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《セイバーメトリクスで読み解く日本シリーズ》ディフェンス面は充実した投手陣を誇るソフトバンクが優勢!

【この記事の読みどころ】
・投手陣が踏ん張って優勝したヤクルトだが、遥かに凌ぐ陣容で連覇に貢献したソフトバンク投手陣
・ただ、ホーム球場の大きさもあって被本塁打数は両チームとも多め
・高レベルの守備陣から流れを引き込む可能性もあるぞ!

☆ずば抜けていたソフトバンクのディフェンス

 ファイナルステージでは、ソフトバンクは3試合で4失点、ヤクルトは4試合で6失点。ロッテと巨人という守備型のチームが相手だったのもあるが、どちらもよく守った。しかし、シーズンにおいてはソフトバンクとヤクルトの投球と守備によるディフェンス力にはかなりの差があった。

 とにかくソフトバンクのディフェンスはずば抜けている。失点率(9イニング当たりの失点)は3.40点でリーグ平均の85.9%。他の5球団を置き去りにしている。

 K/9(9イニング換算した奪三振数)、BB/9(同四球数)はどちらもリーグトップ。三振をリーグ平均の約10%増しで奪い、四球を約8%少なく抑えている。

 K/9については、先発投手ではバンデンハーク(11.61)、武田翔太(8.91)、中田賢一(7.53)などが、リリーフではサファテ(14.20)、五十嵐亮太(10.21)、森唯斗(9.85)などが高い数字を記録している。BB/9は、先発では寺原隼人(2.04)、バンデンハーク(2.13)、リリーフは森(1.49)などが好値を記録している。

 言うまでもないが、三振を奪い、四球が少ないことは安定したピッチングのベースとなる。このベースの部分で、ソフトバンクは他球団に対し、かなりのアドバンテージを築いていた。


 対するヤクルトは、投手陣を立て直して、2年連続最下位からのリーグ優勝を成し遂げたものの、投手力を数字で表すと厳しい面がうかがえる。

 失点率は3.66で平均レベル。昨年、一昨年からは改善されているが、三振はあまり奪えていない。K/9は6.61とセ・リーグで最も低かった。四球も少ないわけではなく、BB/9は3.03で、セ・リーグで4番目。5番目の阪神、6番目のDeNAは三振を奪っていく代償としての四球増であるようにも見えるが、ヤクルトは三振と四球のどちらの数字も伸び悩んでいた。

☆本塁打の出やすい球場でしっかり本塁打で得点できるか

 もうひとつ、失点と関連する数字である被本塁打数については、狭い球場を本拠地としている両チームだけあって数字はよくない。1試合当たりの被本塁打(HR/9)は、どちらもリーグ下位だった。

 ただし、フェンス際のフライがスタンドインするかどうかなどランダムな部分、運に左右される結果もあり、これらの数字に投手の実力がそのまま表れているとは言い切れない。さらに、決戦期間の短さともあわせて、シリーズのパフォーマンスとは結びつけにくいところもあるが、ある程度、本塁打は打たれていた事実は事実としてとらえておくべきか。もっとも、走者を溜めたところでの一発には気をつけたい。

 守備の状況をある程度つかむことができる、本塁打を除く打球をアウトにした割合となるDER(Defense Efficiency Ratio)はソフトバンクが.710でリーグ1位。ヤクルトは.702で3位とともによい。投手陣に対する守備のバックアップは、どちらのチームも効いている。

 通常なら高い確率でヒットになるゾーンに飛んだ打球がアウトにしてしまうようなプレーは、失点を減らす上で重要だ。ただ、打球がどこに飛ぶか、ということには野手の能力は及ばない。短い期間の戦いだと、うまい野手をそろえてもファインプレーが確実に増えるとは限らないが、そうしたプレーがどう出るかで、統計上の力関係とは逆の結果が出ることもある。

▲FAで今季より加入した大引啓次。派手さはないが、安定した守備で内野陣を引き締め、投手に安心感を与えた。

 オフェンスではほぼ対等、ディフェンスではソフトバンク。ソフトバンクが有利に映るが、ヤクルト打線がパ・リーグを制した強力なソフトバンク投手陣を打ち砕くほど爆発し、投手力の不利を守りでカバーする戦いで対抗していけば、先に4勝するケースも十分ありそうだ。


文=秋山健一郎(あきやま・けんいちろう)
1978年生まれ、東京都出身。編集者。担当書籍に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクスリポート1〜3 』(デルタ、水曜社)など。

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