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打順や体に騙されるな?滞空時間からスイングが鋭い選手をストップウオッチャーが発掘!

■今年の甲子園は滞空時間が熱い!

 この夏は打球が高く舞い上がる──。

 開会が2日遅れるという異例の日程となったあとも、ぐずついた天気が比較的多い甲子園。そのせいだろうか? 今年は上がった打球がなかなか落下しないケースが例年よりも多い印象だ。

 そうなれば……ということで、「炎のストップウオッチャー」としては滞空時間を測らずにはいられない! 2014年夏の甲子園一発目は、打者が投球をバットに当てた瞬間から野手が捕球するまで、あるいは地面に落下する瞬間までの「滞空時間」をテーマとして、測定結果の分析をしていこう。

■強打者の「聖域」6秒以上を記録したのは21選手

 今回の測定は、各チームの初戦1試合のみで行った。以下が、打球の速い選手だけが到達できる「聖域」としている6秒以上の滞空時間を記録した選手たちである。滞空時間の長い順に並べた。打球数にして22本。宮沢一成(東邦)だけ2本記録しているので、総勢21名ということになる。結構な数だ。



 今年の前半戦は、ライトからのレフトに吹く甲子園独特の浜風が特に強い日があり、6秒超えの聖域タイムが多く出ていることに繋がっていると思われる。

 ただ、筆者はもう1つ理由があると見ている。実は、今大会は何気に打線を看板とするチームが結構あり、「全体的に打球スピードが速い選手が多い」という見方だ。というのも、この22ケースのうち、各チームの4番打者が記録したのは、宮沢一成(東邦)、岡田耕太(敦賀気比)、池田成輝(開星)、平湯蒼藍(海星)の4人、5ケースしかないのだ。この裾野を3、5番含めたクリーンアップに広げても、11ケースで半数にしかならない。

 ちなみに、今回、6秒どころか7秒超えで栄えある最長滞空時間を記録した久保山海斗(東海大望洋)の打順はなんと8番。また、14位タイの笹治健汰(近江)も9番ながら聖域に到達している。

▲笹治健汰(近江)


■下位打者の聖域タイムの多さが打力の高さを物語る

 ただ、筆者は東京在住で、今年の高校野球の取材は東西東京、埼玉、千葉を担当していたので、久保山が1位になった“からくり”については説明できる。彼は昨秋〜今春のはじめにかけてはクリーンアップを打っており、その長打力は当初から評価されていた。一度、練習時の紅白戦でライトに本塁打を打った姿を見たことがあるが、この時は真ん中付近の甘いコースながらライトポール際に運ぶ「切れない打球」を放っていたほどだった。

 ところが、この春に見たときには、なぜか極端に外回りのスイングに変貌しており、投球の見切りが早く、ボールになる変化球をことごとく空振りする姿が目立った。そして、夏の大会に入っても不調から脱出する気配はなく、打順は8番が指定席となり、途中交代も多くなってしまった。そう考えると、いわゆる「弱々しい」とイメージしがちな8番打者とはかけ離れた存在ではあるのだ。もっとも、ここでは立派な1位だけど、世間的な結果は、もっとも非難されやすい単なるキャッチャーファウルフライではあるのだが…。

 これは、9位の秦匠太朗(二松学舎大付)にも言えることで、現在6番を打っている秦の通算本塁打は大会までで56本。57本目をこの甲子園で打っている。当然、彼も4番を任された時期はあったが、同じく外回りのスイングで厳しくインサイドを攻められると対応できない弱点があり、この夏は力を発揮できぬまま6番に成り下がっているのが現状だ。2人とも滞空時間の数字が示すように、打球スピードについては群を抜くものがあるのは間違いない。技術さえ身につければ大変な打者になれる可能性があるので、この先も頑張ってもらいたい。

▲秦匠太朗(二松学舎大付)


 また、この他の分析として、神戸国際大付、敦賀気比、近江ではそれぞれ2人の選手が聖域超えを記録。打撃を看板とするチームに恥じない強打者揃いぶりを示している。

■滞空時間で新たな選手の発掘を

 今回の測定で少し残念だったのは、大会前から注目されていた岡本真也(智辯学園)、清水優心、古澤勝吾(ともに九州国際大付)、打撃でも評判が高い松本裕樹(盛岡大付)といった面々のデータが取れなかったことだ。

 理由は単純で、高く上がった打球を打たなかったから(笑)。この測定による分析の一番の弱点ではあるのだが、よく考えたら上記の有望選手は、別に改めて滞空時間を確認するまでもなく、素晴らしい選手であることは、誰の目ににも明らかだから、まあ、いいだろう。むしろ、この記事を読んで、新たな選手の発見につなげてもらえれば幸いだ。


■プロフィール
文=キビタキビオ/1971年生まれ、東京都出身。野球に関するありとあらゆる数値を測りまくる「炎のストップウオッチャー」として活動中。ライター活動の傍ら、2013年には『ザ・データマン〜スポーツの真実は数字にあり〜』(NHK-BS)に出演するなど、活躍の場を広げている。

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