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丸佳浩がFA流出でも広島人気は衰えず。マツダスタジアム「チケットがとれない問題」を考える

文=井上智博

丸佳浩がFA流出でも広島人気は衰えず。マツダスタジアム「チケットがとれない問題」を考える
 3月1日、マツダスタジアムにて広島戦のチケットが一般販売された。リーグ3連覇を達成し人気、実力ともに充実している広島の観戦チケットは数年前から入手困難となっている。

 そのため、発売当日のコンビニ端末の前には列ができるなど大騒ぎ。SNS上ではチケットを獲得できたファンの歓声と、獲得できなかったファンの悲鳴が交差するなど、近年高まるチケット争奪戦の激しさを物語った。

 とにかく、かつてないほど入手困難となっているマツダスタジアムのチケット。現在の活況は、筆者を含めた低迷期を知るファンにとって嬉しい反面、チケットを巡る問題が多発しているのは考えものだ。今回は広島が抱える「チケットが取れない問題」の現状と、今後の行方を考察してみたい。

「チケット取れない問題」のきっかけは黒田博樹!?


 まず、広島の本拠地・マツダスタジアムのここ10年の平均入場者数とトピックスを見てみよう。

■2009年からのマツダスタジアム平均入場者数とトピックス
2009年:26,015人
2010年:22,224人/野村謙二郎監督就任
2011年:21,980人
2012年:22,079人
2013年:21,744人/CS初出場
2014年:26,455人/CS2年連続出場
2015年:29,722人/黒田博樹復帰、緒方孝市監督就任
2016年:29,963人/25年ぶりのリーグ優勝
2017年:30,670人/リーグ連覇
2018年:31,001人/リーグ3連覇

 カープ女子の盛り上がり、2013年から2年続けてのCS出場などで火がついた人気が、2015年の黒田博樹の復帰したことで一気に爆発した。その頃から、チケットの入手が難しくなってきたと思われる。

 その後、2016年からのリーグ3連覇で不動の人気を得るなか、2018年には平均観客動員数が過去最多の31,001人まで増加。収容人数33,000人のスタジアムでこの動員数、しかもビジター応援席があっての数字だと考えると、いかに凄いことかわかるだろう。

全国に知らしめたチケット争奪の大混乱


 ほぼ全ての試合が満員となるマツダスタジアム。ますますチケットの入手が難しくなってきた近年では、発売の1カ月前からファンがテントを張り、順番待ちをすることが当たり前の風景に。ときには順番待ちの列を巡ってケンカが起きたり、転売目的で一度に数百万円分のチケットを購入する者まで現れるなど問題が表面化した。

 その対策として、球団は今年から従来の先着順に代わり、購入に必要な抽選券を配布。当選者から購入できる新方式を採用した。

 ところが、よかれと思った策が裏目に出てしまう。2月25日の抽選券配布日には想定の2万人をはるかに上回る5万人のファンが殺到。周囲は大混乱に陥り、配布を途中で打ち切る事態となってしまった。

 このパニックぶりは広島のみならず全国ニュースで取り上げられ、あらためて「マツダスタジアムのチケットが取れない問題」が大きな注目を浴びてしまった。

根底にあるのはファンを思う気持ち。球団を信じよう


 抽選券を配布した今回の一件に限らず広島は、年間全ての試合のチケットを一斉販売する方式や、1試合の購入枚数の制限をなくすなど、独特な販売方式を取っている。これは、転売対策に有利に働いていると見られる一方で、ファンからは改善を求める声が続出している。

 そんなファンの声に対する球団の見解は、筆者が調べたところ以下の通りだ。

1.なぜ一斉販売を続けるのか?
「1997年に『売るチケットがあるんだったら、1回並んで全部買わせてほしい』という要望があったから」

2.無制限の購入について
「地域に密着する球団なので、地元のコミュニティ、子供会や町内会の人たちに買いやすいような形を残したい」

 一斉販売について事情はわかるのだが、ただ1997年と今では人気度合いも違う。しかも、当時の広島市民球場からマツダスタジアムになり球場自体の人気も上昇している。

 また購入枚数の無制限も現状の人気を考えると、町内会のためと言うよりは、むしろ組織的な転売を阻止するためでは……? と、思わずツッコミたくなる見解にも思える。そこにはファンの要望と球団の対応にギャップがあるように感じられなくもない。

 しかし、不人気の時代を支えてくれた昔からのファンや、地元の町内会のファンを大事にしたい。その心意気は伝わってくる。市民球団である広島らしさが滲み出ている考えでもある。

 今から7年ほど前、こんなエピソードがあった。ある少年ファンが、正規品ではラインナップされていない選手の子供用ユニフォームを欲しがった。少年の父親は、無理を承知で球団にその選手の子供用ユニフォームを作ってくれないか頼んでみる。

 すると、球団は願いを快く受け入れ、少年のためにその選手のユニフォームを特別に作ったのだ。

 今ほどの人気が無かった頃とはいえ、いちファンの願いに応えてくれる球団なんて滅多にあるものではない。そんなファンを大事にする姿勢こそが、今日の人気を生んだ要因であるはずだ。

 これまで幾多の騒動や、様々なチケット問題にフラストレーションを抱え、がっかりしたことがあるファンもいることだろう。
 しかし、試行錯誤しながらも根底にあるのはファンを思ってよかれと思ってのこと。その愛情にブレは感じられない。チケットを巡って頭にくるファンがいる気持ちは理解できるが、今一度、カープを信じてみてはいかがだろうか?

 とはいえ、悩ましいチケット問題をこのままにしていては、ややもするとファンが離れていく原因になるだろう。月毎のチケット販売や、ネット販売の強化、リセール制度で転売対策をするなど、変革が必要とされる(筆者がいうまでもなく、思案・検討されていると思うが……)。

 マツダスタジアムは日本一のボールパークを目指して作られ、チームは再びの黄金期を迎えた。皆が笑顔で訪れる真の意味でのボールパークというさらなる高みを目指して、来季以降、チケット問題もより改善してると信じて、カープを応援していきたい。

文=井上智博(いのうえ・ともひろ)

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