、個人的に強く信奉するようになったのは、1968年9月18日の試合がキッカケだったという。

「そのとき、私は大学1年生で、学生運動のデモで目に重傷を負って入院していました。失明するかもしれない、と自暴自棄になりかけていた夜、巨人対阪神の実況中継が聞えてきました」

 その試合の4回、阪神の投手・バッキーが3番の王貞治に対して2球続けて、現在で言う「危険球」となりかねないボールを投じて、両軍入り乱れる大乱闘に。この乱闘劇で、バッキー本人と王の師匠である荒川博コーチの2人が退場。そして試合再開後、バッキーから代わった権藤正利が、いきなり王の頭部に死球を当てて、また大乱闘。立ちあげれない王は担架で病院に運ばれて球場は騒然となる。

「もう、とんでもない騒ぎですよ。そんな状況で、次の打者の長嶋さんはホームランを打ったんです。王さんの無念を長嶋さんがバットで晴らした……そのシーンに遭遇して、僕は涙が出てきたんです。こんな凄いことができるんだ! と。あの時、長嶋さんがホームランを打ったことで、『俺も目がこんな状況だけど、がんばろう!』と本気で思えたんです。それからですね、僕の中で長嶋さんが大きな存在になったのは」


 長嶋茂雄に救われたことがあるからこそ、以降の現役時代はもちろん、監督時代も浪人時代も、そして監督退任後の今も、テリー伊藤は長嶋茂雄に注目し続けてきた。1974年10月14日の長嶋茂雄引退試合、そして、2年前に東京ドームで開催された国民栄誉賞授与式、そのどちらも生観戦した人物は、相当希有な存在であるのは間違いない。ダイエーホークス、王貞治監督との「ON対決」を制し、日本一になった2000年の日本シリーズで、胴上げのときに着ていたユニフォームは、いま、テリー伊藤の手元にあるという。

☆若い世代に長嶋さんを知ってほしい

 そんな当代きっての長嶋茂雄ファン、テリー伊藤だからこそ、本書では独自の「長嶋茂雄解釈」が並んで実に興味深い。

◎長嶋茂雄はディズニーランドである
◎長嶋茂雄は富士山である
◎長嶋茂雄はサンタクロースだった
◎世界一のパワースポットは「長嶋茂雄」だ
◎長嶋茂雄という宗教
etc.

 詳細はぜひ本書を読んで確かめていただきたい。

「この本は、特に、長嶋さんを知らない若い世代に読んでほしいですね。『こんな凄い人物がいたのか』と感じてもらえるはずだし、50年後、100年後にも『あの時代、長嶋茂雄という真っ正面に生きた男がいた』ということを感じてもらえると思うです。僕の人生の集大成でもありますので、オススメしたいですね」

 このように長嶋茂雄を追い続け、巨人を愛し続けてきた男には、今の巨人軍、そして野球界はどう映っているのか。次回からは長嶋茂雄以外のプロ野球についても思う存分語ってもらう。


■プロフィール
テリー伊藤(てりーいとう)/1949年東京都生まれ。早稲田実業中等部、高等部を経て日本大に入学。大学卒業後、テレビ番組制作会社「IVSテレビ」に入社し、『天才たけしの元気が出るテレビ』(日本テレビ系)、『ねるとん紅鯨団』(フジテレビ系)などヒット番組を手掛け、演出家として名を馳せる。その後、ラジオパーソナリティ、コメンテーター、そして、これまで共著も含めて40冊以上を刊行する著作家としても活躍する。最新刊『長嶋茂雄を思うと、涙が出てくるのはなぜだろう』(ポプラ新書)が発売された。

■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」、「AllAbout News Dig」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。近著に『福島のおきて』(泰文堂)。Twitterアカウントは@oguman1977(https://twitter.com/oguman1977)

記事タグ
この記事が気に入ったら
お願いします
本誌情報
雑誌最新刊 野球太郎No.32 2019ドラフト直前大特集号 好評発売中
おすすめ特集
2019ドラフト指名選手一覧
2019ドラフト特集
野球太郎ストーリーズ
野球の楽しみ方が変わる!雑誌「野球太郎」の情報サイト
週刊野球太郎会員の方はコチラ
ドコモ・ソフトバンク
ご利用の方
KDDI・auスマートパス
ご利用の方