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カウントごとに出しやすいサインは違う!?2ボール0ストライクで出しやすいサインとは?カウントごとの考え方(1)(第十八回)

『野球太郎』で活躍中のライター・キビタキビオ氏と久保弘毅氏が、読者のみなさんと一緒に野球の「もやもや」を解消するべく立ち上げたリアル公開野球レクチャー『野球の見方〜初歩の初歩講座』。毎回参加者のみなさんからご好評いただいております。このコーナーはこのレクチャーをもとに記事に再構成したものです。
レクチャーは予定していた全5回が終わってしまいましたが、新たな企画を思案中です。その連絡ができるまでお待ちください。
また、レクチャー終了に伴い、こちらの連載は20回目が最終回となります。ラスト3回となりますが、最後まで楽しく、勉強していきましょう!


無死一塁で考える


キビタ:試合の流れはカウントで大きく変化します。
久保:ボールとストライクのカウントは、初球から3ボール2ストライクまで全部で12種類です【カウントマップ参照】。


【図1】カウントマップ


キビタ:どういう経緯でこのカウントになったかというのも、心理面や作戦面に影響を及ぼします。今回は無死一塁を題材に、カウントごとの動きを見ていきます。
久保:無死一塁を選んだ理由を教えてください。
キビタ:チームごとの色が出やすいからです。どういう風にチャンスを拡大して、流れをつかもうとしているかに注目してください。

★初球(0ボール0ストライク)は永遠の謎

キビタ:まずは初球から。ニュートラルなカウントですけど、ちょっと特殊なカウントでもあります。特殊だよという意味で★をつけておきました。

久保:「初球の入りが難しい」とよく言われますが…。
キビタ:相手の出方がわからないから難しいんですよ。何でもできるカウントのようだけど、何もできないカウントでもあるのです。
久保:確かに初球から動くのはリスキーです。
キビタ:どんなに事前に準備していても、打順がひと回りしてみないとわからないことはありますからね。たとえば本来はスライダーが苦手なバッターなんだけど、今日の先発ピッチャーのスライダーなら合いそうだというのであれば、作戦も変わってきます。

久保:初球ヒッティングもありますか。
キビタ:積極的に振ってくるチームもありますが、基本はベルト付近の真っすぐに絞ります。初球からボール球に手を出しているケースは、ストライクだと思って振ってしまった場合と、とりあえずボールでも振ろうとしている場合のどちらかでしょう。
久保:たまに初球の変化球を打ってくる選手もいますが…。
キビタ:基本は真っすぐ狙いなんですけど、山っ気のあるバッターは変化球に狙いを絞っていたりするんですよね。初球というのはバッテリー、バッターともに性格が出やすいカウントです。

久保:「初球を投げる前に必ず牽制を入れろ」というチームもあります。
キビタ:それは少しでも時間をかけて、相手の情報を引き出そうという発想です。レベルが上がると、ランナーの帰塁ひとつでバントの有無を見抜いたりします。
久保:どこで見分けるのですか?
キビタ:一般的には、大きめのリードを取るランナーは、戻る方に意識を置いています。逆に小さめのリードを取っている場合は、次の塁を狙う意識が強いですね。プロだと、最初から大きくリードを取って、そこから盗塁するという、ある種のギャンブルのようなプレーもありますけど。初球の牽制は、ランナーを刺すというよりも、情報を探るという意味合いが強いです。
久保:そうなんですか。

キビタ:改めて初球に出しやすいサインをまとめてみました。ヒッティング、盗塁、エンドランはチームごとに価値観が違うので「?」にしておきました。ここの仕掛けがあるかないかで、チームの傾向が見て取れます。
久保:初球のバントは「◎」ですね。
キビタ:初球バントはかなりの確率で考えられます。

カウント【0ボール0ストライク】の場合


●1ボール0ストライクは動きのあるカウント

キビタ:続いては1ボール0ストライク。このカウントは動きやすいカウントです。
久保:バッテリーが次にストライクを取りにくる可能性が高いから、色んな仕掛けがしやすいですね。
キビタ:バッター有利のカウントには●をつけておきます。ただし例外として、ピッチャーが荒れ球の場合は、次にストライクがくるとは限りませんから、様子を見た方が無難です。相手が荒れ球なのにエンドランをかけると、難しいボール球を無理やり打ちにいくことになります。

久保:逆にバントの構えで見送ったりすると…。
キビタ:一塁ランナーが飛び出して、キャッチャーからの送球で刺されてしまう、といったことも起こりがちです。いずれにしても、動きのあるカウントですので、目を離さずに見ておきたいところです。

カウント【1ボール0ストライク】の場合


●2ボール0ストライクでは凡打の内容が問われる

キビタ:2ボール0ストライクはさらにバッター有利なカウントです。江夏豊さん(元阪神ほか)レベルの技量があったら意図的に3ボール0ストライクにしてから攻めるらしいですけど、一般的には意図的にボールにすることはまずありません。
久保:かなりの確率で「次にストライクがくる」と予測できるから、エンドランもかけやすいですね。
キビタ:バッターの技量に関係なく、下位打線でもエンドランのサインを出しやすいカウントと言えます。
久保:「攻撃的なエンドラン」と言っていいでしょうか。
キビタ:そうですね。あわよくば一、三塁を作りたいという、強く振ってチャンスを広げるエンドランになります。

久保:普通のヒッティングでは、狙い球を絞って打つカウントかと思います。でも、たまに2ボール0ストライクから打って、ボテボテの内野ゴロになってしまう選手を見かけます。
キビタ:真っすぐを待っていて、真っすぐがきたから難しいコースなのに手を出してしまって…、というパターンですね。決めつけが強いというか、そもそも確実性に問題があるというか…。狙い球がきても、コースが厳しければ見送ってほしいところです。
久保:2ボール0ストライクからの凡退の質を見ていけば、バッターの技量がある程度、推し量れると思います。
キビタ:2ボール0ストライクから崩されずに狙い球を打っているにもかかわらず、仕留めきれない選手は要経過観察です。そういった傾向が何試合も続くようでしたら、いくら「高校通算何十本塁打」などと騒がれていても、上のレベルでの活躍は厳しいでしょう。

カウント【2ボール0ストライク】の場合


●3ボール0ストライクから打つのが今の野球

キビタ:3ボール0ストライクまでくると、今度は待つことが多くなってきます。バントのサインはありますけども、「ボールなら見送れよ」というサインになります。
久保:最近は3ボール0ストライクから打つ選手が増えてきたように感じます。
キビタ:ちょっとしたトレンドですよね。10年ほど前はほぼ「待て」だったのに、今はチームやバッターによっては「打ってもいい」という流れになってきました。
久保:当然、狙い球は絞って、よほど甘い球以外は見送るというのが基本になりますね。
キビタ:それが出塁率を上げることにもつながってきます。
久保:次回は無死一塁で、1ストライク、2ストライクの場合を考えていきたいと思います。

カウント【3ボール0ストライク】の場合



■プロフィール
キビタキビオ/野球のプレーをストップウオッチで測る記事『炎のストップウオッチャー』を野球雑誌にて連載をしつつ編集担当としても活躍。2012年4月からはフリーランスに。現在は『野球太郎』を軸足に、多彩な分野で活躍中。Twitterアカウント@kibitakibio

久保弘毅(くぼ・ひろき)/テレビ神奈川アナウンサーとして、神奈川県内の野球を取材、中継していた。現在は野球やハンドボールを中心にライターとして活躍。ブログ「手の球日記」

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