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file#019 山内壮馬(投手・中日)の場合

『野球太郎』ライターの方々が注目選手のアマチュア時代を紹介していく形式に変わった『俺はあいつを知ってるぜっ!』
今回の担当ライターは東海地区を駆けまわる尾関雄一朗さんに書いていただきました!
前回は昨シーズン、新人ながらも大活躍した田島慎二(東海学園大→中日)のアマチュア時代を振り返ってもらいましたが、今回も昨年活躍した、この中日の投手の大学時代に迫ります!


◎空想「模擬ドラフト」で1位指名
 冒頭から個人的な話で恐縮なのだが、つい数年前まで、自分の中だけでの「模擬ドラフト」を毎年挙行していた。「模擬ドラフト」自体はよく聞くが、私の場合、指名予想ではなく「プロ13球団目」として当日のドラフト会議に「参加」するという、完全なる妄想ストーリーを前提としたもの。ちなみに、筆者はその頃まだ大学生。現在のように取材者ではなく、一ファンとして楽しんでいた。指名はウエーバー制に則って進めた。
 「13球団目」が指名できるのは、球場で生で観た選手に限っていたので(独自ルール)、岐阜県で暮らす筆者の「指名候補リスト」はほぼ東海エリアの選手が占めたが、2007年の大学・社会人ドラフトで1位指名申し上げたのが、今回取り上げる山内壮馬(名城大→中日)だ。長谷部康平(愛知工業大→楽天)大場翔太(東洋大→ソフトバンク)も生で観ていたが、単独で山内にいかせてもらった。




◎大学1年:若々しくフレッシュなストレート
 山内をはじめて見たのは2004年秋、彼がまだ大学1年のときだ。印象に残ったのは、ビュンビュン走るストレート。全身を使って、体が前方に乗っていくので、勢いよく球が伸び、力で押していくに足る球威があった。19歳らしいフレッシュさが目を引いたピッチャーだった。
 今27歳になった山内は、プロでほとんどストレートを投げないと評判で、三振をとらないピッチング(2012年は148回を投げ68奪三振)だ。だが、前述のように大学の下級生時はスピード感あるストレートが魅力的だったし、2年春のリーグ戦で38回2/3を投げ34奪三振という数字を残している。実力ある大学生ならその成績も当然に思えるが、一学年先輩の清水昭信(名城大→中日)はそのシーズンで41回29奪三振だったから、山内は十分に三振がとれるピッチャーだと言える。



◎大学4年:何色もの変化球を操るセンス
 それが4年生になって、投球の「総合力」が俄然、光りだした。そしてこの総合力こそ、筆者が模擬ドラフトで1位指名した決め手だ。
 多彩な変化球。これが素晴らしかった。
 タテに急落下するフォークのようなスライダーは二重丸評価の好球種だったし、その他にも横のスライダーにカーブ、チェンジアップ。同年春に覚えたカットボールと何色も操った。視察に訪れていたセ・リーグ球団の某スカウトが「スライダーが2種類あるからね、それにカットボールもある。パッと見ただけでは、(打者は)それらが分からないんだよ」と教えてくれた。
 ジャンルとしては「オーソドックスな右の本格派」なのたが、オーバースローでありながらタテにも横にも自在に変化球を駆使する投手は、この頃の大学生右腕では(少なくとも東海地区では)あまりいなかった。愛知大学リーグでは一学年上に深町亮介(中京大→08年まで巨人)浅尾拓也(日本福祉大→中日)、前述の清水とメンツは揃っていたが、みなストレートが武器で、変化球は定番のスライダーかフォークを一つ二つ混ぜる程度だった。
 ストレートが速く、かつ何色もの変化球がある。こういう投手はきっと安定して成績を残してくれるはず、そんな思いで「13球団目」は山内をドラ1にした。
 個々の変化球のレベルだけでなく、球を低めに集め、打たせて取っていたのも高ポイントだった。もちろん、フォークと見間違う縦スラで2ケタ奪三振も記録したが、小気味よいストレートは見せ球にとどめ、変化球で料理する(決して「頼る」のではない)センスがよかった。



◎大学での進化過程をプロでも
 大学4年目までに総合力と自在性を不動の軸とした山内。プロでも、入団当初は「最速147キロ右腕」の触れ込みだったが、4年が経過する中で同じように総合力を高めていった。この進化は、大学時代のそれとよく似ている。
 球速は学生時代から10キロ近く落ちたというが、それは山内に限らず、よくある話である。ただ山内が他の“元本格派”と異なるのは、「多彩」を地でいけるセンスが特筆モノだったことだ。
 そういえば山内は、筆者の架空ドラフトのみならず、実世界のドラフトでも1位指名(外れ1位)だった。1位の割に、地元でも案外まだまだ地味な存在だが、昨年のような好投(10勝7敗、防御率2.43)を継続してアピールして欲しい。投球スタイルは地味でも、存在が派手になる日は近いだろう。



文=尾関 雄一朗(おぜき・ゆういちろう)/1984年生まれ、岐阜県出身。新聞記者を経て、現在は東海圏の高校、大学、社会人を精力的に取材。昨年は濱田達郎投手(愛工大名電高→中日)らを熱心に追い続けた。

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