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甲子園ノックの規定を変えた男。「やくざ監督」野々村直通が語る高校野球の魅力とは?


「よっ! やくざ監督」

 観客からのそんなかけ声で迎えられたのは、『やくざ監督と呼ばれて』の著書でも知られ、島根・開星高校を春2回、夏7回、甲子園へ導いた名将・野々村直通さんだ。

 今年7月、『ハンパねぇ! 高校野球』を上梓したお笑いコンビ・トータルテンボス藤田憲右さんによるイベント「ハンパねぇ! 高校野球」WEEKにおける、『高校野球ファン必見!! 高校野球ディープトーク』のゲストスピーカーとして登壇した。

高校野球の魅力は“打算がないこと”


 この日のトークイベントではほかにも、『野球太郎』の持木秀仁編集長、『やくざ監督と呼ばれて』の担当編集者であり、『中学野球太郎』では“菊地選手”でおなじみのライター・菊地高弘さんらが登壇した。

 「今だから話せる高校野球」「自分ならどの高校に進学したいか」などのトークテーマを元に、タイトルどおりのディープすぎる高校野球トークで観客を盛り上げた。なかでも、熱い議論となったのが「ズバリ! 高校野球の魅力とは」についてだ。

 『野球太郎』持木編集長が「<国民公認のコスプレ>といえるのではないか」と持論を提示すると、「まさにコスプレをしてしまってすみません」と、いつものユニフォーム姿で参加した菊地選手が謝る展開に。

 この流れを受け、「監督のそれ(やくざっぽさ)はコスプレですか?」と恐る恐る尋ねる藤田さんに「自前ですよ!」と野々村さん。「よく聞かれるんですけどね、通販で売ってますから!」と応酬し、笑いを誘う。

 そんな見た目とは裏腹に、高校野球の魅力について訊かれた野々村さんは教育者らしく真面目に答え出し、観客の耳目を集めた。

「高校野球の魅力はね、やっぱり打算がないことですよ。選手たちは、今日この練習を頑張れば何かもらえる、といったことではやってませんから」

 打算がないのは、選手たちだけではない。

「僕ら(監督)にもなんの打算もないんです。なんの手当もありません。ただただ、甲子園に出たい、という霞のようなものを掴むため、子どもたちと現場の監督さんは本当に打算なくやってるんです。だから、いろんなドラマが生まれる。諦めないドラマがね。それが一番の魅力でしょう!」


野々村直通ノック伝説


 この日のトークイベントではさまざまな「野々村伝説」も明らかにされた。とても文字化できないギリギリトークが多かったが、可能な範囲で紹介したい。

《試合前練習で「エア・ノック」をした男》

 監督の技量が試される場でもある、試合前の7分間ノック。この時間をエンターテイメントに変えたのが野々村さんだった。

「球なしノック、というものをやったんですよ。今で言うなら、エア・ノック。ボールがないから、皆、最高のプレーができるんです。『右中間っ』と言ってバットを振ると、センターとライトが思いっきり走って、ダイビングキャッチしてくれるんですよ。セカンドとショートもカットに入って、ピッチャーもカバーに入って、完璧なプレーができる。これ、練習をしっかりすると、ちゃんとボールがあるように見えてくるんです。観客も大盛り上がりですよ。野々村の球なしノックが見たいという観客まで生まれたくらいですから」

 ただ、あまりに目立ちすぎたためか、やがて「7分ノックではボールを使いなさい」と注意を受けてしまったという。

「でも、7分ノックは、試合でのびのびとプレーできるようにあるんだから、エア・ノックが最適なんですよ。素振りがいい練習なのも、ボールがないから理想のスイングを追求できる。実に、理にかなった練習なんです。まあ、こういう発想ができちゃうのが、私のアーティスとしての能力ですよね(笑)」


《甲子園の試合前ノックの規定を変えた男》

 野々村ノック伝説は、ほかにもまだまだあるという。

「外野へのノックの一球目、レフトスタンドにだいぶ放り込みましたよ。もう、あまりに有名になって、レフトは一球目、ボールを追わないんだから。でも、50代を越えてくるとフェンスオーバーができなくなってね。悔しくって、『レフト、なんで追わないんだ!』って怒ったこともありました(笑)」

 もっとも、こちらの「ホームラン・ノック」もあまりに有名になりすぎた結果、新しい規定を生み出してしまった。

「甲子園のレフトスタンドにもだいぶ放り込みましたよ。そうしたらね、甲子園で新しい規定ができたんです。【試合前ノックはスタンドに打たない】。どうも、私がやることは目立ち過ぎるんでしょうなぁ」

 目立つ、といえば、個性的な服装についても話題が尽きない。

「あ、規定をつくったといえば、もうひとつあります。抽選会場における服装規定。和服姿で参加していたのが目立ち過ぎたんでしょうね。私が監督を退任した年の抽選会から、【責任教師、監督は白の半袖シャツまたは所属連盟のスタッフシャツ着用】と。日本人が和服を着て、何がいかんのか! と思いますけどね。ヨロシク!」

 現役監督だった時代から、常にその言動で世間を騒がせ続けた野々村直通さん。こんな破天荒な監督の存在もまた、高校野球を盛り上げる魅力のひとつなのではないだろうか。

(本文中、敬称略)


文=オグマナオト

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