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18年ぶりに3部優勝を果たした学習院大学!2部昇格を狙った入替戦で学んだものとは?

☆3部の雄・学習院大、18年ぶりの優勝

 18年ぶりの3部優勝を果たした学習院大学。3季連続Bクラスが続いていた今春、勝てば優勝に近づく大一番で2戦連続逆転負けを喫した。
 投手の柱は原征汰(4年・所沢北高)と佐藤翔吾(3年・桜美林高)。ともに下級生時からの経験豊富なピッチャーで、今春の防御率はともに1点台と、3部トップクラスの実力と言っても過言ではない。チームメートも「入れ替え戦を戦うとなれば、うちほど投手陣が揃っているところはない」と胸を張る。


▲先発に抑えにフル回転した原征汰

 そして今秋、リーグ最終カードは前季優勝の順天堂大。ともに勝ち点を取れば優勝という戦いの中、初戦を4年生エースの原が完投勝利。味方が奪った先制点を守り切った。翌日は佐藤が一時は逆転を許しながらも粘り強いピッチングで勝利。18年ぶりとなる3部優勝を決めた。それから約1週間後の表彰式では、4番の原山堅太郎(3年・東海大翔洋高)が首位打者を、原征汰がMVP受賞した。


原「僕一人じゃなくてチームもらったと思っているので、代表として受け取っただけです。入れ替え戦も粘り強くやりたいです」

田中雄弥主将「一つになって相手に向かっていけた結果です。2部昇格までが目標なので、優勝しても雰囲気は変わらずに、入れ替え戦に切り替えています。失うものはないので、出せるものを出していきたい。国士舘に勝ちたいです」

☆そして入れ替え戦へ――

 2007年春に入れ替わって以降、ともに残留が続いている2部と3部。学習院大は2部最下位の国士舘と対戦。

 先発のマウンドを託されたのは原。開幕当初は抑えを務めていたが、優勝のためにはもう1敗も許されないといった状況で先発に復帰していた。一方、国士舘大は注目投手の武内頌太(3年・丸亀城西高)が託された。

 初回、原は2つの四球とヒットで1死満塁のピンチを招くが、連続三振で切り抜けた。その裏、学習院大は先頭の益田大貴(2年・国士舘高)が内野安打で出塁。益田は高校3年夏、西東京大会ベスト4進出時のメンバーである。だが、大学卒業後のことも考えて、一般受験の道を選んだ。「引退後は勉強ばかりやっていたので、視力が2.0から0.5くらいまで落ちました」と言うほどの猛勉強だった。そしてかつてのチームメートも在籍する国士舘大相手に、いきなり存在を見せつけた。


▲1番打者を任される益田は俊足が武器

 犠打で1死一塁とし、続く3番の田中がセンター前へ運ぶ。ピンチの後にチャンスあり。学習院大が絶好の機会を迎えた。打席に向かうのは4番の原山。夏に行われた交流戦ではホームランを記録しているバッターだ。

 だが武内に全く合わずに空振り三振。続く打者もセカンドフライに倒れて逸した。その裏、2死二塁からタイムリーを2本浴びて国士舘大に先制を許した。3、4回は三者凡退で終えるが6回を投げて6失点で原は降板。一方の打撃陣も3回以降はなかなか走者を出せず、0-7で初戦を落とした。


▲好守を連発した梶原二聖(かじはら・にせい)

☆あまりにも高かった2部昇格の壁

 翌2回戦のマウンドは当然、佐藤に託された。だが制球に苦しみ、ヒットと四球で2死満塁のピンチを迎える。前日同様、ピンチは脱したが、2回に先制点を献上。その後、0-1のままゲームは進むが6回、先頭打者に二塁打を打たれた頃、佐藤は足がつった感覚を覚えた。


▲最速142キロを誇る佐藤

「投げているときは気にならなかったんですが、一球投げ終わるごとに痛みを感じました」

 犠打の後、死球と4連打を浴びて途中交代を余儀なくされた。後を受けた投手も国士舘大の勢いを止められずにこの回一挙7失点。0-8と試合の行方が大方、決まったようにも見えた。

 この日の学習院大打線も、走者は出すものの6回以降は得点圏に進められず。一方的な展開になってしまったが、7回からは原がマウンドに立った。前日、129球の熱闘を見せた右腕。大学ラスト登板になろうかというピッチングは、非常に力がこもっていた。

 2者連続三振の後、二塁打こそ許すが見逃し三振で切り抜ける。続く8回は三者連続三振とその力を見せつけた。全く相手を寄せ付けない、静かながら気迫が伝わってくる“エースの姿”だった。

 学習院大は2試合連続完封負けで全日程を終えた。幾度も口にしていた2部昇格の壁は、あまりにも高かった。


▲保護者など多くの観客に見守られた入替戦

田中主将「スタンドから観戦しているのと試合をするのでは印象が違いました。全てのレベルがかなり高かったです。ただ、投手に関しては自分のピッチングができればある程度は抑えられました。バッターはヒットを打てても打線を切られてしまった。思ったよりも厚い壁でした。来年以降にこの経験を生かしてほしい」

佐藤「勝てばもう1試合、4年生とできたのですが…。今までリーグ戦でやってきたことを生かして、5回までは抑えられました。実力の差が結構あって、やらなければ見えないことがありました。今までやってきたことを全否定されたような感覚です。練習も180度変えなければいけないと思います。今回の試合を来年に生かさないといけないですね。春と秋のリーグ優勝はもちろん、4年生の分も2部にやり返さないといけない」


 試合後、長いミーティングを終えて制服に着替えて球場を後にした選手たち。いわゆる野球推薦枠がないなかで2部のチームと戦うことは、実力的に厳しいことも事実。だが諦めていては叶わないからこそ口にしていた『2部昇格』という目標。実際に試合をし、その目標はたやすく口にできるものではなくなった。


▲18年ぶり3部優勝を果たした学習院大。2部昇格の挑戦は続く

 この悔しさをスタートに、新たなチームが出発する。4年生の思いも背負って、リベンジの機会を再び掴む春をどう迎えるのだろうか。期待を込めて待ち望みたい。


文=山田沙希子(やまだ・さきこ)
東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速中。イベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。

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