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【Special Interview】 半世紀にわたる北広島・野球人の夢。日本ハムの本拠地移転を市長、企画財政部長、市議に訊く!(前編)

取材・文=長壁明

半世紀にわたる北広島・野球人の夢。日本ハムの本拠地移転を市長、企画財政部長、市議に訊く!(前編)
 北海道日本ハムファイターズが北海道にやってきて15年の歳月が過ぎた。そして5年後の2023年開業予定の新球場を北広島市に建設することが決まった。
 予定通りであれば2023年のシーズンから本拠地を札幌市から北広島市に移転し、新たな歴史を刻み始めることになる。このことはプロ球団が人口190万の大都市から人口6万人の隣町への移転という、画期的な構想を実現するために動き始めていることを意味している。

古きよき「北の甲子園」ノスタルジー


 北海道日本ハムファイターズの本拠地誘致が話題になっていた頃、ふと脳裏をよぎる風景があった。懐かしいその風景はおよそ40年前のこと。

 札幌中島球場―

 中島球場の記憶は少年時代の思い出も含め色々な意味で鮮烈だ。

 立地を地下鉄の駅で説明すれば歓楽街「すすきの」の隣駅。遊園地、大きな池でボートも楽しめ、プロレスもやってくる体育センターに野球場。ファウルボールはごく普通に場外へ飛び出し、場所柄、路上駐車中の外国車を含む多くの高級車を直撃するトラブルも頻発。老朽化は子どもの目にもひどかった。

 しかし、小学校の遠足で訪れると、遠くからでも歓声と乾いた金属音が響き、近くの繁華街から漂う独特の空気感にもワクワクした。高校野球の大会が始まると自転車で中島球場へ通った時間はちょっとした小冒険で、私の少年時代に「ボールパーク」は確かに存在した。

 その札幌中島球場が閉場、解体されたのが1980(昭和55)年、筆者が小学校6年の夏。現在、札幌には公共交通機関で来場可能で、有料入場者を集めて大会を開催できる硬式野球場は札幌ドームを含めて3つだけ。札幌ドームは札幌市の第三セクターが運営という面から費用面を含めて使い勝手が悪く、アマチュア大会は実質2球場で各野球団体が熾烈な「調整会議」を経て、日程を決めている実情がある。少年野球、中学、高校、大学、社会人野球、すべてのアマチュア野球が集結、超過密スケジュールを余儀なくされ、それぞれの大会が綱渡り状態で運営されている。

 少し長くなったがプロ野球の球団に「出て行かれる側」の札幌市民である、私なりのボールパーク慕情と札幌市近郊の球場事情を最初に紹介させていただいた。

行政、議会、そして市長―強固なチーム構成


 BP構想(ベースボールパーク構想)から候補地決定において、北広島市と札幌市の決定的な違いは何だったのか。私は北広島市の行政、議会、そして首長とキーマンすべてが野球経験者だったことを挙げたい。

 この3月に70歳になった上野正三市長。2005年の初当選以来、4期・14年目の実績は市民から絶大な信任があることがわかる。旧広島町役場(現北広島市)の野球部では選手、監督として活躍。以前は北広島の少年野球チームの監督まで務めていたほどの野球人。

 島崎圭介北広島市議は1期・3年目、そして6月で47歳を迎える若手市議。広島町に生まれ育った野球少年は本格派右腕として北海高、北海学園大、NTT北海道で活躍、その後、高校の保健体育教諭、野球部監督を歴任、医療法人の役員を経て「ふるさとの力になりたい」と2015年4月に北広島市議選に出馬し当選を果たした。

 北広島市企画財政部・川村裕樹部長。「BP構想」行政側のキーマンで、2016年5月にBP構想が表面化して以降、各メディアに対応してきた。「まちづくり」とそれにともなう財政をつかさどり、都市計画に落とし込んでいく部署の責任者。そして30年前、1988(昭和63)年夏、南北海道代表として甲子園に出場した札幌開成高(現・札幌開成中等教育)の4番打者なのだ。長男は大学、次男は高校で野球に取り組んでいる。

島崎圭介北広島市市議会議員 島崎圭介北広島市市議会議員
現在も激務の合間を縫い、母校・北海学園大野球部の助監督を務めるなど、野球を通して若者の人間形成に力を注いでいる

およそ半世紀、先人が描いた夢よ今


 島崎市議は出馬前から札幌市近郊の球場不足を憂い、その解消のために1970(昭和45)年に整備方針が発表されながら40年以上も先送りされてきた37ヘクタールもの広大な「きたひろしま総合運動公園」構想に関心を寄せていた。

 先送りの理由は財政難や優先順位の低さ。予定地に隣接する北広島高が1978年に開校したことなどはその象徴だろう。

 大きかったのは島崎氏が市議として実際に議会に参加したことで「スポーツよりもやるべきことがある」という発想が、議会に根強くあることが長年実現しない理由だと理解したことだ。

 また、川村部長が企画財政部に異動したのは30代前半。係員だった川村氏が部長になるほどの歳月が流れた。それでも印象深いのは川村部長が語ってくれた「きたひろしま総合運動公園」の話だ。

「札幌に隣接する、あれほど広大な土地(候補地)なので、なにかすごいことに活用できるとずっと思っていました。上野市長もスポーツが大好きで、スポーツを通じて住民に還元できるような仕組みを考えろ、というのが大命題。そこで、最初に頭をよぎったのがプロ球団(日本ハム)の影響力の大きさ。せっかく日本ハムが近くにいるのだから、私たちも関われないか、というのが原点です。といっても2軍戦ができないか、とか練習拠点にはどうか、ということからのスタートでした」

 上野正三北広島市長、北広島市企画財政部・川村裕樹部長、島崎圭介北広島市議。北広島市には市議会にも行政にも熱い野球人がいた。そして何よりもトップである首長が熱かった。後編では、上野正三北広島市長の話も交えてBP構想表面化までの水面下での動き、そして公表されて、わずか1カ月ほどで新球場候補地に名乗りを上げられた理由、新球場建設地決定までとこれからについて紹介する。

北広島市企画財政部・川村裕樹北広島市企画財政部部長 北広島市企画財政部・川村裕樹北広島市企画財政部部長

後編へ
取材・文=長壁明(おさかべ・あきら)

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