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“捕手・森友哉”はどうだ。長所を伸ばして短所を補う育成法で“打てる捕手”へ成長の軌跡を追う

文=森田真悟

“捕手・森友哉”はどうだ。長所を伸ばして短所を補う育成法で“打てる捕手”へ成長の軌跡を追う
 古田敦也(元ヤクルト)や城島健司(元マリナーズほか)らの引退により、絶滅の危機にさらされた「打てる捕手」。そこに綺羅星のごとく現れたのが森友哉(西武)である。

 歴代の名捕手からバトンを受け継ぎ、次世代につなぐ役割を求められた若獅子は、プロ入り6年でどんな成長曲線を描いたのか。改めてその軌跡をたどってみたい。

過去の経験を糧にした球団の舵取り


 「ボールをとらえる能力は歴代一」。森の母校・大阪桐蔭(大阪)の西谷浩一監督の証言にあるように、プロ入り前から評判だった打撃力。「打てる捕手」の出現を望んでいた野球界にとっては、これ以上ない素材として森は檜舞台に登場した。

 入団当時の西武は炭谷銀仁朗(巨人)が正捕手として君臨していたが、1年目の2014年から捕手として24試合に出場。これだけでも期待の高さがうかがえるが、打撃面でもしっかりと期待に応えて41試合で打率.275、6本塁打を記録した。

 素材のよさもさることながら、半年間2軍プロの水に慣れさせた西武の育成法が功を奏したとも言える。そこには早期の1軍帯同で炭谷の打撃力をスポイルしてしまった過去も多分に影響しているはず。炭谷には申し訳ないが、同じ轍を踏まなかった球団は評価したい。

長所を消さずに短所を克服


 2年目から“捕手・森”がどのような起用をされるのか。やはり炭谷の壁は厚く、森は打撃を生かした指名打者生活に突入。外野を始めたときは、高木大成や和田一浩よろしく西武特有の「打てる捕手のコンバート」の波にさらされたかと思った。

 しかし、結果としてはこの雌伏の時期がうまく作用したように感じる。リードはもとよりキャッチング、投手とのコミュニケーションといった守備面の課題が明らかだったため、不安を抱えながら人気先行で捕手起用されていたらさすがの森でも困惑しただろう。

 試合で持ち前の打棒を発揮し、練習でコツコツと捕手の技術を磨く。この棲み分けで土台を作ってきたことが、今の伸びにつながっていると見る。好素材を活かすも殺すも球団次第。欠点を補う猶予は与えるべきと、あらためて選手ファーストの重要性を痛感させる育成方針だった。

才能と育成法が見事に融合


 辻発彦監督が就任した2017年は“捕手・森”の元年にもなるはずだったが、WBC強化試合のキューバ戦受けた死球で左ヒジを骨折。シーズンに出遅れたことから捕手としての本格起用は2018年に持ち越しとなった。

 西武ファンの筆者にとっては残念でならなかったが、再び冷静に試合を眺める時間がもたらされたのが幸いしたか、2018年には捕手としてチーム最多の81試合に出場。打者としては136試合で打率.275、16本塁打、80打点という成績を叩き出すまでに成長。盗塁阻止率.373を記録しベストナインに選出されるなど大輪が開花した年となった。

 森のポテンシャルからすると不思議のない成績ではあるが、短所を補いながら長所も伸ばすことができた稀有な事例だけに素質だけで片づけたくないところ。結果的に5カ年計画となったが、長期的視野がないと人は育たないということがよくわかった。

新たに幕を開ける金獅子の物語


 炭谷がチームを去った今シーズンは休みをはさみながら94試合に出場し、打率.333、14本塁打、66打点(8月7日現在)と打撃主要部門のキャリアハイを更新するペースで打ちまくっている。打率に至っては自己最高どころか目下の首位打者なので、いよいよタイトルに手が届くところまできた。

 ディフェンス面に関しては現時点で昨季より防御率が悪化しているが、なかなか思い通りのところに投げてくれない投手陣の問題もあるので、森のリードだけを引き合いに出して論じるのは難しい。

 性格的に「投手を育てる捕手」になるかどうかはわからないが、元来は強気な選手であるので投手陣をグイグイと引っ張っていく存在になるだろう。守備面の評価を下すのはもう少し先でいい。

 森のプロ生活5年半は前評判からすると少し物足りなく映るかもしれない。しかし、成長の軌跡を整理するとしっかりと成長していることがうかがえる。8月8日でまだ24歳になったばかりの若獅子は、これからの選手人生でどんな捕手になっていくのか。興味は尽きない。

文=森田真悟(もりた・しんご)

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