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代打逆転サヨナラ満塁優勝決定弾に「9-6-3-5」の変則ゲッツーで終了。まさかのゲームセット選

文=勝田聡

代打逆転サヨナラ満塁優勝決定弾に「9-6-3-5」の変則ゲッツーで終了。まさかのゲームセット選
 「野球は筋書きのないドラマだ」とはよく言われる話である。このまま終わるであろうと思っていた試合に「まさか」と思われる結末が用意されていたりする。

プロ野球の様々な「まさか」


 プロ野球では2001年の近鉄が優勝を決めた試合が印象深いだろうか。

 2001年9月26日に行われた近鉄対オリックスの試合で、近鉄・北川博敏が放った「代打逆転サヨナラ満塁優勝決定ホームラン」。優勝は明日以降に持ち越しだな、と思われたところからの一撃に狂喜乱舞。グラウンド上で駆け回る猛牛戦士たちは凄まじかった。

 現役復帰が取り沙汰されている新庄剛志(当時阪神)の敬遠サヨナラヒットもまさかの幕切れだろう(1999年、阪神対巨人)。その他には2015年の広島対巨人戦で起きたサヨナラインフィールドフライも印象深い。

 なにも「まさか」はサヨナラゲームだけではない。2018年9月18日のロッテ対ソフトバンクの試合。2点ビハインドで迎えた9回裏、ロッテの攻撃で「まさか」が起こった。1死一塁と一発が出れば同点となるこの場面で、角中勝也の放った打球はフェンス直撃。

 一塁走者が長駆ホームインするか、最低でも1死二、三塁となるような当たりだったが、一塁走者の中村奨吾が判断を誤り二塁付近でストップしてしまう。打者走者の角中が一、二塁間に挟まれタッチアウト。その間に三塁を狙った中村は三塁に滑り込むもこちらもタッチアウト。

 なかなかお目にかかることのできない「9-6-3-5」の変則ゲッツーでゲームセットとなったのである。これも「まさか」である。

ヤクルト村上宗隆が描いた放物線


 2019年シーズンのヤクルトは2017年のように96敗こそしていないものの、5位の中日から9ゲームも離された最下位に終わった。優勝争いに加わることはできず、クライマックスシリーズ出場の望みも早々に絶たれてしまった。このことが示すように1年を通してみると、不甲斐ないシーズンだったと言わざるを得ないだろう。

 しかし、1試合1試合を紐解いていくと、ヤクルトファンが涙してもおかしくない劇的な幕切れとなった試合も多々あった。その一つが8月12日、神宮球場で行われたヤクルト対DeNAである。

 2対2の同点で迎えた9回表にヤクルトの守護神のマクガフがまさかの2失点。2対4と2点ビハインドでヤクルトは最後の攻撃を迎えた。

 DeNAのマウンドにはもちろん山崎康晃である。近頃のDeNAファンは熱い。ビジターゲームでも守護神を送り出すときに割れんばかりの「ヤスアキコール」を送る。広島戦ほどではないが、レフトスタンド付近からの声は大きい。

 ファンは勝利を確信しているだろう。この日の時点で山崎の防御率は1.02。ヤクルト戦では5試合に投げ無失点。圧倒的な守護神である。

 対するヤクルトファンは絶望的な気持ちでいた。この日まで4連敗中であり、「またか」の重苦しい雰囲気。1点差ならまだしも2点差である。しかも天敵の山崎がマウンドにいる。

 しかし、先頭のバレンティンがバックスクリーンへ一発。とはいえ、まだ1点のビハインド。続く雄平が内野安打で出塁。一塁を駆け抜けたときに自身でセーフのジェスチャーをする激走だった。次は村上宗隆。ようやくファンもざわつきはじめる。

 一発が出れば逆転サヨナラ。そう考えるまもなく村上が叩いた初球は、バックスクリーンへ飛び込む逆転サヨナラ2ランホームラン。どこまでも飛んでいきそうな、飛行機雲のような弾丸ライナーではなく、まさに虹を描くような放物線。敗色濃厚のチームを救う一撃。あまりにも劇的なゲームセットだった。

4点差が4点差、その後サヨナラ。


 甲子園の舞台でも劇的な幕切れは数え切れないほど起こっている。古くは江川卓(作新学院、元巨人)のサヨナラ押し出し四球(1973年夏)、藤田修平(宇部商)のサヨナラボーク(1998年夏)、金足農の2ランスクイズ(2018年夏)…数え上げればきりがない。

 そのなかでも際立つのが2006年夏の甲子園の帝京対智辯和歌山の試合である。この試合、智辯和歌山が8対4と4点リードで9回表に突入する。高校野球にセーフティーリードはないとはいえ、9回表で4点差である。そのままゲームセットとなることがほとんどだろう。

 しかし、帝京は杉谷拳士(現日本ハム)の適時打などで一挙8点を奪い逆転に成功するのである。甲子園の魔物を呼び寄せ、12対8と4点ビハインドを4点リードに変え、最後の守りについた。

 最終回に4点差をひっくり返し、その裏に再び4点差をひっくり返されることなどあるのだろうか。いやあったのである。

 智辯和歌山は最後の攻撃で6四死球に本塁打、安打を絡め5点を奪いまさかの逆転勝利。史上最大級のドラマを演出したのだった。


 敗れた帝京の敗戦投手は、9回で2人目のマウンドに立ち初球で死球を与えた杉谷だった。1球で敗戦投手となった杉谷はのちに「あの1球ですごく学んだ」と語っている。

 4点ビハインドが4点リードとなりその後サヨナラ。後にも先にもこんな9回をお目にかかることはないだろう。

 5月下旬。まさかプロ野球が開幕していないとは思わなかった。こんな「まさか」はもういらない。試合中での「まさか」を楽しみにしている。

文=勝田聡(かつた・さとし)

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