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第21回 『ONE OUTS』『おおきく振りかぶって』『やったろうじゃん!!』より

「球言(たまげん)」とは、名作&傑作マンガに登場する野球格言≠フことである。野球というスポーツの真理を突いた一言、技術を磨く名言、駆け引きを制する名台詞の数々は、現実のプレーや采配にも役立ったり役立たなかったりするのだ!


★球言1



《意味》
異質なアンダースローのボールは、見極めようと正対したり、危険を感じて逃げると打撃のパワーを欠く。インコースへ来たら、背中に当てるぐらいの気持ちで、肩を開かずに打つべし。

《寸評》
右のアンダースローに対し、右打者の場合は球スジを見極めようと無意識にボールと正対してしまう。一方、左打者の場合はボールが自分に向かってくるような錯覚に陥り、踏み込みが甘くなる。結果、どちらも肩が開いてしまい、力強い打撃ができなくなる、という指摘。

《作品》
『ONE OUTS』(甲斐谷忍/集英社)第17巻より

《解説》
オーナー兼投手の渡久地東亜を中心に、パ・リーグ優勝を狙う埼京彩珠リカオンズ。マリナーズとの頂上決戦第二戦は、「日本球界史上 最高のサブマリン」と呼ばれる吉田均と対戦。渡久地は「背中にデッドボールを受けたら1千万」という1日限定のギャラ条項を追加する。
必死に死球を狙うリカオンズ打線は、打者一巡で9者連続の凡退。渡久地が呆れたように口を開く。
「お前らなあ 打つのも忘れて デッドボール狙いに行くことね───んだよ(中略)あくまで打ち返すことが本分 その中でインコースを えぐるような球が来たら 逃げずにデッドボールにしてしまえということだ」
じつは、この指示こそ異質なアンダースローのボールを攻略するために、渡久地が用意した打撃フォーム改善策だった。
背中にボールを当てるつもりで、肩を開かずにスイングし始めた打線は、ホームラン攻勢で7点を奪取。吉田をマウンドから引きずり降ろした。


★球言2


《意味》
試合を有利に運ぶ方法として、大半の選手は味方の実力を十分に発揮する方法を考える。が、時折り相手チームのパフォーマンスを落とす手段を思いつく選手がおり、戦術の幅を広げてくれる。

《寸評》
作中では、相手チームの「精神的な支え」になっている選手を歩かせ、ベンチのムードを悪くするという戦術が登場。興味深かったのは、どうせ勝負を避けるなら「ハッキリ敬遠」してしまったほうが「向こうのやる気をそぐ」という点に言及したところ。プロセスも重要なのだ。

《作品》
『おおきく振りかぶって』(ひぐちアサ/講談社)第9巻より

《解説》
夏の埼玉県大会2回戦を突破した西浦高は、3回戦の対戦相手・崎玉高に対する戦い方を事前にチームで話し合っていた。
スタンドで観戦した2回戦の印象をもとに、攻守両面から崎玉高の戦力を分析する部員たち。するとチームの主力である捕手・阿部隆也が突然、「次はコールドにしてほしい」と発言。理由は、エース・三橋廉の負担を軽減させるためだと言う。
阿部の意見を取り入れ、コールド狙いを決意する西浦ナイン。そのためには、崎玉高の打線を牽引する五番・佐倉大地を抑える必要があった。
「5番は敬遠する(中略)崎玉は5番が精神的支えになってんだろうからな そいつが勝負さしてもらえねーとなりゃ ベンチが腐ンだろ」
その会話を聞いていた監督の百枝まりあは、心の中で思う。
「よく見てるよねェ〜〜〜 味方ベンチの雰囲気よくすることは 誰でも考えるけど 相手のベンチをくさらせるって 高1男子の発想かね!?」


★球言3


《意味》
捕球時、人さし指を外へ出していないと痛みがガマンできない、という野手はグラブの使い方が悪い。普段のキャッチボールからキチンと指を入れ、正しい捕球姿勢を身体で覚えるべきである。得。

《寸評》
最近はめっきり見かけなくなったが、一時期はプロ野球選手でも指を出していることが珍しくなかった。フィンガープロテクターの普及や、グラブの品質向上なども、減少傾向の一因か。正しい捕球姿勢を学ぶことはもちろん大切だが、硬式ボールを捕ったらやっぱり痛い気が……。

《作品》
『やったろうじゃん!!』(原秀則/小学館)第1巻より

《解説》
朝霧学園野球部を甲子園に連れていく、という約束を部員たちと交わした喜多条順監督。早速、基礎体力の面から鍛え直すべく、グラウンド30周&ダッシュ100本をくり返す日々が始まった。
多くの不平不満を漏らしつつ、苦しい走りこみをこなしていくナインたち。やがて喜多条から「ボールを使っての練習」許可が下りる。
久しぶりのキャッチボール。部員の田村がボールを捕っていると、喜多条が問いかけてきた。
「田村。おまえ、なんでグラブから指を出してる?」
「なんでって……キャッチする時 痛いからで…………それに巨人の選手もやってるし……だから なんとなく…………」
田村の答えに、喜多条は笑顔で次のように返すのだった。
「バカか おまえは? ヘタクソがヘタクソのマネしてどーするんだ? 痛いのは ちゃんとグラブを使ってないからだ。指を入れて ちゃんと捕れ! 体で覚えろ! こんなの基本だよ 基本!」


文=ツクイヨシヒサ
野球マンガ評論家。1975年生まれ。著書に『あだち充は世阿弥である。──秘すれば花、『タッチ』世代の恋愛論』(飛鳥新社)、編著に『ラストイニング勝利の21か条 ─彩珠学院 甲子園までの軌跡─』(小学館)など。

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